首相官邸HPより
高市総理が解散をしたとき、どこまで覚悟があるのかと少し疑問であり、かなり厳しいなあと思っていた。しかし、食品消費税の2年間凍結を言い出した。私はこれをもって、やっと高市氏が自民党に対する挑戦を明確にしたなと確信した。
1. 消費税ゼロってマスコミの意思ではなかったか?
まず、自民党に対する挑戦の説明の前に、この消費税減税に関するマスコミの報道がおかしいことを述べたい。
マスコミは「高市氏の消費税に対する考え方が二転三転している」「財源があやふやなままの消費税減税は無謀である」「2年間の期間限定なんてできるわけがない」さらには「消費税を言い出すのはポピュリズムである」とまで言い出した。多くの報道番組でそうであり、BSの、どちらかといえばまともな報道番組でも同様であった。
マスコミの皆さんは、こういった説明をしていて恥ずかしくはないのだろうか?
① 高市氏の消費税に対する考え方に変化があるのか
総裁選でも「今の自民党では消費税減税は受け入れられなかった」と言っているとおり、高市氏個人としては消費税減税をやりたいが、現在は受け入れられないので当面封印すると言っている。これはどう見ても、「本人はやりたいが大人の判断であきらめた」ということである。
なので公式には「今の自民党では消費税減税はしない」という立場をいうしかなく、氏が基本的にはやりたいと思う消費税減税への希望がいろんなところでポロポロ表現されても、「意見がコロコロ変わっている」などというのは無理筋であり、これを二転三転というのは別の意図があると考えるべきだろう。
② 財源があやふやなままなのか
高市氏は「国民会議において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速します」と言っている。
すぐに変更するのは難しいということは前から言っているとおりで、だからこそ検討を進めると、「党内に反対の声の多い消費税減税」が「自民党の方針である」ことを再度明確にしながら、しかも恒久減税ではなく2年間の期間限定とし、財源その他問題ないことを考えていると訴えている。
賛否はあれども、財政の持続性に留意することを言っているのであり、つまり「消費税減税はやります…でも、ちゃんと考えてやるよ」と言っているのである。
③ 消費税減税は2年で元に戻せるのか
まず、野党が期間限定を言っていた時にマスコミは文句を言わなかったのに、なんだ、という気もするが、それはそれとして、確かに元に戻すことは難しい。
でもたぶん「責任ある積極財政の下での強い経済の実現」ができれば、2年以上続けてもいい、というのが高市氏の本音ではないか。
「2年で元に戻せないなら消費税減税はするな」とか、「2年と言うことはそもそもやる気がないに違いない」という主張なら分かるが、「ようやく消費税減税を?」と言いながら「2年で元に戻せないだろう」というだけなのは批判のための批判である。
④ ポピュリズムですか
はい、ポピュリズムだと思う。しかし正直、マスコミの高市氏批判にポピュリズムを言うのは「何をいまさら」というしかない。
それを言うなら先の選挙で自民以外の各党が消費税減税を言っている時に、なぜ言わなかったのだろう。
最初から言っていれば何の問題もない指摘であるが、消費税減税をやらないと言っていたときには自民党を批判し、やると言い出したらそれを「ポピュリズムだ」というのは、いくら何でもひどすぎる。「なぜならそのとき自民党が言い出してなかったから」なんてやめてほしい。そこまで高市氏が憎いのだろうか。
私個人としては、消費税には基本的に疑問があり、段階的に廃止すべきだと思っているが、その時期は今ではないと思っている(そこが参政党と違うところ)。
なので早急に検討して実施していこうというのは、後先を考えない、まさしくポピュリズムだと思っている。政治に責任のある与党にはやってほしくない、というのが本音である。
とはいえ、高市氏がそれをやりたいのであればそれもありだ。マスコミが野党の主張をポピュリズムだと言わず、消費税減税が国民の意思だと言わんばかりに煽ったせいで、自民党が同じポピュリズムをやりだすしかないなら、責める気にはなれない。
※ 私は以前の投稿にも書いたとおり、高市総理の経済感覚については若干の疑問符があるので、氏の経済政策に諸手を挙げて賛成するわけではないが、綱渡りをしながらでもうまくいってくれることを望んでいる。
もう一度言うが、マスコミの皆さんはこういった手のひら返しの説明をしていて恥ずかしくはないのだろうか。安倍元総理や菅元総理にやったような手法がまだ通じると思っているとすれば情けない。
2. 議院内閣制だからこその自民党に対する挑戦
