けさの城さんの記事を読んで、考えさせられました。「ユニクロやエイサーのような企業が、庶民の生活を苦しくしている悪の元凶ですよね」という類の「ユニクロ悪玉論」は、けっこう広く支持されてるんですね。後藤田正純氏のように「安売りを規制しろ」という政治家は多く、内閣府参与になった湯浅誠氏も公然と海外移転禁止論を主張しているので、民主党もそのうち言い出すでしょう。
こういう人々が錯覚していることを証明するのは簡単です。たとえばユニクロの海外生産を禁止したら、どうなるかを考えればいい。中国の工場の賃金は日本の1/5程度らしいので、これをすべて日本で生産したら、1000円のジーンズは5000円ぐらいになるでしょう。消費者は買わなくなるので、ユニクロの売り上げは落ちます。そうすると経営が苦しくなって従業員は解雇される――これによって、いったい誰が得をするのでしょうか。
彼らの錯覚の原因は、内外価格差を「デフレ」だと思い込んでいることにあります。きのうのコラムでも書いたように、ユニクロが低価格で売れるのは、グローバルな相対価格の差を利用した価格競争であり、貨幣的なデフレではありません。価格競争で安い商品が勝つのは市場経済のルールであり、競争を禁止して高い商品を守ることは消費者にとって有害なばかりではなく、企業の国際競争力を弱め、最終的には日本の産業全体が沈没します。
それが今、まさに日本経済に起こっていることです。正社員の賃金が労働生産性をはるかに上回っていることが企業収益を圧迫しているのに、労働生産性に近い賃金で働く非正社員が「かわいそうだ」とメディアが騒ぎ、それを禁止しようとする。いつまでたっても国内の高賃金が正しく、新興国の低賃金が間違っているという天動説が抜けない。
残念ながら、日本政府が「正しい賃金」を決めることはできないのです。衣類のようなグローバルな商品の価格は国際的な相場で決まり、その価格で競争できない企業は退出するしかない。これは水が高いところから低いところへ流れるのと同じで、せき止める方法は保護主義だけです。今まで日本は、複雑な商慣行などの非関税障壁によってこうした水位差を巧みに守ってきましたが、その堤防が決壊したことが「価格革命」をもたらしているのです。
これをデフレと取り違えて「日銀がお札をばらまけ」などと叫んでいる人々は、日銀がユニクロの安売りを止められるとでも思っているのでしょうか。たしかに、いま起こっている価格革命は多くの企業に事業再構築を強いるもので、愉快な出来事ではありません。しかし、かつて日本企業が欧米に低価格の自動車や電機製品を輸出したとき、彼らは同じ経験をしたのです。そのとき「貿易摩擦」を言い立てて日本からの輸出を妨害したGMは、経営破綻しました。
これまで日本が繁栄してきた最大の原因は自由貿易の拡大であり、それを元に戻すことは可能でもなく望ましくもない。むしろ日本が成長するには、新興国の関税を撤廃させる自由貿易協定(FTA)などによって輸出を拡大するとともに、現地生産によってコストを下げてグローバルな競争に勝ち残っていくしかない。競争を妨害してユニクロを非難していると、日本中の企業がGMのようになるでしょう。
コメント
現場の工場で働いたことのない人は
何でも言えます
同じ仕事をしながら50%前後の賃金で働いて
いるのです
トヨタ等の企業は金を溜め込んでいますよ
国際競争力をつけるとか言っていますけど?
そのおかげで車を買えないなら不況がきたのです
あなたを始めとして高額給料の方は
大衆車をたくさん買ってください
そうすれば不況も終わります
>同じ仕事をしながら50%前後の賃金で働いて
いるのです
その更に1/5の賃金で東南アジア人は働いているのです。
>そのおかげで車を買えないなら不況がきたのです
そのお陰で、何億人もの中国人がクルマを買えるようになったのです。(そういうと、日本人が中国人の犠牲になってるとか言いそうですが)
>トヨタ等の企業は金を溜め込んでいますよ
その金は技術開発や海外に投資するでしょう。それがトヨタ、ひいては世界の労働者や顧客の為です。悪いけど貴方の賃金を増やしたって何の役にも立ちません。
日本人を中心とした天動説を端的に表現していますね。それが理解できない知能なら、今や月給15万円でも高すぎると言う事です。
どうも日本人の特権意識は、ヘタするとかつての米国人より酷いのかも知れません。
日本の工業製品が、戦後は安物と馬鹿にされ、次第に力をつけて70-80年代には米国市場を席巻するようになった事と、今中国との間で起こっている事の相似性を理解できない。更に今、安いアジア製品を締め出したり、海外移転を禁止するような保護主義に走る一方で、自分たちの製品は相変わらず外国人が買ってくれると考えるごお目出度さは何処からくるのか?
