あとだしジャンケンでも良いと思います ―中川信博―

中川 信博

―本当に大丈夫なのでしょうか―

報道によると、民主党鳩山代表が2020年の日本の温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減する、同党の目標を堅持する考えを表明したことにたいする、産業界からの疑問の声が上がっています。アゴラの寄稿者は経済学者や企業経営者、コンサルタントと専門家が多数おられるので、経済的な見地、経営的な見地からの寄稿があると思いますので、本稿は私なりの視点で考えてみたいと思います。


―指導者で将来が変わります―

民主党政権が新しく「国家戦略局」を設置して予算や政策の調整を一元化するという方針で、菅直人氏が担当相に内定したという報道があります。これまで事務次官間で調整されていた国家基本政策を戦略局に権限移譲して、官僚支配体制を一新することが目的だと説明されています。

この件自体は悪いものではないと思いますが、戦略を企画立案するのは人ですから、その資質で結果は大きく変わることは自明だと思います。その視点から鳩山代表の先出の25%削減の表明を考えますと、「戦略的思考」は皆無といえると思います。

個人が有言実行や率先垂範宜しく自己に厳しく、何かを律することは非常に重要であり、また自己修養には必要なことです。私も信仰や剣道を通じて自己修養に努めていますので異議はありません。しかし国家としてそのような目標を全世界に提示して、その目標が達成できていないと、各国から攻め立てられるようなことに国民を巻き込むのでは指導者としては失格だと思います。

交渉下手な上司を持った部下はいつも会社に無理な目標設定をされて、同じ成果を上げている他の部にくらべ昇進は遅れ、昇給もボーナスもカットされているのと、同じ状況が我国に襲うことになると思います。

―国際社会はそんな甘くはない―

「大英帝国には永遠の友も永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益だけだ」とはパーマストン卿の言葉ですが、世界島の西の端に位置する島国、英国の外交政策を実に端的に表現していると思います。たとえばこの考えに沿ってオバマ大統領が先日行なったプラハ演説を考えてみます。

核廃絶に向けたオバマ大統領の演説は絶賛され、日本共産党の志井委員長も大統領に手紙をだして賛美したとの報道がありましたが、大統領が心から核廃絶を訴えたのでしょうか?もしかしますとそうなのかもしれませんが、国家戦略として大統領がそのような発言を何の対策もなしに宣言することはないと思います。米国の交渉相手でありますロシアは尚更、オバマ大統領が世界平和のために核廃絶宣言をしたなどと考えてはいないと思います。

―国家間でもビジネスの世界でも同じだと考える必要があります―

契約交渉でも自分だけ一方的に譲歩することは考えられません。当然相手方にはその譲歩以上の譲歩を求めてこそ優秀な交渉人なのです。ではオバマ大統領のメッセージを受けてロシア側はいかに考えたのでしょうか。

オバマ大統領が世界に向けてメッセージを出したことは、そのメッセージが実現できなかった場合のリスクをどう考えるかだと思います。オバマ大統領が削減を言って誠意を持って交渉して、ロシア側の非協力で交渉が不成立に終わっても、米国の印象は国際社会に対して悪いものにはならないでしょうが、しかし削減すると言って出来ないのですから、ロシアは逆に非協力を言うかもしれません。

とすればロシア側に譲歩を引き出す為の戦略と考えられなくはないですが、ロシア側はそうとは受け取らないでしょう。もしかすると核兵器以上の兵器開発の成功したのではないか、いや米国が保有している核兵器の維持費用がかさみ、昨年の金融危機で削減しなくてはならないのか。いや核兵器の半数近くが経年劣化で使用不能に陥り、廃棄しなければならなくなったので、それにロシア側を巻き込もうとしている大掛かりの戦略なのか。ロシア側の情報担当者はその理由を探っているのでないのでしょうか。

現実かどうかは別として、素人の私でもその程度ことは考えるのですから、一国の政治指導者であれば公には賛意を示しても、あらゆる可能性を考え、口では単純にオバマ大統領の平和思考を絶賛していても、心の中では疑いの目を向けなければ指導者として失格ではないかと思います。

