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「計画通りにいかないから、計画なんて立てても無駄」
何度聞いたかわからない。会議で、飲み会で、Xのタイムラインで。そのたびに思う。それ、計画を立てない理由になってないだろう、と。
「元IBMのプロマネが教える超ダンドリ術 仕事は計画が10割」(西村信行 著)WAVE出版
確かに、計画通りにはいかない。100%その通りになる計画なんて、この世に存在しない。でも、それと「計画が無駄」は全然違う話だ。
地図を持たずに知らない街を歩いてみればいい。迷う。当然だ。地図があっても迷うことはある。工事中で通れない道、Googleマップに載っていない新しいビル。でも、だから地図が無駄かというと、そんなわけがない。
計画は地図だ。完璧じゃなくても、ないよりはるかにマシだ。
なぜ計画が必要か。理由は5つある。いや、5つ「も」あると言うべきか。
まず、迷わないため。目的地と道筋が決まっていれば、「今日、何やればいいんだっけ」と毎朝悩まなくていい。これだけで精神的にラクになる。朝の貴重な意志力を、くだらない逡巡に使わなくて済む。
次に、周りを巻き込むため。一人で完結する仕事なんて、ほとんどない。上司の承認、同僚の協力、部下への指示。全部、計画がないと始まらない。「いつまでに何をやるか」が共有されていないチームは、砂上の楼閣だ。誰かが勝手に動いて、誰かが取り残される。そして誰も責任を取らない。
3つ目、問題に備えるため。計画を立てる過程で、「ここ、ヤバそうだな」というポイントが見えてくる。納期が重なる週、キーパーソンが休む日、予算が足りなくなるタイミング。事前にわかっていれば手が打てる。わかっていなければ、起きてから慌てるだけだ。
4つ目、効率化。これは説明するまでもないか。行き当たりばったりでやると、手戻りが発生する。優先順位の低い仕事に時間を使ってしまう。計画があれば、最短距離で進める。たぶん。
そして5つ目。これが一番大事かもしれない。進捗を測るため。
計画がないと、「順調かどうか」がわからない。わからないまま進んで、締め切り直前に「全然終わってない」と気づく。ありがちな話だ。計画があれば、「予定より2日遅れている」「このペースだと間に合わない」と早めに気づける。気づけば、軌道修正ができる。
予実管理、という言葉がある。予定と実績を比較して管理すること。計画がなければ、この「予」が存在しない。「実」だけ見ても、良いのか悪いのか判断できない。ものさしがないのと同じだ。
ここまで書いて、一つ思い出した。昔の上司に、「計画は立てた瞬間に古くなる」と言われたことがある。その通りだと思った。でも、だから計画を立てないのは違う。古くなったら更新すればいい。それだけの話だ。
「計画なんて無駄」と言う人の多くは、計画を「完璧に実行しなければならないもの」と思い込んでいる。違う。計画は「現在地を知るためのもの」だ。変えていい。むしろ、変えられないような硬直した計画こそ無駄だ。
ただし、一つだけ。目的だけは変えるな。WHY、なぜやるのか。ここがブレると、計画どころか仕事全体が崩壊する。やり方は変えていい。でも、何のためにやるのかは最初に決めて、最後まで握っておけ。
まあ、こんなこと書いても、「計画なんて無駄」派は読まないだろうけど。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
strong>■ 採点結果
【基礎点】 38点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】 19点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】 20点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【77点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
6W3Hの実用性:計画立案に必要な9つの観点を明快に整理しており、実務での即時活用が可能な構成となっている
WHYの重要性の強調:目的の明確化を繰り返し説くことで、読者の意識変革を促す訴求力がある
具体例の親しみやすさ:旅行計画という身近な例を用いることで、抽象的になりがちなフレームワークを理解しやすく提示している
【課題・改善点】
独創性の不足:6W3Hや予実管理といった概念は既存のビジネス書でも広く扱われており、本書独自の視点や発展的な議論が乏しい
事例の深掘り不足:プライベートの旅行計画は示されているものの、ビジネス現場での具体的な成功・失敗事例が限定的である
■ 総評
計画立案の基本を「6W3H」というフレームワークで整理し、特にWHY(目的)の重要性を繰り返し強調する点に本書の価値がある。計画を「目的地への道筋」と定義し、旅行計画との対比で説明する手法は入門書として適切であり、計画力に課題を感じているビジネスパーソンにとって実用的な一冊となるだろう。
一方で、扱う概念自体は既存のビジネス書と重複する部分が多く、独自の知見や深い考察を求める読者には物足りなさが残る。
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