Rawpixel/iStock
前回も書いたが、日本政府は2026年度から27年度にかけて、排出量取引制度の本格導入を予定している。企業には排出枠が設定され、それを超えて排出しようとする企業は、政府から排出権を買わねばならない。
消費税級のステルス大増税となる排出量取引制度は導入を延期すべきだ
この制度は、だいぶ昔にEUで導入されたものを模倣するものだ。EUでは2005年から排出量取引制度の本格実施が始まった。もうすでに20年も前の話である。
だがそのEUでは何が起きたか。排出量取引制度を中核とする脱炭素(EUではネット・ゼロという)という愚かなエネルギー政策の結果、光熱費は高騰した。
ドイツのメルツ首相は、ドイツの産業は危機に瀕している、と連立与党所属の連邦議会議員宛ての書簡で述べた。
首相自ら「瀕死の状態」と宣言する大失態…原発も石炭も手放し「一人負け」、ドイツが崩壊寸前に至ったワケ
危機の理由は、光熱費と人件費の高騰である。日本ではドイツを礼賛する人々が多いが、実際のところのエネルギー政策は惨憺たる結果だった。
原子力を廃止し、石炭火力を抑制し、その一方で風力発電を大量導入した。ロシアからの安価なガス供給があるうちはまだ良かったが、2022年にウクライナで戦争が始まり、EUが対ロシア制裁をすると、ロシアからの安価なガス供給も途絶えた。この帰結として起きた高熱費の高騰によって、家計は苦しくなり、産業は空洞化した。
名門の大手化学会社BASFなど、特にエネルギー多消費産業は苦境に陥り、なだれを打って海外に工場を移転している。
その一方で、昨年2025年の一年間での政府による排出権の売り上げは4兆円に達したというニュースが飛び込んできた※1)。
Rekord: CO2-Zertifikate bringen Staat 21,4 Milliarden Euro
つまり、ドイツの産業は、政府に4兆円もの排出権購入代金を支払ったということである。
経営危機の状況にあるにも関わらず、政府にはこの巨額の排出権売却収入が入る。ドイツの産業はたまったものではない。そしてこれは、最終的には光熱費や物価の上昇、あるいは所得の減少となって、全て家計の負担となる。
日本も政府の予定通り、排出量取引制度の本格導入をするならば、やがて同じようなことが起きるだろう。すなわち、産業は経営危機に陥るが、それでも政府から排出権を購入しなければならない。踏んだり蹴ったりである。
日本政府は、愚かな排出量取引制度の導入を止めるべきだ。
■
※1)正確には214億ユーロであり、1ユーロ=180円換算で3.9兆円。
■