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大げさじゃなく、本当にそう思う。先週、ふと気づいたことがある。カレンダーに「○○さんと食事」と書いてある日の前後、なぜか肌の調子がいい。服を選ぶのが楽しい。ちょっと歩いてみようか、という気になる。
今回の著者は、きずな出版社長の櫻井秀勲さん。82歳で起業し、90歳を超えたいまも社長業、執筆業を精力的に行っている。その櫻井さんが書いた恋愛論——これが、ただの恋愛論であるはずがない。
「60歳からの愛と運命 人生で一番優しい、最後の恋愛論」(櫻井秀勲 著)きずな出版
逆に、予定が何もない週は、ダメだ。
食事の時間がバラバラになる。眠りが浅い。気持ちの切り替えができない。
仕事がない、会いたい人がいない、予定がない——この三拍子が揃うと、人間は驚くほど簡単に崩れていく。
心と体はつながっている、とよく言う。
使い古された言葉だけど、これは本当だ。心が前を向けば、体も動く。
「○日に会える」と決まっているだけで、それまでの数日間が、どこか優しく整っていく。これ、経験ある人は多いんじゃないか。
しかも、予定の中身は何でもいい。
コーヒーを飲む。ラーメンを食べる。散歩する。映画を観る。
内容じゃない。「その人と会える」ということ自体が、心の栄養になる。
会う予定があると、人は準備を始める。
「何を着ていこうか」「何を話そうか」「この前の言葉、どう返そうか」——そうやって相手のことを考える時間が、すでに心を整えている。
着ていく服を選ぶのには、特別な意味がある。
「ステキだね」と言ってもらいたいからだ。
好きな人から「ステキ」と言われたら、誰だって嬉しい。当たり前のことだけど、この「当たり前」を忘れている人が、案外多い。
年を取ると、一人の時間が増える。それ自体は悪くない。
でも、その一人の時間の中に「会える人」がいるかどうかで、時間の質がまったく変わる。
「また会おうね」と言える人がいるというのは、人生にとって、とてつもなく大きい。
Xで流れてきた投稿を思い出す。
「予定がある日だけが特別なんじゃない。予定に向かう毎日が、すでに特別なんだ」
誰が書いたか忘れたけど、これはその通りだと思った。
「いま、何かを”好き”と言えるだろうか」
ふと、そんな問いが浮かぶことがある。
昔のように夢中になれるものがない。新しいことに気力が湧かない。
まあ、歳のせいだろう——そう片付けるのは簡単だ。
でも、「好き」という感情は、対象が何であれ、エネルギーをくれる。
人でも、ものでも、風景でも、時間でも。
「好き」と感じること自体が、心が生きている証拠だ。
だから、予定を作れ、とは言わない。
ただ、「会いたい人がいる」という状態を、意識的に作ってみてもいいんじゃないか。
それだけで、毎日は変わる。
嘘みたいだけど、本当に変わる。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)