―政策と戦略―

「地球温暖化を抑制する為、我国は2020年までに25%のCO2排出を削減する」という政策を国際社会に宣言すれば、この政策の大目的は「地球の温暖化を抑制する」ことで中目的として「我国は25%排出量を削減する」ことになると思います。ですから我国が25%の削減目標を達成してもこの政策の目的が達成されたことにならないのです。あくまでも大目的は「地球温暖化を抑制」することですから、我国が25%排出量制限目標を達成しても、どこかの国がその分を増やしたならばまったく意味のないことになります。

では戦略側はどうすればよいのでしょうか。政府にその大目的と中目的を達成させる為、まず中目的を達成させる戦略を企画立案執行しながら、大目的達成の為の戦略を企画立案執行しなければなりません。

中目的のためには、なんとか経済成長を維持しながら目的を達成させるように、産業界及び一般家庭に相当な節約と負担を課すため、産業の構造をモノつくりから金融など排出量の比較的少ない分野にシフトさせるなどの施策が必要になります。また企業は工場を国内から海外に移転させる必要があるかもしれません。

一方、大目的達成の為には各国にその意義を説明して排出量を抑制に協力させるとともに、特に現在排出量の40%あまりをしめる、米国政府及び中国政府には、我国並みの数値目標を掲げさせ、さらにそれが進捗しているかを、監視委員会をつくり毎年米国政府、中国政府へ監視団を派遣して監視する必要があります。

―あとだしジャンケンでも良いんです―

次期総理候補の民主党鳩山代表及び、国家戦略局担当相候補であります菅代表代行に、それらを実行してゆく気構えと策があるのか大いに疑問です。失礼な言い方になりますが、2020年には民主党があるかどうかも定かではありませし、また地球温暖化の原因がCO2ではないという研究結果が発表されることも考えられます。―そのような研究結果はすでに多くあります―

その時点で我国の経済は決定的な打撃を被って経済小国に成り下がってしまう危険性もあります。温暖化抑制政策を宣言する前に、まず我国の経済への影響をよく勘案して、少なくとも現在の状態を維持できる程度の確証が得られるか議論し、また米国政府、中国政府がCO2削減のテーブルに乗るか―乗させることができるか―どうかをみてからでも遅くはないと思います。あとだしジャンケンでも良いんです。

―前しか見てない運転手は交替していただきたいと思います―

もしかすると私達は普通免許しか持っていない運転手の運転で走っている大型バスで狭い街中を走っていて、その運転手はバックミラーもサイドミラーもみないで「友愛」という理想で前方しかみてないのかもしれません。もしそうであれば私達はすぐに運転手に替わってもらわなければなりません。

追記
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H21.9.8 20:09

追記
「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、わが国の国際社会への約束の『前提』となる」と発言されたそうですが、であるならば本稿の指摘は多少弱まりますが、やはり相手を特定したほうがより、戦略的だとは思います。
H21.9.9 8:45

コメント

  1. advanced_future より:

    本記事の内容について賛同した上で、あえて少しズレた論点で見解を述べさせて頂きます。

    具体的な形が見えていない中では何とも言えませんが、我々は国家戦略局に過大な期待を抱きすぎている可能性があります。
    単純に、初期の国家戦略局担当相の役割は、緻密な国家戦略を掲げることよりも、既得権益者である利権団体や圧力団体を押さえ込むことにあるのかもしれません。
    この問題については、経済財政諮問会議を推進した竹中平蔵氏が改革のスピードが上がらなかった要因の一つとして挙げています。(彼にとって小泉純一郎という既得権益者の声を無視する変人がいることが最大の武器だったように)その意味で、睨みをきかせ闘える政治家(既得権益者と戦う場合、トップは国民の代表という印籠を持つ政治家以外に有り得ない)をトップに据えるのは鳩山政権にとって必須条件であり、マニフェストを愚直に実現するのが政権の目的であるならば、そう考えると菅直人氏の起用は妙に納得できます。

    そうするとマニフェスト以上のものを求めるのはそもそも期待過剰になります。政権公約を後だしジャンケンで反故にできるか、民主党はうまくごまかしながらやっていくしかないように思います。

  2. hamham より:

