「投資の本質」を正しく伝えることの難しさ

個人投資家のコミュニティー「資産設計実践会」は現在第22期を開講しています。半年毎の講座ですから始めてからもう11年が経過したことになります。当初は30人足らずで始めたコミュニティーもメンバーが200人近くまで増え、毎月の月例会やスタディツアーと呼ばれる国内外への視察などメンバーと楽しく活動をしています。

投資の具体的な情報を提供することがコミュニティーの大きな目的の1つですが、「投資の本質」を正しく伝えることの難しさを感じることもあります。

そもそも投資とはリスクを取ることの見返りにリターンを狙う行為と定義できます。だからリスクのない投資にはリターンはありません(せいぜい普通預金の金利程度です)。

自分がリスクをどこまで取れるかを判断し、その範囲でリターンを狙っていくのが投資の本質です。しかし多くの人は1円でも損をしたくないと思い元本保証を求めてきます。

リスクゼロでリターンが得られる。そのようなローリスク・ハイリターンの投資を求めるのは虫の良い話で、多くの場合は投資詐欺というのが現実です。高いリターンが期待できる投資対象はその裏にどのようなリスクがあるのかを見極めて投資判断すべきです。

また、投資のリターンは絶対値で評価するのではなく、ベンチマークと呼ばれる市場の平均値との相対的な比較で評価されるべきものです。

例えば、2025年のマーケットでは貴金属や株式といった投資対象の価格は軒並み上昇しました。

個別の株式に投資をして資産を増やした人もいますが、銘柄選択がうまくいったかどうかは購入した株が上昇したかどうかではなく、その市場のインデックスと比較すべきです。

自分の持っている日本株が10%上昇したとしても、インデックスであるTOPIXが20%上昇していれば、投資としては失敗と言うことになります。

逆に自分の持っている株が10%下落したとしても、TOPIXが20%下落していれば、銘柄選択としては正しい投資ができたことになります。

このようなロジカルな投資の評価ができる個人投資家は意外に少ないものです。

100%の成功が保証されていない投資の世界でコミュニティを10年以上続けられたのは、確率的にリターンが得られる可能性の高い投資対象に資産を分散し、長期の結果を追求してきたからだと思います。すべての投資が成功することは不可能ですから、集中投資ではなく分散投資が必須になるのです。

常に結果が出るとは限らない投資家コミュニティの運営は難しい仕事ですが、自分の価値提供の限界を感じる時が来るまでは自分自身の楽しみながら「ライフワーク」として続けていくつもりです。

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編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。