海外の主要都市には日本人の子女が日本語で教育を受けられるような仕組みが存在します。基本的には文科省が主導する仕組みで全日制の日本人学校と放課後や土曜日に授業が行われる補習校に分類できます。それ以外に日本の私立学校が海外に日本語学校を設立するケースもありますが、これは世界で6校しかなく、例外的なのでここでは一応除外しておきます。
そもそもこの制度が何処から来るのかといえば憲法26条に定める教育を受ける権利であります。つまり「全ての日本国民は義務教育については等しく受けることが出来る」とあるので、海外駐在員の子女が現地で日本の教育を受けることは憲法が保障している内容である、と言えるのです。
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非英語圏の国、特にアジア諸国では駐在員も多いし、子女も多いのですが、現地語の学校では全く理解できないとなれば全日制の日本人学校は都合がよいと思います。
一方、私のように英語圏の国ならば平日は現地校に通い、日本と現地との教育内容のギャップを埋める土曜日の「補習校」が機能すると言えます。ちなみに文科省の規定で生徒が100人以上いれば日本から校長先生が派遣されることになっています。実際に教鞭をとる先生方は通常、現地に住む日本人の方々が多いのであります。
さて、この一見よくできているように見える仕組みですが、少なくとも私が当地で見る限りでは制度疲労があり、無理がたたっている感が強いと思います。理由はいくつかあります。1つ目は先生の質のムラ、2つ目は生徒やその親が望む教育レベルとのギャップが大きいケースがある点です。3つ目は駐在員なんて北米では流行らない制度で激減どころか日本の企業で駐在員を置かない会社がどんどん増えているのです。なぜ駐在員を置かないか、といえば業務上ラインの仕事をしないからです。
誰でも知るいくつかの大手日本企業の駐在員はゴルフと飲み会が仕事でした。会社ではローカルスタッフからは異端視され、組織の人数にすらカウントされていない会社すらあったのです。確かに今では平日ゴルフや飲み会はほとんどなくなったと思いますが、4-5年でローテーションする駐在員への業務の期待度は極めて低い、これが実情でそれが結局は駐在員不要論に繋がります。
もう1つは駐在員でも単身が多い、これも実態であります。その昔、一部の企業は家族帯同を原則とする、という耳障りの良いアナウンスをした時代もありましたが、機能していません。家族帯同するならば子女がまだ小さいうち、それこそ小学校ぐらいならよいと思いますが、中学に入ると激減、高校はまばらなんていう事態すら起きるのです。
当然、補習校などでは駐在員の数は減ります。一方、補習校のそもそもの目的は「日本の教育にキャッチアップすること」であります。しかし、駐在員の子女の人数が減るも生徒が100人いないと校長が派遣されないので学校に入れる子女の門戸を広げます。つまり現地に永住する日本人の子女とのミックス化が起きます。そこにみられるものは教育内容とそれに不満の親たちの激しいバトルであります。
どちらが強いか、と言えば現地に永住する人たちが強いかも、です。なぜならずっとそこに住むその子女たちですから。そうすると駐在員は「補習校は機能しないぞ」という話となり、単身赴任が増える、この循環になりやすいと言えるのです。もう1つは駐在員の子女でも補習校に行かないという選択もあります。一番あり得るのが民間の日本の教育企業が提供するオンライン学習。正直、補習という意味ではこれの方が絶対に効率が良いはずです。私もかつて塾経営を手伝っており、その際にオンライン型の個別指導を取り入れてましたのでその効果のほどは理解しているのです。
問題提起を一つ。補習校の運営は国の各種支援と授業料収入、更にその運営母体の資金的負担によるところが大きいと思います。しかし、現地に永住している日本人の子女は日本人ではない人が多いと思います。国際結婚した場合、二重国籍を禁止する日本において泣く泣く日本のパスポートをギブアップし、現地国のパスポートに切り替える人が大半だからです。つまりパスポート上、日本人じゃないけれど一部は日本国の税金で教育支援する形になります。日本教育の国際化という点ではよいと思いますが、狭義の意味ではあいまいになっている気がします。
教育目的が日本の教育に追いつき、先々の受験で不利にならないようにするという期待に対して日本の教育との接点を深めるという永住者の子女の目的意識とのギャップは正直、埋まらないと思います。
制度的な大改革をする時期にあると言えるでしょう。よく言われるのが政府が絡むと碌な事業にならないということ。ならば海外子女教育は民間主導で政府がバックアップする体制の方が展開しやすいと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月5日の記事より転載させていただきました。