一方鳩山氏の掲げる一見友好的な「アジア共同体」的発想も、実は「日本がアジアを庇護してやる」という相手を見下したスタンスで、決して対等な商売相手とは見ていないのではないだろうか?
「日本は特別な存在で、神聖にして不可侵な国」という思想が見え隠れして、何だが戦前の状況を再現しているようです。
>湯浅誠氏も公然と海外移転禁止論を主張しているので
湯浅誠氏ともあろうお人が、そのような見当違いな主張をなさっているとすれば非常に残念です。
ユニクロやエイサーに日本企業が負けるのは、単に競争力が無いからというだけのこと。
規制緩和すれば競争力の無い企業は苦境に陥る、ただそれだけのことでしかない。
規制緩和が良いか悪いかではなくて、規制緩和に耐えられるだけの体力があるかということ。
http://jp.reuters.com/article/wtInvesting/idJPJAPAN-12487720091116
10年3月期には、NECは富士通に1兆円以上の差をつけられる見通しで、
ちなみに私は思想的には池田氏よりは湯浅氏のほうに限りなく近いほうで、
社会民主主義と呼ばれようが最低賃金引き上げと公営住宅増設を訴えます。
最低賃金を上げれば最低賃金を払えない企業は潰れるし最低賃金以下の
労働者は解雇される、また公営住宅を増やせば民業圧迫となり民間の劣悪
な住宅は売れなくなり土建業は破綻する。しかしながらたとえそうだとしても、
これからあるべき日本人の目標としてはその方向性で議論していくべきだと思う。
さしあたっては新銀行東京やNECなどの不良債権処理を並行させることも重要。
「ユニクロ悪玉論」なんて荒唐無稽な話が出てくるのは、単にそれが「成功者を妬む」感情論だからではないでしょうか。テクニカルには池田さんの説明が当然ですし、企業はグローバル競争として当然のごとく理解していますが、依然村社会にいる共産主義崩れ政治家や評論家には妬み嫉みの感情論のほうが受けるのでしょう。要は誰か成功者を悪者にして苛めたい、そして自分は責任を取りたくない。という貧しい発想と思います。
本来なら、「ユニクロに習って成功するには」、というストーリーが必要と思いますが、日本のマス”ゴ”ミも成功者を悪者にするのが好きですからね
湯浅誠氏の海外移転禁止論は、企業の海外事業に無理解な「鎖国思想」です。
けれども池田氏にも賛同しません。市場経済といっても、道路に道路交通法が存在するように、
ある一定のルールを決めるべきと考えます。最低賃金については道路交通法と同じく、
日本国内でビジネスをやるならこれくらいはクリアしてくれという妥協条件です。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/238.htm
OECD諸国の国民負担率(対国民所得比)
例えばメキシコはOECD中で国民負担率が一番低い「小さな政府」ですが、
それで欧米や日本と比べてどんな優位点が見出せるのでしょうか。
また海外業務に耐えられるだけの体力がないNECのようなITゼネコンが、
法人税が安いからといって海外へ出たところでなんぼのものでしょうか。
それから法人税がいくら安くてもロシアやフィリピンのような物騒な国に
好んで進出する企業というのはどれだけあるのでしょうか。
相続税も法人税も、税率ではなくて課税ベースの拡大を強く望みます。
国民負担率は今年になって小泉政権の40%よりも少し下がっているようですが、
企業への課税を不当に甘くする麻生政権には強い抵抗を感じます。
日本で暮らして日本でビジネスがやりたいなら、それ相応の負担を求めます。
「最低賃金を上げれば最低賃金を払えない企業は潰れるし最低賃金以下の
労働者は解雇される、また公営住宅を増やせば民業圧迫となり民間の劣悪
な住宅は売れなくなり土建業は破綻する。しかしながらたとえそうだとしても、
これからあるべき日本人の目標としてはその方向性で議論していくべきだと思う」
どう考えても職を失い路頭に迷う人が増大するだけだと思うのですが・・・・・。「今の日本は経済システムに対して人口が多過ぎる。2000万人ほど飢え死にしてもらって経済システムに見合った人口まで減らすべきだ。」と考えているのであれば、確かにそれはそれで一つの道でしょうけど。
ユニクロが商品の価格を下げるために社員を解雇しているとか、
給料を不当に下げているなら問題ですが、そうではないでしょう。
商品の価格を下げ、売上げをのばし、利益を確保しているのです。
それがダメというなら、価格競争をしている日本のメーカーは全部ダメ
ということになります。まったくナンセンスな議論です。
それにいまは安いだけじゃ売れない時代です。
ユニクロのマネをしても売上げが伸びないスーパーがあります。
