koumaru/iStock
結論から言う。みんな、空を見ろ。
いや、唐突すぎるか。でも本当にそう思っている。2016年の10月から、僕はインスタに空の写真を上げ続けている。もう8年以上だ。なぜか。読んでくれた誰かが、ふと立ち止まってくれたらいいな、と。それだけ。
「学び続ける知性 ワンダーラーニングでいこう」(前刀禎明 著)日経BP
講演をやっていると、客席から閉塞感が漂ってくることがある。物理的に見えるわけじゃない。でも、分かる。「こうでなきゃいけない」に縛られて、身動きが取れなくなっている人たちの空気。あれは独特だ。
先日、ヨドバシで面白い光景を見た。
中年の男性が、エアコンの前で20分ぐらい固まっていた。店員を呼んで「どれが売れてますか」と聞く。店員が売れ筋を指さすと、安心したような顔をして、それを買っていった。
これ、笑えない。というか、僕らみんなこうだ。
「これがいいかな」「こっちも悪くないな」と2つまで絞る。でも決められない。だからランキングを見る。他人が買っているものを確認する。自分の直感より、他人の選択を信じる。結果、「よく売れている商品」がさらに売れる。メーカーも売れ筋に似たものを作る。評価基準が画一化する。イノベーション? 死んでる。
で、アップルの話をしたくなる。(話が飛ぶな、すまん)
昔のMac、ひどかったの知ってる? システムエラーで爆弾マークが出て、作業データが全部吹っ飛ぶ。バックアップ? そんな概念、当時はなかった。欠陥商品だよ、あれは。
でも、愛されていた。デザイン。スタイル。「信頼性」とはまったく別の基準を持ち込んで、それが支持された。iPhoneもそう。質感。手触り。スペック表に載らないところで勝負して、勝った。
画一的な評価基準の外に出る勇気。それがあった。日本のメーカーに、それがあるか。
話を戻すと、僕がインスタで空の写真を上げているのは、「こうでなきゃいけない」を壊したいからだ。
子供の頃から、空を見て「あの雲、何かに見えるな」と想像するのが好きだった。大人になっても続けている。写真を撮るとき、真っすぐ構えない。逆さまにしてみる。建物を入れ込んでみる。意外な見え方がないか、考える。
カメラのアングルに「正解」なんてない。
同じメッセージを、言葉を変えて繰り返し投稿する。当たり前のことでも、誰かに言ってほしいときがある。分かっていても、自分だけじゃ自信が持てないことがある。
皆さんも、空を見上げてみてほしい。
気持ちいいよ。それだけで、ちょっと楽しくなる。難しいことは何もない。
……と、きれいにまとめようとしたけど、やめる。
正直、これで何かが変わるとは思っていない。「こうでなきゃいけない」は、たぶんこの国の病気だ。治らない。でも、空を見上げる人が一人でも増えたら、少しはマシになるんじゃないか。ならないか。わからん。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
■
22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)