「週休3日勤務」は天国か?地獄か?

黒坂岳央です。

海外では「週4日勤務(週休3日)」の導入是非が注目されている。

WFH Researchの2025年調査によれば、米国では「週5日出社を義務付けられれば、41.1%が新しい職を探し始め、12.3%が即退職する」と回答した。また「リモートワークが解除されたら転職する」という意見も根強く、もはや柔軟な働き方は、企業にとって無視できない「時代の要請」に見える。

確かに、Microsoft Japanの2019年トライアルでは、給与を維持したまま週4日勤務を実施し、生産性が40%向上したという劇的な成果も報告されている。英国の大規模調査でも、参加企業の9割以上が制度継続を希望し、従業員のストレス低減や収益増加が確認された。

だが、これらは、一部の企業だけの限定的な成功に過ぎない。日本社会の現実に照らし合わせれば、この「選べる自由」が人によっては命取りになると思っている。

もちろん、育児中や療養中の労働者への配慮は必要であり、「とにかくダメだ」と言うつもりはないが、個人的に本来はフルタイム出来るのに「楽をしたいから」という理由だけで選ぶと、逆に楽にならないルートになりやすい、と考えている。

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「選択の自由」がもたらすキャリアの二極化

筆者は週休3日にすると、格差がつきやすくなると考えている。その理由はキャリアの不可逆性と蓄積の差で説明が出来る。

「週5で働きたい人は週5、休みたい人は週4を選べばいい」という論理は一見フェアで、これを始めると多くの人が週4勤務の会社を目指す。「働きたい人はハードワーク、そうでない人はゆるく働く」という棲み分けになるイメージがあるが、現実のビジネス現場はそれほど単純ではない。

欧米の事例でも、柔軟勤務の利用者は管理職昇進において障壁に直面するケースが観測されている。難易度の高いプロジェクトや重要な意思決定の場は、物理的に「そこにいる時間」が長く、いつでも連絡が取れるハードワーカーに集中するのが組織の摂理だ。特に労働集約的な仕事では、「長時間労働」が結果に直結しやすい要素であることを否定出来ない。

週休3日を選択した瞬間、経験値の蓄積速度は単なる「20%減」に留まらず、複利のように差が開いていく。5年、10年と経ったとき、週休2日で走り続けた者との間には、もはや個人の努力では容易に埋められない格差となりやすい。

「ゆるくしんどい状態」の永続という皮肉

週休3日の最大の問題は、若いうちに「楽をしたい」という動機で時短を選択すると、一生蓄財ができず、スキルも劣後するため、結果として「低い生産性で、一生稼ぎが悪いまま働き続けなければならない」というルートが待っていることだ。

リクルートワークス研究所等の調査によれば、日本企業の多くは、勤務日数に応じて給与を調整(減額)する仕組みを採用している。ロート製薬が2026年度から導入する週休3・4日制も、給与は勤務日数に応じて調整される見込みだ。

現在の日本の給与水準において、週4日勤務で得られる報酬は「悠々自適」とは程遠い。生活を維持するために結局は副業を掛け持ちせざるを得ず、トータルの労働時間はむしろ増えるケースも少なくない。

これは「ゆるい働き方」ではなく、単に「稼げないから休日もお金を使えない」という、ゆるくしんどい状態の永続でしかない。短期的な楽を取ったツケは、労働人生の後半戦において、市場価値の低さという形で重くのしかかってしまう。

まずは早い段階で力をつける

人生のどこかのタイミングで生活を上向かせ、週休3日に限らず、「自由と余裕」を手にするためには、逆説的だが「一時的なハードワーク」を避けては通れない。

若いうちにリスクを取り、誰よりも働いたり、圧倒的なスキルと稼ぐ力をつけ、労働生産性を極限まで高める。また、「短時間でも平均以上に稼げる」強者になってから、初めて勤務時間を削るのだ。こうすることで時短でも給与を落とさない選択肢を検討できる。そのためにはまず、実力をつけるのだ。

「最初から最後までゆるく、余裕」では理想論だが、現実問題として支払う給与の何倍も大きな結果を出し続ける要領のいい人は現実的ではない。社会人になると競争相手が必ず存在するので、同じ要領同士でイーブンとなれば後は投下時間と労力で差がつく。今後、AGIなどが出てくれば一部の職業では変わるかもしれないが、少なくとも当面はこの構図が続く。

人間心理の大きな矛盾は若くて遊びたい盛りの時期に、未来の自分を楽にさせるために、誰よりも泥臭く働くというものである。そして「週休3日でも週休2日の人以上にパフォーマンスが出せる」という地位に立っても、そういう人はますます頑張る事が多い。

相対的競争原理を考慮すると、週休3日は厳しい道のりなのだ。起業して独立、オンリーワンだと話は別だが、少なくとも会社員はこの原則から逃れることは難しい。

一生懸命働く強者は、その立場を失わないためにさらに働き、資産を積み上げる。一方で、楽だけを求めて「週休3日」を選択すると者は、スキルの蓄積が鈍化し、低収入のループに固定されるリスクが高まる。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。