アメリカ、カナダ、メキシコの貿易協定は瓦解するのか?

ブルームバーグによるとトランプ大統領はどうもアメリカ、カナダ、メキシコの貿易協定(USMCA)の継続に興味がないようだ、と報じています。7月にこの交渉を控える中で、トランプ氏の性格とこれまでの動きからすると個人的にはUSMCAはいったん切り離したいのだとみています。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

理由はトランプ氏は二国間協定が好みであり、マルチ協定は妥協の産物になるので好きではないのです。トランプ氏が多国間協定や国家間連携に興味がほとんどないのは自分がセンターステージに立ち、かつ、絶対的な決定権がないことが不満なのです。それこそ、極端な話、G7なんて全く興味がないのですが、幸いにしてG7そのものが何の成果も生まなくなってきており、単なる社交クラブと化しているので放置しているスタンスなのでしょう。

私がトランプ氏ならばアメリカとメキシコの二国間協定をまず進めます。双方にはまだ相互依存の関係を構築できる部分が大きいからです。それとアメリカにとってメキシコを協力者においておくことでアメリカとメキシコの国境管理をしやすくなるのです。ご承知の通り、厳しくなったとされるものの不法入国者のほとんどはメキシコとの国境からの入国です。その不法入国者はメキシコ人ではなく他国の人であり、多くは中米を渡り歩き、メキシコの南部国境を越えてアメリカを目指します。一時期多数の中国人までそのルートでアメリカに不法入国しようとした時もありました。

中国などがメキシコを経由してアメリカ向けに輸出をするのは難しくなると思います。ただ抜け穴はあるでしょう。例えばメキシコとベトナムはCPTPP加盟国ですから中国のモノをベトナムで形式的に製造し、メキシコに輸出することは不可能ではありません。

ところで、原産地の確認の厳格化が進んでいます。特にアメリカでは厳しいとされます。輸出する企業は原産地証明を取得するケースが多いと思います。私も輸出の際には物品により取得しています。(書籍は不要。)この原産地証明、誰が発行するかと言えば輸出者の会社がある場所の商工会議所です。私の場合は東京商工会議所。その発行手続きは極めて簡単、そして物品を見ることも確認することも何もありません。どこで製造されたか聞かれることもありません。私はいつも「これって何なんだろう」と思います。

その代わりカナダ税関で検査に引っかかる確率が高いのです。先日の通関も引っかかったのですが、これがまたずるい仕組みで、コンテナを当局の検査場にもっていき、検査し、完了後、通関後の一次預かり倉庫に移動するまでの総コストは全部荷主持ちなんです。勝手に抜き打ち検査して10日ぐらい遅れが出て挙句の果てに30万円以上を検査料として政府に払えと。払わないと貨物がリリースされないのです。まぁ一般の方が聞いたらやりきれない仕組みだと思います。その際も一応、原産地証明はつけていたので何ら追徴はなく、効力はあったことは確かです。

さて、USMCAの話ですが、カナダとはどうするのか、であります。これは相当微妙で揉めると思います。何度も書きましたようにトランプ氏はカナダを苛めて苛めて苛め抜いているのです。感情以外の何物でもありません。大っ嫌いなのでしょう。なのでカナダ人もアメリカが嫌いになってしまい、アメリカを訪れるカナダ人は激減し、酒屋ではアメリカのワインは手に入りません。最近できたアメリカとカナダを結ぶ新しい橋についてカナダからの通航制限をするぞ、などと子供のようなことを平気でいうトランプ大統領は常軌を逸しているともいえます。

ではアメリカはカナダなしでも大丈夫なのか、といえば大丈夫かもしれません。多少のコスト負担はありますが、代替手段もあるし、今までの数々の変化を乗り越えたアメリカにとってもう一つ増えたぐらいではないかと思います。

ではカナダはと言えば、これは確かに影響は大きいと思います。特に自動車産業などは厳しいのですが、実はカナダの大手企業の多くはアメリカ資本なのです。よってアメリカからすれば自分で自分を苦しめる結果になるわけです。

アメリカ議会が偉いと思ったのは10日に連邦議会が関税関連決議を8月まで保留するという議決を217対214で可決、次いで11日にはその対象国をカナダとするという決議で219対211の採決となりました。つまり議会は民主党全員と一部の共和党員が「トランプ大統領のやっていることはおかしい」と突き付けたわけです。もちろん、仕組み的にはそれでも大統領令でどうにでもできるパワーはありますが、トランプ氏もこれは無視できないのです。

ほとんど論理的理由なしにカナダを不利にさせる事項はアメリカ議会が通さないことを突き付けたと言えます。アメリカからは「カナダは友達だよ」というメッセージすら強く発信されています。

こうなるとトランプ氏とアメリカ議会という対立軸が出来ると共に中間選挙に逆風となることはトランプ氏自身が一番分かっていることであり、この先、7月まではまだ紆余曲折なのだろうというのが私の見方であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月12日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。