ユニクロは商品デザインや品質管理、マーケティングも頑張って、
はじめていまの売上げがあるのです。
僕はユニクロとはなんの関係もない人間ですが、
頑張っている人間や企業をナンセンスな議論で中傷する人を見ると
本当に腹がたってきます。
私も、東洋経済に掲載された湯浅氏の主張を読みましたが、あれを「海外移転禁止論」と考えるのは少しオーバーだと思いますよ。
ネットには、1か0か(禁止か無規制か)みたいな極端な議論が多いですが、「禁止」と「最低限の規制」は全く異なるものです。
私には「最低限の規制」をした方が良いのか悪いのか分かりませんが、「海外移転禁止論」という表現は、誤解を招きやすいと思います。
>どう考えても職を失い路頭に迷う人が増大するだけだと思うのですが・・・・・
では逆に質問しますが、最低賃金が日本より高い欧米の国々は、
職を失い路頭に迷う人が増大しているのですか?
逆に最低賃金が低いメキシコには失業者が圧倒的に少ないのですか?
あの竹中平蔵氏でさえも「最低賃金引き上げ」を訴えているのですよ。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3342.html
図録最低賃金の国際比較
ですから、安倍政権は労働組合にも経営にも、両方に厳しいことを言うべきです。法人税のことも、企業にだけ甘いと言われている。企業に対して厳しく言うべきところがあります。私は2点あると思う。1つは保険、もう1つは最低賃金です。最低賃金をもっと上げるべきです。そこを揺るぎない決意できちんとやれば、国民は総理を支持します。企業に甘くない、企業にも泣いてもらうところは泣いてもらう。
http://www.genron-npo.net/campaignmani_article/002058.html
竹中平蔵氏 第4話:「社会主義を目指して改革を進めているのではない」
>その更に1/5の賃金で東南アジア人は働いているのです。
なるほど。東南アジア人は一般的にみて日本人よりも勤勉で礼儀正しく、
また治安も良好で医療も先進的で豊かな暮らしをしているとお考えなわけですね。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1180.html
図録外国人登録者数の推移
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3080.html
図録失業率の推移 日本と諸外国
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1630.html
図録平均寿命世界マップ
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2775.html
図録世界各国の他殺と自殺
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2794.html
図録外国人犯罪の推移
mshino3523様
「では逆に質問しますが、最低賃金が日本より高い欧米の国々は、
職を失い路頭に迷う人が増大しているのですか?」
増大するかはともかく、最低賃金が高い国は失業率も高いのは確かですね。
以下のページに2006年度の失業率の国際比較が載っています。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/1201.htm#g12-02
mshino3523様が提示してくださった「図録最低賃金の国際比較 」と共通している国の失業率と最低賃金を並べて表示すると見事な相関があることが判ります。
左の数字が平均賃金に対する最低賃金の割合(%)、右の数字が失業率(%)です。
韓国 26 3.5
日本 28 4
アメリカ 33 4.5
イギリス 35 5
カナダ 38 6
フランス 47 8.5
Excelなどでプロットすると判りますが、驚くほどの相関があります。このことから最低賃金を上げれば失業率は高くなると考えられます。
>増大するかはともかく、最低賃金が高い国は失業率も高いのは確かですね。
ある程度は認めます(例えば最低賃金が日本より低い韓国は失業率も日本より低い)。
労働時間で見ても韓国は日本よりもずっと長い。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3100.html
図録 労働時間の推移
韓国人は世界一の勤労者でかつ最も幸福な国民なのだということになるのでしょうか。
(その割には日本やアメリカに出国する人が多いようですが)
>東南アジア人は一般的にみて日本人よりも勤勉で礼儀正しく、
