リニアの山梨駅が着工になります。問題はこの駅が何もないところに建設されること。最も近いのが身延線の小井川駅で約3キロ。山梨の玄関口、甲府駅には7キロあります。そこでシャトルバスを運行するという計画になっており、また駅前を森にするという計画もあります。「駅前を森?」というのも不思議な発想ですが、リニア山梨駅が如何に中途半端かということを物語っているとも言えます。
リニアモーターカー(中央新幹線)計画 JR東海HPより
リニア山梨駅は開業後安定すると一日12600人の乗降客があると想定されています。大半が観光客。新幹線の熱海が一日33000人ですから比較参照するとなるほどと思うでしょう。しかも熱海は温泉があり観光地ですからコンスタントに客は来ますが、山梨県は東京都に接しているのですが、「Youは何しに山梨に?」なのです。
リニアの場合は基本の運行設計が東京から名古屋に行く人が前提なので山梨あたりで降りられるとJRは困るわけです。でも政治的に無理をして「おらが山梨にもリニアが来たぞ、武田信玄も大喜びだ」と言わんばかりなのでしょう。では100歩譲ってそれを奇貨とするにはどうしたらよいでしょうか?
乗客からするとリニアですっ飛んできても駅を降りてからの接続バスがたまにしか来なくてそこで時間をロスすると「何のために高い金を払ったのか?」になります。よって甲府駅にいかにスムーズに早く到着させるか、それこそ格安でリニアの到着に合わせてどんどん便を出すしかないでしょう。また甲府駅はただの駅であってこのあたりに来る人は石和温泉、ブドウ狩り、富士山あたりが目当てなのでそこへのアクセスをどれだけつけられるかが勝負となります。
なぜまだ10年以上も先の開業となるリニアの駅のことをこれだけ書いたか、と言えば東海道や山陽新幹線でも同様の問題はあったのです。例えば新横浜。今では交通の要衝ですが、かつては何もないところでした。駅の南側は畑や古い家が立ち並んでいました。同様に新神戸。トンネルの中で風景が見えない駅ですが、ここも利便性は悪かったのです。いまでは地下鉄をはじめ、各方面への足は便利になりましたがそうなるのに時間がかかったのです。
ということは街づくりはかなり早くから準備をする必要があるということです。実は山梨県はかつて東京のベッドタウンになれるか、という話がありました。私が勤めたゼネコンでは八王子と大月の間の上野原駅そばに大規模住宅地を作りましたが、個人的には東京の人の心理、「高尾山の向こうは山しかなかった」は今でも改善できていないと思います。
しかし、リニアだと山梨から品川までわずか25分なのです。私が山手線で目白から品川に行くより早いのです。ならばそれは生かすべきなのです。そこにどれだけ魅力を作り出せるかであって駅前を森にするというのは短絡的な気がします。私が都市開発者であれば神奈川県の横浜、千葉県の千葉、埼玉県の大宮と並ぶ時間感覚で居住できる山梨は改めてベッドタウンの潜在性を高めるほか、精密機械などの産業の誘致を含め絶好のロケーションになりえると思います。(さほど遠くない長野県の諏訪湖周辺は精密機械産業のメッカでした。)
私の友人は東京の会社に通うのに宇都宮から新幹線通勤しています。また三島から新幹線通勤していた方もいます。なぜ、と聞けば「住宅が安い、環境はいい、過ごしやすいから」だと言っていました。新幹線通勤は決して珍しくないのです。
街づくりは鉄道路線が新しく開業すると大きく変わります。古くは東急田園都市線。ここは金妻のイメージで爆発的に有名になりましたが、今でも重要な通勤路線です。秋葉原につながるつくばエクスプレスは開業後、人口動態がすっかり変わり、沿線では子供が増えたことでも有名です。地下鉄の大江戸線が練馬の奥地を通り、大泉学園まで延伸されますが、ここは鉄道空白地帯でしたので効果は絶大になるでしょう。
鉄道の延伸や新線はめったにないことですが、無から有を生み出すという点で極めて大きな力が生まれるのです。特に東京を基点で考えると人口の分散化を促進するので長い目で見て地域全体の活性化が促進されます。本当の地方都市については私はコンパクトシティを目指すべきだと思いますが、東京や大阪など大都市圏はむしろ計画的な分散化を進め、災害時のリスク分散という点まで含めて考えるべきだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月4日の記事より転載させていただきました。