メルツ首相「ドイツの脱原発は戦略的失敗」:日本も対岸の火事ではない

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、福島第一原発事故後に進められたドイツの脱原発政策を「重大な戦略的失敗」と断じた。電力コスト高騰、産業の競争力低下、ロシア依存の露呈など、ここ10年以上のエネルギー政策の歪みが深刻化する中での発言であり、欧州内でも原子力再評価の潮流が強まる可能性がある。日本もドイツの轍を踏んだ面があるだけに、他人事ではない。

  • メルツ首相は14日、東部ハレでの会合で「脱原発は重大な戦略的失敗だ」と述べ、福島事故後に進んだ全原発停止方針を明確に批判した。
  • ドイツでは電気代が高止まりし、産業界にとって国際競争力を損なう要因になっている。政府補助金で電力料金を抑える措置が続くが、根本的な解決には至っていない。
  • メルツ首相は「許容できる価格で再びエネルギーを生産したいが、不可能だ」と述べ、2023年に停止した最後の原子炉3基を「稼働させておくべきだった」と悔やんだ。
  • ドイツは事故後、再エネFIT(固定価格買い取り制度)と天然ガス火力で脱原発を補う方針を取ったが、その天然ガスの大部分をロシアに依存したため、ウクライナ侵攻後に電力・ガス価格が急騰した。
  • 一方で、ベルギーが脱原発政策撤回を行うなど、欧州では原子力の役割を再評価する動きが広がっている。温室効果ガス削減と安価な安定電源を両立させる手段として、原発が再び注目されている。
  • メルツ首相は「世界で最もコストのかかるエネルギー転換を進めてきた。ドイツほど困難でコストがかかる取り組みをする国は他に知らない」と強調し、発電能力不足に対する危機感を示した。
  • ドイツの脱原発+難民大量受け入れ政策が欧州政治を混乱させたとの批判も存在する。
  • 日本でも、FIT・再エネで全てを代替できると信じた政策担当者と、それを支持したマスメディアを始めとした言論空間にエネルギー問題に関するリテラシーの欠如があった。
  • 日本でも、民主党政権下で原発縮小に傾き、さらに原子力規制委員会の硬直的な安全基準が電源逼迫を助長した。
  • その結果、日本はLNG依存・電力不足・電気料金上昇という「ドイツと似た構造」を抱えており、現状維持ならばドイツ以上に深刻化する恐れがある。

脱原発から15年、ドイツはようやく自らの誤りに向き合い始めた。欧州を混乱に導いたロシア依存や電力コスト高騰は、理念先行のエネルギー政策の帰結である。日本もドイツに倣って原子力を萎縮させた側面がある以上、現実的なエネルギー安全保障と産業競争力を守るため「他山の石」とすべきだ。

ドイツ・メルツ首相インスタグラムより