それこそ精神論です。なんで日本人の基準で礼儀正しい必要があるのでしょうか?東南アジアでは、必要充分な労働品質が日本より遥かに安いという話です。単にコストパフォーマンスの問題です。日本人が賃金に見合う程優れているなら、海外に工場移転したりしません。
また、元々貧しい国を取上げて、治安が悪くて医療も遅れているのは規制が緩いからだというのは、論理の飛躍もいいところです。最低賃金や法人税くらい当たり前だと思っているかもしれませんが、これも立派な参入障壁つまり保護主義です。北風政策を推し進めるほどヒト・モノ・カネは国外に流出し、結果的にその国は貧しくなるのです。
幾らゴミ掃除しても、また新たなゴミが出てくるだけなのでもうやめますが、ナンセンスコメントを垂れ流す前に、最低賃金・解雇規制と失業率の関係くらい「池田信夫blog」で読んでください。
経済番組のキャスターが、Gパンの値下げをデフレの象徴のように総括するくらいですから、池田さんの言う病理はかなり根深いと思います。
どうも世間では「ユニクロ=中国(又はアジア)生産⇒低価格⇒売れてる」という図式で理解されているようですが、これはミスリードだと思います。今時、衣料や雑貨の生産拠点をアジアに移すなんて何処でもやっている事で、これは必要条件であって充分条件ではない。
ユニクロの成功はむしろ、自社ブランドを確立したことが大きいでしょう。UNIQLOと書かれた店に行けば、大体どんなものが置いてあるか誰でもイメージできる。価格・デザイン・品質が担保されている事による安心感や買い易さです。
アジアで作った「だけ」なのは、イオンのようなスーパーの衣料品部門の方ですね。個々の商品を見ると、価格も品質もユニクロとさほど変わらないモノもありますが、店全体として統一感が無く、どんな層を対象に何が置いてあるのかよく判らない。だから、だだっ広い売り場はいつも閑古鳥が鳴いてます。
イオンは食品スーパーに特化して、2Fはユニクロやダイソーをテナントに入れたほうがよほど儲かりそう。でもそれをしないのは、衣料部門の社員や役員をリストラできないから、というオチとか?
>日本人が賃金に見合う程優れているなら、海外に工場移転したりしません。
ではNEC社員は優れているから国内事業で、富士通社員は劣っているから海外移転ですか?
法人税が安いからといって海外移転で儲けられるなら誰も苦労はしませんよ。
事業をセグメント別に見ると、ハード事業の海外比率は日立67.9%(同59.1%)、
富士通54.7%(同41.3%)と高い。逆にNECは05年度の21.1%から15.5%へ海外比率が後退した。
07年度はさらに11.0%へと落ち込む見込みである。サービス事業で富士通の海外比率30.6%
(同 30.9%)が光る。日立とNECのサービス売上海外比率は1けた台にとどまっている。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/MAG/20070614/274783/
>また、元々貧しい国を取上げて、治安が悪くて医療も遅れているのは規制が
>緩いからだというのは、論理の飛躍もいいところです。
「論より証拠」って言うでしょ。現実を無視して「小さい政府」の理想論ばかり
を並べて立てても、それは「机上の空論」というもの。それともここは現実を
無視して「小さい政府の理念と主義主張」だけを語る場所なのですか?
もしそうだとしたら自分はただの「荒らし」ですね。とっとと削除&アク禁お願い。
ユニクロが、二十年前から、自転車圏内に3店舗あって、
最近,大型都心店が出来たところに住んでますが、
ユニクロはファスト・フード店だと思いますw
しかも、メニューがどんどん減っていく。
繊維不況って40年前からあるんじゃないんですか?
私が,小学生のとき、紡績工場(会社)が潰れて、学級で2~3人づつ転校していった記憶があるんですがね。
最低賃金ばかり目が行く人は、全体を見ていない。所得再分配後の数値をご存知ですか?医療保険や労働保険や就労支援などです。
平均賃金を分母に持ってきて、騒いでますけど、統計学を知らない人ですね。「average」「median」「mode」の違いわかりますか?最大の既得権が真ん中にいるのだから、自民党や労組に見捨てられたフリーターや非正規の人たちが貧困に見えるのは当たり前です。既得権は大企業の正社員や大規模な労組でしょう。労働市場を固定化しているから問題なのです。
あと、若年層の貧困が問題なのは、年金の賦課方式に原因がある。解決には消費税率引き上げが妥当だが、これに反対しているのは、どこの社会党や共産党や右翼系のエコノミストでしょう?
よく、北欧型が持ち上げられますけど、「政府の規模が大きい」のと「自助自立型の社会保障」の区別がついていない。統計の見方を学んで下さい。