    気になった点があったので投稿いたします。
    米国の核廃絶には戦略が感じられるが、民主党の温室効果ガス削減には戦略が感じられないと読めたのですが、どちらも推測レベルの話であれば、民主党の温室効果ガス削減にも戦略があると推測できるのではないでしょうか。
    まず報道では主要国の合意が前提とありますので、考えようによっては世界中の世論を味方につけながら、従来の産業形態を否定して、環境型の産業形態にシフトさせようしているという見方もできそうです。そしてそれが中国などと競争する上で、従来型の産業よりも日本に有利に働くという考えがあるかもしれません。(現産業界の当事者は否定的な反応で当然だと思いますし、米国の核廃絶にも否定的な当事者がいそうな気がします)
    前置きが長くなりましたが、私が気になったのは、政策の是非についてではなく、限られた情報に対して、米国の政策に対しては肯定的に推測、民主党の政策に対しては否定的に推測しているような印象が当記事にあった点です。民主党には気構えと策がないとしている点も気になり、全体的に何と言えばいいのか、不公平さを感じました。
    もし私の誤読、もしくは事実に基づく考察であれば申し訳ありません。

  3. jnavyno1 より:

    >advanced_future さん

    中川です。ご指摘有難うございます。

    国家戦略局ですが、100人程度の議員を配置するとの報道がありましたので、実質はおそらく自民党の政調会や総務会の公式版といったところではないでしょうか。今まで党内にそのような政策決定機関がなかったので、そこで処理するということでしょう。

    国家政策や戦略のレベルではあとだしジャンケンであろうが、麻雀で相手の牌を盗み見しようが、「勝つ」ことが最優先だと思います。あとはそれがばれたとき、批難され失う利益との勘案でやるかやらぬか決めればいいと思います。

    国際社会では車で後ろから衝突しても「てめぇ~なぜ止まってんだ」と言うのが常識ですから。

  4. jnavyno1 より:

    >hamhamさん

    >全体的に何と言えばいいのか、不公平さを感じました。
    もし私の誤読、もしくは事実に基づく考察であれば申し訳ありません。

    事実にもとづく考察ではありません。ただ米国は世界に向けてメッセージを流しながらも、目的はロシアとの交渉だということがはっきりとしています。演説でもそのように相手を特定して、期限を切っています。

    それに較べてレベルは違いますが―メッセージの質、場所、内容など―、相手を特定しておらず―自分の首ばかり絞めて、首を絞める相手を特定していない―それによる自国の利益を言っていない分だけオバマ演説は戦略的ではないかと判断しました。

    「我国は世界に先駆けて地球温暖化対策を実行いたします。しかし我国の努力だけでは温暖化を食い止めることは出来ません。各国が一致協力して対策を進めることが不可欠です。そして先進国、特に米国、中国とは協調して行きたいと考えております。」

    とこの程度であれば世界に我国のメッセージをアピールするとともに、交渉相手―経済戦争とみれば敵―を巻き込めるので、戦略的といえるのではないでしょうか。

  5. kakusei39 より:

    地球温暖化を、その字句通りに捕らえるから、広がりのない議論に終始するのではないでしょうか。

    地球温暖化は、別の視点から見るとエネルギー源問題なのです。石油に依存して20世紀の世界は大発展をしました。しかし、石油はあと40年持つかどうかです。石炭でも200年以内だろうといわれてます。人類が生存するにはエネルギーは不可欠です。

    したがって、化石燃料がある今のうちに、脱炭素燃料を志向する事は、子孫たちへの義務ともいえるでしょう。大学教授たる伊藤公紀氏はそのことすら分かっておらず、原子力発電業界の罠だと言ったりしている。罠かもしれないが、それならば尚更太陽光熱発電等を開発しなくてはならない。

    下記サイトに、日本エネルギー学会のやったE-mail討論があるが、伊藤氏も赤祖父氏も、国立環境研の江守正多氏に論争で負けている。それも知らず、研究成果が数多などとは笑止なはなしではないか。
    http://www.jser.gr.jp/activity/e-mail/2009.3/09.03honbun.pdf
    http://www.jser.gr.jp/activity/e-mail/boutou1.pdf

  6. kakusei39 より:

    (承前)後出しジャンケンが良いという論は、嫌々やることが正しいという前提であろうが、別の見方を考察していない。

    どうせ人類が、やらねばならないことなら、早めにやって、それをビジネスにすれば、この国の人はビジネスで潤い、世界の人は、新しいエネルギー源を手にして喜ぶと言う路がある。

    それをやるには、後出しでは駄目で、先に見通しておかねばならない。そのためには、温暖化問題はエネルギー源問題であることを認識して、世界に発する言葉と、実施することの間に差があっても構わないのだから、バカみたいに高い目標を言うのではなく、低い目標を出して、周りから叩かれようとも実質的には省エネと代替エネルギー源開発に勤しむというやり方もある。

    戦略的になるには、本質を見抜き、多くの代替案を考えながら、最も利の大きく実現可能性の高い策を取ることであろう。後出しジャンケンが、最良とはサラサラ思えない。

  7. hamham より:

    たびたび失礼いたします。

    >jnavyno1さま
    ご返答ありがとうございました。
    別の記事になりますが、引用いたします。
    「鳩山代表は東京都内で開かれた環境問題のシンポジウムの講演で「炭素に依存しない社会の構築は、日本にとってむしろ大きなチャンス。経済や国民生活はむしろ良くなると信じている」と、積極的に温暖化対策に乗り出す決意を表明。「わが国のみが削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできない。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、わが国の国際社会への約束の『前提』になる」と、公平で実効性のある枠組み作りを呼びかけた。」
    そしてこの発言に対して、国連や欧州で好感されているともあります。政策の是非はさておき戦略としては少しくらいは評価されてもいいのでは、と思ってしまいました。

    >kakusei39さま
    >エネルギー源問題なのです。
    私もそう思いました。この場合、温暖化の事実関係は問題ではなく、世界の風潮を利用することが肝要なのではないだろうかと。だから脱炭素や省エネルギー産業を推進するという方向性は、そんなに血迷った考え方ではないかなと思ったりもしました。少なくとも現金をばら撒かれるよりは、よっぽど次の世代につながるイメージが感じられました。

  8. jnavyno1 より:

    >hamhamさん

    中川です。4のコメントは私です。署名を失念しました。お詫びします。

  9. jnavyno1 より:

    >kakusei39さん

    中川です。

    PDF拝見しました。なかなか勉強になりました。確かに分が悪いようです。

    >戦略的になるには、本質を見抜き、多くの代替案を考えながら、最も利の大きく実現可能性の高い策を取ることであろう。後出しジャンケンが、最良とはサラサラ思えない。

    60年代米国で反戦運動を先導して資金を提供していたのはソ連でした。同時に反核運動も国連などを利用して展開したのもソ連でした。その辺はジョセフ・ナイが「ソフトパワー」という本で書いています。あるいは人権運動も人間の良心から出た運動ではなく、自由主義陣営を揺さぶる手段として使われていないという確証はまだありません

    環境問題も人類の良心を利用した転覆運動ではないという確証は現時点で確認できていません。誰が利益を得、損をするのかがまだ明確になっていない以上、様子見で、あとだしジャンケンでもいいと思います。バスに乗り遅れるな的議論は以前に大きな遺恨を残しました。

    本文にも書きましたが、国際関係に友も敵もなく、利害関係が決定するのだと思います。

  10. shlife より:

    私も、日本エネルギー学会のE-mail討論を読んでみました。
    江守氏の洞察力、伊藤氏の真摯な気骨、すばらしいです。
    (目次と、最後のお二方の投稿だけで分かってしまいます)

    今後とも、合理性をベースに困難な道程を追求していただき
    たいです。

  11. kakusei39 より:

    >環境問題も人類の良心を利用した転覆運動ではないという確証は現時点で確認できていません。誰が利益を得、損をするのかがまだ明確になっていない以上、様子見で、あとだしジャンケンでもいいと思います。

    お分かりいただけないようなので、再投稿いたします。

    先の大東亜戦争も、突き詰めると石油資源確保の戦争でした。満州国に後日発見される大慶油田を見つけておれば、バカな開戦などあの勲章渇望の軍部の連中でも決断しなかったでしょう。

    途上国の経済的発展等でエネルギー源は限られた資源だけに高騰することは明白です。日本が、今後外貨を稼ぎ続けられるかといえば、詰まらんミズホタンとか、企業税をあげるべきと主張する公共事業だけしか見えない静香タンとかが、日本から企業を追い出しますから、先行きは暗い。

