国は「二極化」を歓迎している:税収過去最高と倒産1万件が示す残酷な真実 --- 長瀬 好征

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「景気が悪いから倒産が増えている」──多くの社長がそう思い込んでいる。

しかし、データが示す現実は全く逆だ。

周知のとおり、2024年度の税収は過去最高の80兆円を超えた。その一方で、倒産件数は12年ぶりに1万件を突破し、4年連続で増加している。この矛盾した数字が意味することは何か?

答えは明快だ。国は「二極化」を歓迎しているのである。

好景気の「上澄み」だけを救う国策

税収80兆円という数字は、稼ぐ企業が確実に利益を上げ、納税を増やしていることの証明である。

しかし同時に、倒産企業の負債総額は減少傾向にある。これが意味するのは、潰れているのは「小規模・零細企業」ばかりだということだ。経済財政白書を読めば、政府の意図は明らかである。

「一律の保護・救済」を捨て、「生産性向上の意欲と能力のある企業への重点支援」へと舵を切った。価格転嫁ができない企業、賃上げに対応できない企業については、「市場からの退出もやむなし」と明言している。

これは失敗ではない。

政府にとって「狙い通り」のシナリオなのだ。

「新陳代謝」という美名で隠された淘汰

「新陳代謝」という言葉は、経済学的には正しい。効率の悪い企業が退出し、効率の良い企業が成長する。理論上、これで経済全体の生産性が向上する。

しかし、誰が「効率が悪い」と判断するのか? 誰にとっての「生産性」なのか?

中小企業白書を過去10年分遡れば分かる。「生産性向上」「新陳代謝」「事業承継・M&A」というキーワードが、毎年繰り返し登場している。

これは一過性の流れではない。

コロナ禍前から一貫して推進されてきた国策なのだ。

2020年から2022年のコロナ対策──ゼロゼロ融資や給付金──は、あくまで緊急対応だった。

多くの社長は、これが「新しい常識」だと勘違いして浮かれていた。

しかし国は今、コロナ禍前の方針に「戻した」だけである。それどころか、金融庁は2026年5月に「企業価値担保権」という新しい融資モデルを施行する。

不動産ではなく、事業の将来性そのものを担保にする制度だ。ほとんどの社長は存在すら知らないだろうが止まることは無い。

つまり、これからは「知性(事業計画)」がない社長には、お金を貸さないという時代に否応なく突入する。

選挙の目玉と「官僚の意志」の乖離

今回の衆議院選挙でも、各党がこぞって「中小企業対策」や「物価支援対策」を公約に掲げている。

しかし、有権者である社長たちは冷静に考えるべきだ。

政権の顔ぶれが変われば、一時的な補助金や支援策の名称は変わるかもしれない。だが、政策の実務を担っているのは、内閣府や各省庁という官僚機構である。

組織としての継続性を持つ彼らが、白書や行政方針を通じて長年積み上げてきた「選別と新陳代謝」というグランドデザインは、今回の選挙結果で揺らぐものではない。

国はすでに、「救済」のステージを終え、「選別」のステージへ完全に移行しているのだ。

「頑張る」では生き残れない時代

ここで、多くの社長が見落としている決定的な事実がある。

中小企業白書2025は、こう明言している。

「経営計画を策定・運用する企業は、未策定の企業に比べて収益性が1.3倍以上向上する」

つまり、国はすでに「何をすれば勝てるか」の答えを公開しているのだ。それは「頑張ること」ではない。「計画を持つこと」である。

しかし、事業計画を策定している企業は約30%に過ぎない。残り70%の社長は、地図も羅針盤も持たずに大海原を漂っている。

どれだけ櫂を漕いでも(頑張っても)、目的地には辿り着けない。

行動する前に勝負がついている

令和の時代、勝負は「行動する前」についている。

どれだけ朝から晩まで働いても、売上を150%伸ばしても、「在りよう」──つまり、知性・覚悟・実行力──がなければ、スタート地点で負けが確定しているのだ

国も銀行も、あなたの「頑張り」には興味がない。

彼らが見ているのは、「この社長は科学(計画)を持っているか」「10年後も生き残れる知性があるか」という「在りよう」だけである。

逆に言えば、この条件を満たした瞬間、競合の99%が脱落する中で、あなたは一人勝ちできる。

国も銀行も、「淘汰する側」から「応援する側」に回る。

令和のイージーゲーム

国が二極化を是としているなら、迷わず「勝ち組」の側に行けばいい。その条件は、すでに白書という形で完全に公開されている。カンニングペーパーが配られているのと同じだ。

それを読まず、「時間がない」「忙しい」「やったことない」「難しい」と言い訳をして計画を書かない社長は、自ら淘汰の列に並んでいるに等しい。

頑張るな。在りようを磨け。

頑張りの量ではなく、在りようの質で勝負が決まる。

行動する前に勝負がついている時代だからこそ、科学を持ち、計画を書き、外部環境を味方につける「在りよう」を持った者だけが、圧勝する。

令和のイージーゲームは、もう始まっている。あなたは、どちら側に立つのか。

長瀬 好征
経営コンサルタント。一倉定の思想と認知脳科学を融合した「収益満開経営」を提唱。元融資サポートのプロとして30社以上の財務改善を支援。年商50億円突破を見据えた経営の科学化を伝承している。
収益満開経営(ブログ):https://evergreen-mgt.biz/blog/