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正さんは一人暮らしのお年寄りである。ただひたすら正直に生きてきた。今日、電気屋に久しぶりに入ると、水銀規制のために、「2027年末で蛍光管は製造も輸入も禁止される」と書いてあった。これは大変なことになりそうだ。家に帰って、どうなるか考えてみた。
家は戸建てで、こじんまりとしているが、天井に埋め込み式の蛍光灯のある部屋が三つある。居間と寝室と仏間である。あと外には物置があって、その天井にも蛍光灯が埋め込みでつけられている。これをすべてLEDに替えるとなると、照明器具ごと取り替えなければいけないとのことだ※1)。結構な工事費になりそうだ。
図 用語についての説明
蛍光灯とは、蛍光灯用の照明器具(蛍光灯器具)に、蛍光管(ランプ)を嵌めて使うもの。
一般的に言えば、照明とは、照明器具に、照明管(ランプ)を嵌めて使うもの。
よく考えると、我が家はもともと蛍光灯をあまり使っていない。普段は居間で暮らしているけれども、早寝早起きなので、夜遅くまで電気をつけているようなこともない。それに日中は室内も明るいので、蛍光灯はつけていない。寝室は寝る前に少しつけるだけだし、仏間もほとんど照明をつけている時間はない。物置に至っては、一体、年に何時間つけているのだろうか。LEDになると省エネになるというが、いったいどれぐらい電気代が浮くというのだろうか。
そもそも、うちにある蛍光灯はいずれもかなり効率のいいものをつけているので、もともと光熱費は少なく、それをLEDに替えたところで、ほとんど節約になりそうにない。
どうやら、照明器具を取り替えて工事をしてもらうとなると、10万円はかかるようだが、電気代の節約分で取り返せるのだろうか。計算してみると、100年経っても取り返せない(文末「投資回収年数の計算」参照)。
私は健康な限りここで暮らしたいとは思うけれども、正直言っていつまでこの暮らしが続けられるか、それほど自信はない。まあせいぜい10年ぐらいだろうか。すると9万円の損になる。こんな、絶対に取り返せない出費を、なぜしなければいけないのだろうか。
だいたい、なぜ壊れてもいない、それなりにデザインも気に入ってつけた蛍光灯を捨てなければならないのか。この方がよっぽどもったいない。
新しい照明器具をつけるにしても、やっぱり部屋のデザインに合った、それなりの品のいいものにしたい。だがそうするとますますお金がかかることになる。仏間ではお坊さんにお経をあげてもらうこともあるし、寝室には子供や孫が遊びに来て泊まることもある。やはりあまり不細工な部屋にはしたくない。だがそんなことを言うと、もっとお金がかかってしまうのだろうか。
蛍光管の製造と輸入は禁止だが、流通は禁止しないというから、買いだめしておけば、蛍光管が何本か切れても、しばらくは今の蛍光灯器具が使えるのかもしれない。けれども、一体何本買いだめをすればいいのか。それに蛍光灯器具の修理だって、そのうち誰もできなくなるだろう。そうすると、やはり蛍光灯器具ごと取り替えるというのが現実的な選択になってしまう。
前述の経産省の特設ホームページを見ると、LEDは蛍光灯より効率が良いから電気代の節約になってお得です、と書いてある。もし新築の家に照明をつけるなら、トータルでみてLEDの方が良いのかもしれない。だが、すでに立派な蛍光灯器具が付いていて、しかも使用時間が少ないならば、いまさらLEDにしても、何も良いことは無い。
それにしても、なぜこんなひどい規制が出来たのだろう。水銀規制だというが、庶民の暮らしを何だと思っているのだろうか。役所は何をやっているのか。正さんはさらに調べることにした。
(つづく)
投資回収年数の計算
蛍光灯 → LED 切替えの投資回収計算
前提
- 初期費用(器具+工事+出張):100,000円
- 電力単価:30円/kWh
- 消費電力差(高効率蛍光灯 → LED):15W = 0.015 kW
点灯時間
- 居間:毎日 5 時間
- 寝室:毎日 30 分(0.5 時間)
- 仏間:週 1 時間
- 物置:月 1 時間
電気代削減額は
| 場所 | 使用頻度 | 年間使用時間 (h) | 削減電力 (kW) | 年間削減電力量 (kWh) | 年間電気代削減額 (円) |
| 居間 | 5h × 365日 | 1,825 | 0.015 | 27.38 | 821 |
| 寝室 | 0.5h × 365日 | 182.5 | 0.015 | 2.74 | 82 |
| 仏間 | 1h × 52週 | 52 | 0.015 | 0.78 | 23 |
| 物置 | 1h × 12か月 | 12 | 0.015 | 0.18 | 5 |
| 合計 | 2,071.5 | 31.07 | 931 |
投資回収年数は
- 年間電気代削減額合計:931円/年
- 初期費用:100,000円
- 投資回収年数=100,000÷931=107年
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※1)既存の蛍光灯器具を使用したまま蛍光管(ランプ)をLED管に交換する方法は、器具との組み合わせによっては発煙・発火等の事故につながるおそれがあるため、安全性の観点から、業界団体は蛍光灯器具ごとの交換を推奨している。
蛍光灯器具をLED化する際はまるごと照明器具交換を推奨します(一般社団法人日本照明工業会)
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