    エネルギーは高騰し、外貨がない状態でどうするのですか。

  12. kakusei39 より:

    (承前)食糧生産もエネルギーなしには、肥料さえ満足に手に入らないでしょう。したがって、エネルギーは国策物資なのです。日本のエネルギー自給率は4%です。(原発も輸入です)

    だから、例え、どこかの国の陰謀等と言う問題であったとしても、エネルギーの外国依存度を下げる方策を早々と着手するのが、日本としての必須の課題なのです。(この程度のことが分からんかといつも思います。・・失礼)

    したがって、石油とか石炭とかから、太陽、地熱、風力、波力等へのハイブリッドな転換を早める必要は、国力のあるうちになさねばなりません。

    その意味で、貨物の列車・フェリー輸送を壊す高速道路の無料化や、電気自動車の普及を妨げるガソリン暫定税率の廃止は、愚策を超えて悪法です。(この国を亡ぼしたいのか)

    世界のリーダーシップをとる必要はないでしょう。しかし、顔は熱心にCO2削減をやる表情を浮かべねばなりません。そう言う意味で、後出しが良いとはサラサラ思えません。

  13. kakusei39 より:

    (追加)
    ただ、アホ面下げて、真面目に25%削減等と言うのは、この国を亡ぼしたいだけの人達の所業です。こう言うときは、つかず離れずに、5%ぐらいしか出来ないです、それまでがものすごい省エネしたますからとか、10%で勘弁してくださいよなどと真面目にお願いした回ることです。

    親が見栄を張って、子が「乞食」にならねばならないことほど、腹立たしいことはありません。(終戦直後の乞食の状態を思い出すと、今でも惨めな気持ちになる)

    民主党の政策は、首尾一貫していないし、国民に災いをもたらすことが多く混じっている。自民も駄目だけど、民主もなあ。所詮は、その程度の国なのかも知れないとも思うこの頃です。

  14. jnavyno1 より:

    >kakusei39さん

    中川です。たびたびのコメント有難う御座います。また楽しくもあります。

    まず
    >先の大東亜戦争も、突き詰めると石油資源確保の戦争でした。
    それも一つの見方です。しかし主目的ではないと思います。

    出光興産の出光佐三は戦前大陸で石油メジャーと自由貿易と大規模小売で戦いました。石油資源は米国、英国のメジャーが握っておりました。

    同盟関係解消後英国は何かと日本と石油資源を巡って対立し、その供給を絶ちます。自由貿易を主張する日本とブロック貿易の欧米。私は祖国防衛戦争と同時に自由貿易主義と保護貿易主義の対立戦争だと思います。(ソ連の謀略は抜いて考えています)

    >太陽、地熱、風力、波力等へのハイブリッドな転換を早める必要は、国力のあるうちになさねばなりません。

    日本は現在、物つくり立国です。工場はその原動力です。上のエネルギー転換をするにも工場の稼動が必要です。それを抑制したのでは転換ができないと思います。よって各国の状況を勘案して進めるのが一番です。

  15. advanced_future より:

    皆様の知見に勉強させられる部分が多いです。ただ、あるリスクについて触れられていないような気がします。
    (当記事の主旨から少しずれたコメントをすることをお許しください。)

    民主党が後出しジャンケンをしたり、最善の戦略を練り直したりすることを許容するということは、民主党の政策に介入の余地ができるということであり、これは特定の利益団体に隙を与えるリスクをはらんでおります。私も民主党に「ブレて欲しい」ところは多いのですが、それは誰にとっても同じことです。

    「マニフェストを大きく修正し、より優れた政策を練り上げること」と「修正を小さい領域に留め、マニフェストを愚直に実行すること」との間には、リスクとベネフィットとのトレードオフがあります。1分1秒を争うスピード競争の中において余裕など日本にはないという意見を否定しません。全くその通りだと思います。しかし、それと同時に様々なトレードオフを考慮しなければならないとも思います。

