ドイツのメルツ首相は13日、同国南部バイエルン州の州都ミュンヘンで開催された第62回「ミュンヘン安全保障会議」(MSC)で基調演説をし、米国との新しいパートナーシップを主張、トランプ米政権との根本的な相違を指摘し、欧州の統合を促進し、世界で欧州の関与を強めていく意向を語った。メルツ首相は米国、ロシア、中国といった大国の力の秩序ではなく、地球規模の課題を共に解決していくパートナーシップの道を主張した。
MSCで基調演説するドイツのメルツ首相 2026年2月13日 ドイツ連邦首相府公式サイトから
以下、ドイツ連邦首相府公式サイトは首相の演説を3つの要点にまとめている。
【新たな世界秩序】
権利とルールに基づいた国際秩序は、もはやそのような形では存在しない。ロシアによるウクライナ侵略戦争を契機に、公然と勃発する戦争と紛争の新たな段階が始まった。勢力圏、従属国、そして同盟国をめぐる争いは、時に民主的に構成された国家を行動能力の限界まで追い詰めている。
【大西洋横断関係】
米国との間に亀裂が生じ、米国の主導権主張が揺らいでいる。一部の問題について、欧州はワシントン政権とは異なる評価を下している。しかし、このパートナーシップには多くの困難が伴うが、依然として潜在力はある。北大西洋条約機構(NATO)は、欧州と米国にとって共通のメリットがある。
【欧州の新たな役割】
欧州は自らの利益と価値観を守り、自らの強みに頼らなければならない。何よりも重要なのはヨーロッパの自由であり、それは安全保障と経済力によってのみ可能となる。自由を推進するプログラムは、将来、ヨーロッパをより強固で主権的なものにするはずだ。
メルツ首相は「欧州の米国への依存は自ら招いたものだ。欧州は今こそこの依存から脱却するために協力し、米国との新たなスタートを望んでいる」と述べ、「大西洋間の信頼関係を修復し、回復させる。最近私たちが陥っている米国への過度の依存は、誰も私たちに強制したものではない。この未熟さは自ら招いたものだ。しかし、私たちは今、この状態から脱却しようとしている。一日も早く脱却したい」と述べている。
そして「欧州はNATOを見限るべきではなく、自らの利益のために、同盟の中に強固で自立した欧州の柱を築く必要がある。目標は新たな力、新たな敬意、そして新たな自尊心をもって自らを主張することだ。ロシアは対話に応じる意思を示さなければならない。そうすれば、欧州はいつでも交渉に応じる準備ができる」という。
メルツ首相は、米国との根本的なイデオロギーの違いを指摘した。「現在の世界情勢は、権力政治への回帰と強力なリーダーシップの必要性を特徴としている。私たちも新たな時代に向けて準備を進めている。その過程で、ワシントンの政権とは異なる結論に達する。トランプ米大統領に触発されたMAGA運動(「アメリカを再び偉大に」)が仕掛ける文化戦争は、我々のものではない」と述べた。そして「我々は関税や保護主義ではなく、自由貿易を信じている。気候変動に関する協定と世界保健機関(WHO)の主張を支持するのは、地球規模の課題を共に解決していくしかないと確信しているからだ」と主張した。
2025年6月 トランプ大統領と会談するメルツ首相 ホワイトハウスHPより
そして「NATO加盟国すべてが集団的な力から恩恵を受けるため、大西洋横断の信頼関係を修復し、再生させる必要がある。大国の時代にあっては、米国もこの信頼関係に依存する。単独で行動すれば自らの力の限界に達する」と語った。
メルツ首相は、権力政治の時代に欧州が自らを主張するための4つの柱を概説した。
- 欧州は軍事力と技術力を強化する。
- 主権を持ち統一された欧州こそがこの時代への最強の対応だ。欧州は自らを強化する。
- 欧州は大西洋横断関係を再構築し、双方が自らの利益を実感できるようにする。例えば、NATOは欧州にとってだけでなく、米国にとっても競争上の優位性となる。
- 欧州はグローバルなパートナーシップのネットワークを構築する。
最後に、メルツ氏は「ドイツ人は歴史的経験から、力だけがものを言う政治システムは選択肢にはないことを知っている。考えられる道はパートナーシップだ。1945年以降、ドイツに民主主義と協力への道を示したのは、主に米国だった。私たちはこの道を歩み続ける」と述べた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。