オーストリアのアンドレアス・バブラー副首相(メディア担当兼任)は2日、児童および青少年のソーシャルメディア利用禁止をめぐる規制法(SOG)をこの夏までに策定すると発表した。法案の目的は、プラットフォーム上の有害コンテンツから青少年をより適切に保護することだ。同時に、プラットフォーム運営者の責任も強化する意向だ。
バブラー副首相 オーストリア社会民主党公式サイトから
バブラー副首相はプレスリリースで新法の中核について、「Instagram、Snapchat、TikTokなどのソーシャルメディアの利用年齢制限だ。年齢制限に関する議論は、政府内および国民の間で広く支持されている。欧州連合(EU)レベルで迅速な合意が得られない場合、国内で行動を起こす用意がある」という。プラットフォームを利用できない年齢問題はまだ未決定だ。政府レベルでの今後の議論の中で煮詰めていく予定という。
メディア省によると、法案草案には、規制に違反したプラットフォーム運営者に対する厳しい罰則が含まれる予定。欧州のデジタルサービス法(DSA)の枠組みでは、世界全体の年間売上高の最大6%の制裁金が認められており、これが基準となる可能性があるという。これは主に、アルゴリズムによってコンテンツを配信または優先するTikTokとSnapchatなどが対象だ。
ところで、ソーシャルメディア(SNS)の利用制限、特に未成年者に対する年齢制限は、現在世界中で大きな議論を呼んでいる。2024年末から2026年にかけて、オーストラリアが「16歳未満のSNS利用禁止」という世界初の法律を可決したのを皮切りに、フランス(15歳未満制限)やアメリカの一部州でも同様の動きが加速している。
規制の是非について
賛成派(規制すべき)は①メンタルヘルス保護:SNS特有の「無限スクロール」や通知機能が中毒性を生み、うつ病や不安、睡眠障害を誘発する。②安全性の確保:いじめ、性的搾取(グルーミング)、有害コンテンツへの接触から子どもを守る必要がある。
反対・慎重派は、①地下への潜伏:規制されたプラットフォームを避け、より管理の届かないダークなネット空間へ子どもが流れるリスクがある。②スキルの未発達:SNSを遠ざけることで、現代に必要なデジタルリテラシーを育む機会が失われる。③プライバシーの懸念:厳格な年齢確認を行うために、より詳細な個人情報の提供がプラットフォームに求められる矛盾が生じる。
ちなみに、テクノロジー企業の立場Meta、TikTok、Googleなどのビッグテック各社は、一律の禁止措置に対して強く反発している。VPNによる回避が容易であり、技術的に完全な年齢確認は困難であることや若年層ユーザーの減少は広告収益に直接響くため、ビジネスモデルへの大きな脅威と受け取っている。
オーストリアのシュトッカー政権では、連立パートナーのリベラル派政党「NEOS」は規制法に難色、野党第1党の自由党(FPO)は批判的だ。「緑の党」は、年齢確認の義務化を推進し、「遵守しないプラットフォームには明確な罰則」を求めている、といった具合だ。
ちなみに、14歳未満のソーシャルメディア利用禁止をめぐる議論において、オーストリア・カトリック青年会(KJO)は全面禁止に反対している。カトプレス通信(1月28日)への声明の中で、「ソーシャルメディアは若者だけの問題ではなく、社会全体に影響を与える。全面禁止は、若者から日常生活の不可欠な部分を奪うことになる」と主張している。
<参考情報>
①オーストラリアは2025年12月10日、16歳未満のSNS利用を全面的に禁止する世界初の法律(改正オンライン安全法)を施行した。この政策は、若者のメンタルヘルス保護と「子ども時代を取り戻す」ことを目的としている。
政策の具体的内容は、対象は:TikTok、Instagram、Facebook、X、YouTube、Snapchat、Redditなど主要10プラットフォーム。
義務の所在:利用者や保護者ではなく、プラットフォーム運営企業に課される。
罰則:企業が16歳未満のアカウント保有を防止する「合理的な措置」を怠った場合、最大5,000万豪ドル(約50億円)の罰金が科せられる。
なお、施行から1ヶ月弱で、Metaは約55万件、全体では約470万件のアカウントが閉鎖・制限された。保護者の間では非常に好評で、約7割から8割が高い支持を示している。オーストラリア政府は施行から2年後に、この法律の効果を評価するレビュー(見直し)を行う予定だ。
②ソーシャルメディア(SNS)と若者の自殺に関する問題で、世界的に最も大きな影響を与え、法的・政治的な転換点となったのはイギリスのモーリー・ラッセルさんの事例だ。。2017年、14歳だったモーリー・ラッセルさんが自ら命を絶った。この事件は、SNSが若者の死にどのように関与したかを司法が初めて正式に認めた画期的な事例となった。彼女は亡くなる前の半年間に、InstagramやPinterestで2,100件以上もの自殺、自傷行為、うつ病に関連する投稿を閲覧・保存していた。彼女が一度そうしたコンテンツを検索・閲覧すると、SNSのレコメンド機能(アルゴリズム)が、さらに多くの「絶望的で暗いコンテンツ」を自動的に推奨し続けた。2022年の検死法廷において、検死官は「彼女はうつ病と、オンライン・コンテンツの負の影響によって亡くなった」と結論付けた。SNSが死の一因であると法的に認定された世界初のケースだ。
③アメリカではTikTokなどで流行した「意識を失うまで自分の首を絞める」という危険な挑戦(ブラックアウト・チャレンジ)が原因で、多くの子どもが死亡している。2021年、アメリカの10歳と14歳の少女がこのチャレンジ中に死亡し、遺族はTikTokを相手取って訴訟を起こした。匿名のメッセージアプリやSNSでの誹謗中傷が原因となるケースも後を絶たない。2013年、匿名質問サイト「Ask.fm」での執拗な誹謗中傷(サイバーいじめ)が原因で、少なくとも9人の若者が自殺したと報じられている。
注:オーストリア国営放送(ORF)の関連情報と人工知能(AI)からのデータを参考にまとめた。
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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。