    100% Theory ではないですが、実力以上のパフォーマンスを期待するのは無茶です。結果を焦ってチャンスをふいにするのは非常にもったいないことです。目的地へ急いで軽自動車を高速運転し続ければよからぬ結果を招く可能性があります。
    (つづく)

  16. advanced_future より:

    (つづき)
    甘い認識かもしれませんが、たとえ今回の政権交代によって成されることが単なる利権者の交代であったとしても、これまでの既得権益者の厚い壁に楔を打つことが最重要課題であると考えます。彼らの結束、連帯、思い込みによる複数均衡状態を崩すことです。雪崩による短期的な損害は覚悟の上で、地盤(現実)をさらけ出すことが肝要であると思います。そうすることで、政党は国民に対して納得できる政策を洗練させる必要が出てきます。
    主要政党の政策が洗練されるまでには、やはりあと1回では足りず、あと2回の選挙、程度必要なのではないか。抽象論に終始してしまいましたが、そう思います。

  17. kakusei39 より:

    大東亜戦争のポイント・オブ・ノーリターンは、仏印南部進駐です。進駐の目的は、小林一三商工大臣の印度支那との石油交渉の決裂により、圧力を掛け、英国がドイツに降伏したら場合によっては印度支那進駐をする思惑も含めていました。

    そのことが米国からの石油禁輸となり、ジリ貧よりドカ貧の方がマシと言う訳の分からない理屈で開戦となったのです。すなわち、石油という戦略物資の8割以上を米国からの供給に依存する米国の首枷を外そうとして、逆に首を締められたことから、死中に活を求めての開戦です。だから石油資源問題が根本にあり、大慶油田を見つけておれば、開戦はもっと後に、日本が国力を付けてからだったでしょう。

    破れかぶれの開戦を祖国防衛と言えば言える範疇かも知れませんが、野村駐米大使が警告しているのを無視してやるような能天気な、米国は開戦しないという思い込みが災いする読み間違いの方が大です。(その面では、ポッポの25%発言も能天気であることでは差が無いかもしれません。)

  18. kakusei39 より:

    (承前)
    日本は、ご存知のように、所得収支が貿易収支を上回る、金融立国なのです。だからと言って、貿易収支がなくて良い状態ではなく、当然、二酸化炭素の25%削減を自ら約束するような、あほなことはする必要はありません。

    しかし、対外的に如何なる数字を約束させられようとも、国内的には脱炭素エネルギー化を精力的に進めることは必要です。電気自動車の上市を早め、普及を早めることは、エネルギーの脱炭素の面からも、電気自動車の改良によるコストダウンとノウハウのアドバンテイジ獲得からも必要です。貨物輸送の列車・船活用の促進も大事です。その一方、発電の脱炭素化も精力的に進むようなインセンティブ政策がいるでしょう。

    世界に向かっては、努力してますよと言う顔をして、低い数値を言い続けることです。そう言う腹芸は、岡田氏やポッポには無理なんでしょうね。小沢氏も外国圧力にはすぐ屈するしなぁ。日本はいつも真面目な下男なんですかね。

  19. kakusei39 より:

    >主要政党の政策が洗練されるまでには、やはりあと1回では足りず、あと2回の選挙、程度必要なのではないか。

    世のあらゆる事象には、可逆的なものと不可逆的なものがあります。それを考えずに、駄目だったらやり直せばいいと考えるのは無責任です。

    死亡事故を起こしておいて、次は運転が上手くなれば良いと言って済ませるのですか。

    最低賃金千円、派遣労働の禁止、これらをやり日本企業を中国やベトナムに追いやれば、帰ってこないのです。高速道を無料化をして、倒産するフェリー会社は再起できるのですか?駄目だったらやり直す、それは政治においても能天気ではないでしょうか。政治は生活や命が掛ってます。ゲームオーバーで、再起動の世界とは異なります。

  20. advanced_future より:

    私の主張は、「あるべき論」と「するべき論」は分けて考える必要があるのではないかという問題提起です。
    あるべき論としての皆様の意見には異論はありません。
    非常に勉強になります。

    ただ、せっかくですので私の意見を理解していただくために再度コメントさせていただきます。
    これ以上言いたいことはないのでこの件に関してはこれを最後にします。
    (後ろ向きな意見に捉えられがちなので反感を買うこと必至だと思いますが)

