参政党公式Xより
参政党が、米国の保守系活動家・故チャーリー・カーク氏を日本に招き、「反移民」をテーマに集会を行った判断には、大きな疑問が残る。問題は移民政策の是非ではない。人物の思想全体を見ず、「反移民」という一点だけを抜き出したことである。
移民政策は国ごとに事情が違い、反対の立場を取ることは正当な政治的主張である。しかし、誰を「まともな国民」と見なし、誰を見下し排除する思想の持主まで含めて判断するのが常識であろう。
カーク氏の言動は、米国では決して無名でも無害でもない。米国の主流メディア——ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、AP通信、ガーディアンなど——では、彼はしばしば人種主義者として扱われてきた。理由は単純で、彼の言説が「反移民」にとどまらず、白人キリスト教徒を社会の中心に置く排他的な考え方と結びついているからである。
ここで、日本人は一度立ち止まって考える必要がある。
日本は白人国家でもキリスト教国家でもない。日本人は有色人種であり、非キリスト教徒が国民の大多数を占める国である。つまり、我々日本人はカーク氏から排除の対象とされている人種に属するのだ。
それにもかかわらず、参政党は「反移民」という共通点だけを強調し、彼を日本に招いた。これは「海外の保守から学ぶ」という話ではない。我々を蔑み、排除している張本人を三顧の礼で迎え、講義を受けている点で、極めて卑屈で軽率だと言わざるを得ない。
重要なのは、本人が「差別はしない」「憎悪は拒絶する」と言うかどうかではない。実際にその思想が、誰を味方に置き、誰を排除する“結果”を生むかどうかである。
参政党の 神谷宗幣 党首が本来確認すべきだったのは、「反移民か否か」ではない。その人物の思想が、日本社会にとって危険な排他性を持つかどうかである。
保守とは本来、社会を壊さずに守る思想のはずだ。
米国でも賛否が激しく、主流メディアから繰り返し批判されてきた人物を、中身も吟味せず「使える部分だけ」取り出して招く——それは保守的判断ではなく、無自覚な思想輸入に近い。
これでは、外国人排除を人気取り政策に掲げ、その精神は我々を蔑み排除する外国人からの借り物奨励と言われても反論出来まい。
カーク氏の悪名を高めた、米国の若者主体の極右政治団体TPUSA(Turning Point USA)の集会には、白人主義、アジア人蔑視主義、キリスト教優先主義の論客が演壇に並び、それらの扇演説に熱狂する聴衆の殆どは、白人の若者である。
このような人物を高い費用を払って応援弁士として招く党首をいただく参政党に票を投ずる有権者は、自分の資本を削りながら配当を喜ぶ「タコ配」に喝采する株主のように見えてならない。
彼の「西洋右翼かぶれ」は、マスク使用政策にもおよんでいる。
「参政党の新型コロナ・ワクチン政策(2022年10月改訂)の中身を見る限り、その主張の骨格(自由・反強制・反マスク慫慂・反ワクチンパスポート系)は、カーク氏の政治団体(TPUSA)の政策の物真似で、政党が作家なら「盗作」扱いされかねない「そっくりサン」である。
疑問符はそれだけでない。
方針を米国の極右団体から直輸入したかと思えば、我々が誇るべき日本的価値観の中核である「伝統・道徳・家族・教育」を破壊する人物を政策作成の中心に置いたことである。
これだけで、ピンと来る人も多いであろうが、それは、当時政策秘書だった50代の男性を殴ったり「このハゲ」などの暴言を浴びせていたとして自民党を離れた豊田真由子氏をボードメンバー兼政調会長補佐に迎え入れた「醜態」である。
彼女の部下に暴力・罵声を浴びせる行為は、保守思想を「徳の体系」として解釈すると「自制、責任、礼」と正面衝突する事は誰も否定できない。
こうして、保守思想の中核を「票と金」の為なら、簡単に捨て去る政党に「賛成」する有権者には、自分の票が自分の信条の真反対の政党に投じられた事を認識して欲しい。
参政党の唱える保守主義とは、外国人の肉体を日本から追い出し、誇るべき日本の価値観を、米国の悪しき極右精神と入れ替える、「換骨堕胎賛成党」だという事を知った2025年であった。
主にアジア系移民の間で使われる「外見は黄色(アジア人)だが、中身は白(欧米人的価値観)」を意味する「バナナ」という差別的なニュアンスを含む比喩として使われるスラングがあるが、次期総選挙には、参政党の象徴として「バナナ」の旗を掲げる事を勧めたい。
そして、参政党が政権を握った暁には、外国人排斥で、人不足の製造業が立ち行かなくなり、中南米の独裁国家のような、一つの産物(バナナ)に依存し、外国企業や独裁者に支配された不安定な小国を意味する「バナナリパブリック日本」の誕生を迎える事も単なる悪夢ではない。
午年の初めに当たり、保守の覇者高市首相が、此の悪夢を蹴り飛ばす日本の始まりを期待するや切なるものがある。
北村隆司 (ニューヨーク在住)