さて、本題だが、今回の選挙の目的についてご本人は「本人が政権選択選挙の洗礼を受けていない」とか「連立の枠組みが」とかいろいろ言っているが、はっきり言ってこれは、高市氏が自分のやりたいことを行う最大の歯止めになっている自民党の反高市分子を黙らせるための選挙だと思っている。その意味で今回の解散は自民党に対する挑戦なのである。
本来は反高市氏だった自民党国会議員が、2回の投票のいずれでも世間(=党員)の力に勝てなかったから、高市氏は総理になれたのである。つまり、党員(今回は国民)の支持があれば、自民党の国会議員も動かせるということである。
それでも総理になったとはいえ、まだまだ前総理だけでなく、高市総理に反対する自民党議員は多くいるようである。安保戦略3文書改定など高市氏の掲げる施策に反対する自民党議員は多い。公明党に未練を感じている議員も多いようだ。
特に消費税減税は、国防や外国人問題のような保守的な意味合いのない、自民党議員の反対者の多い施策である。つまり消費税減税は、前回の参院選で参政・保守に流れた票を取り戻す施策ではないため、自民党議員にとっては保守的施策より抵抗しやすい施策である。
自民党国会議員の多くを敵に回す可能性を秘めているこの消費税減税を、今回選挙公約に持ってきたということは、今後、高市氏の考えるさまざまな施策に自民党国会議員がついてくるのかどうか、というか、ついてこさせる覚悟を決めたということであろう。
高市氏のやりたいさまざまな施策を自民党議員に飲ませるには、国民の後押しを背景に、有無を言わせぬようにするしかないということであり、今回の解散はこのための解散であり、高市氏は彼女に対する高い支持率を背景に、今回は民意が高市氏につくかどうかを問おうとしたと思われる。
だからこそ、解散記者会見でほとんど「自民党」と言わず、「私」「高市」と言っていたのもうなずける。
私は首相公選制には大反対であるが、こういう解散の仕方は小泉氏の例を引くまでもなく「あり」だと思う。
高市氏が「国民の皆様に内閣総理大臣を選んでいただく」というのは、日本は首相公選制でなく議院内閣制であるからこそ、今回の解散の十分な理由となり得るのである。
高市氏の政策に反対の自民党議員は明確に反対を唱えればいい。非公認が怖いからなどという意志の弱い議員はいないと信じたい。だからこそ、その党の政策に対する国民の審判が下った暁には高市氏に賛同するしかなくなるのである。
解散せず、そのまま党内政局に労力を使って政権運営をするより、はるかに意思決定は早くなるだろうし、そうなれば自民党の支持率も上がるであろう、と考えての解散総選挙とみるべきである。
このことを高市氏は解散の記者会見で何度も言っている。
「重要な政策転換について、国民の皆様に正面からお示しし、その是非について堂々と審判を仰ぐことが、民主主義国家のリーダーの責務だと考えました」というのは、まさしく議院内閣制であるからこそ、重要な政策転換の足を引っ張る自民党議員を押さえるために自分を応援してほしい、と捉えるべきである。
また、「自民党が政権公約として掲げ、国民の皆様の審判を受ける。そして選挙が終われば、その公約の実現に向けて党一丸となって突き進んでいく。それは、自民党が国民政党の原点に立ち戻るための戦いでもあります」という表現は、「国民政党=国民の高市支持」と考えれば、まさしく議院内閣制であるからこそ、今回選挙に勝てば自民党は高市氏の政策推進支援団体に変わらざるを得ない、と説明しているのである。
しかも、「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、今、主権者たる国民の皆様に決めていただく、それしかない」と冒頭に発言し、その後の記者との質疑でも「私自身も内閣総理大臣としての進退をかけるということでございます」と言っている。
この言葉も、国民の支持を得られなければ自民党国会議員の全面的な高市氏への支援は得ることができないのだ、そうなれば自分が総理としてできることはない、だから自民党国会議員が自分の政策に賛同してもらえるようにするためにも今回の解散がある、と言っていると考えるのが正しい捉え方だろう。
これだけはっきり言っているのだから、この高い高市氏支持率と低い自民党支持率から判断すれば、今回の争点は自民党と中道革新連合との戦いではなく、総裁選前後に高市氏に期待した自民党にするのか、石破政権時代以前に戻った自民党にするのか、というまさしく「自民党内」に対する政権選択選挙であると理解すべきである。
高市氏が敗れれば、国民は古い自民党を選んだ。その結果、中革、もとい中道に政権が移るかもしれない、ということである。
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田中 奏歌
某企業にて、数年間の海外駐在や医薬関係業界団体副事務局長としての出向を含め、経理・総務関係を中心に勤務。出身企業退職後は関係会社のガバナンスアドバイザーを経て、現在は隠居生活。