    運転の苦手な高齢者に高速運転の技術を指南しても効果は薄いので、
    そもそも苦手な人には高速道路に乗るなと言わねばならないが、
    リーズナブルな代替手段が用意されない限り反発は激しく、
    反発者が多数派ならば、逆に苦手な人も安心して運転できるように高速道路での規制が強化される。
    という結果を招く可能性があることを、ここではリスクとしています。
    (つづく)

  21. advanced_future より:

    (つづき)
    家族が死ぬか生きるかのところで病院へ急ぐ高速道路の最中に、
    ノロノロと走る車がいるとイライラしてアクセルを踏みこみ煽ったりする気持ちは非常に理解できます。
    そして、そのことによって個人的には少しは早く目的地に辿り着けるでしょう。
    しかし、それが前述の意図せざる結果を招くとともに、
    全体として見たときに渋滞を発生させることに繋がるという可能性があります。
    急いでいない人からすると、急ぐ人は敵視されてしまう可能性もあります。

    あるべき論で全体最適を考えるのは当然ですが、
    しかし、するべき論を考える時は矛盾した個別最適を考えねばなりません。
    小沢一郎氏も「国民のレベル以上の政治家は生まれない」と主張されておりますが、私も同感です。
    官僚内閣制では国民のレベルを超える政治を実現可能でありましたが、政治主導にシフトするという以上、民度の重要性が増します。

    例えば、民主党によって規制強化が強化されますと、産業界がグローバル指向に転換するキッカケになる可能性があると考えており、民主党の目的に反し、格差が拡大し富める者がより富むようになると私は考えます。
    国民は本質的な問題に目を向けはじめるのではないでしょうか。(希望的観測です)

  22. jnavyno1 より:

    >advanced_futureさん

    >1.初期の国家戦略局担当相の役割は、緻密な国家戦略を掲げることよりも、既得権益者である利権団体や圧力団体を押さえ込むことにあるのかもしれません。

    この認識はミクロではそうですが、マクロでは違っていると思います。

    正確には既得権者が入れ替わるだけです。つまり官僚機構や上級公務員といった、エリートから日教組や自治労のような一般公務員になるといったところでしょう。

    たとえば日教組ですが、闇専従で2~3時間しか授業がない教員が相当数います。給食のおばさんは公務員扱いで夏休みは一月ありますし退職金も出る。ほとんどが教育委員会の縁故で固まってます。―自分の妻や母親、親戚―

    今厚生労働省の天下りをたたいていますが、その後釜に組合の幹部が座らないといった確証はないのです。

  23. jnavyno1 より:

    > kakusei39さん

    >国内的には脱炭素エネルギー化を精力的に進めることは必要です。

    必要であればどんどん進めれば良いと思います。結果50%の削減ができれば、我国とっても地球にとっても大いに結構なことです。

    なおさら25%なんていう必要がないと思います。いうのはあとでも十分です。

  24. kakusei39 より:

    再々の登場で失礼します。これにてやめます。

    >必要であればどんどん進めれば良いと思います

    中川さんの議論の進め方がおかしいですね。

    >(温暖化対策をやると)決定的な打撃を蒙って、経済小国に成り下がる危険性もあります。

    のご指摘が、温暖化対策とエネルギーの外国依存度軽減対策とダブっている所があるから、温暖化対策を忌避する姿勢は間違いだと指摘している訳でして、それに応えず、「必要があればどんどん進めれば良い」とは、議論すかしもいいところです。(25%を日本から言い出す必要がないは、私も明言しているので、双方同意ですよね)

    日本はどういう道を進むべきかといる議論だと思いますので、重要な点をすかしたお話は、残念であり、ガッカリです。

  25. jnavyno1 より:

    > kakusei39さん

    中川です。

    私の主張は「自分だけ25%という必要はない」ということに集約されます。「温暖化対策が必要」といっておりません。

    何かを譲歩するのであれば、相手にはそれ以上の譲歩をさせるのは当たり前。自分だけ宣言してやるのは馬鹿だということです。そんなこといわないでやればよいだけにこと。

    やる内容ではなく、「やる」と先にいうことのメリットが全くないといっているのです。

    まあ各国協調してやるといっているので多少安心ですが。