インフラ側でなく、クライアント側から考えた「光の道」 ―  向井 敬

2010年05月19日 19:10

昨今アゴラの誌上にて、「光の道」を発端とするインフラ側に関する討論が多く展開されていますが、へそ曲がりな私はふと考えました、「クライアント側(端末側)から考えてみては?」と

巷ではAppleの新製品iPadや、GoogleのAndroid、それに続くMicrosoftのWindows Mobile、NokiaのSymbian、RIMのBlackberry等、スマートフォンや、ネットブック、MIDの話題で持ちきりです。 HDMIや高精細画像を売りにした携帯端末も次々に発表され、
トラフィックは増大するばかりです。 と、普通にここまで書くと、インフラ増強論が出てきてしまうのですが、QoSを保つためのオペレータの大変な苦労はさておき、私のような使い手側からすると、それほど現在の通信速度に関してストレスを感じていません。それは単に現在提供されている通信速度の中で、最適なサービスが提供されているからに他なりません。


ですが、国産のAndroid端末や、iPadが出てきた辺りで、ふと思ったのが、「いっそのことこのような機器でユーザにバンバンネットワークを使ってもらって、QoSがままならない状況を作りだし、ネットワーク全体に不満が高まる方向に持ち込めば、この問題は各所で真剣に取り組まれるのでは?」と考えました。

そこで私からの提案ですが、国策のファイバ敷設とかではなく、ファイバ敷設が喫緊の課題となるような、トラフィックを必要とする「打倒!iPhone/iPad-国産マルチメディア・クラウド情報端末プラットフォームの開発」を国策でやってみては?と

この考えの元になっているのが、今から約15年程前に私が外資系無線測定器メーカの営業技術の駆け出しだったころ、お隣の韓国に出張に行かせてもらい、そこでの実体験です。 皆さんも良くご存知だと思いますが、韓国はADSLを発端に、携帯電話、モバイルブロードバンドまで、それらのサービスと製造が順調に推移した国の一つです。 

ある時、勤め先のアジア地区統括より命ぜられ、韓国のKETI(Korean Electronics Technology Insititute、韓国電子技術研究所)に商品説明と技術サポートに行きました。 当時は金泳三大統領の民主自由党政府下において、国策としてKETIに国内電気メーカの選抜された優秀なエンジニアを集結させ、国費で非関税障壁としての国内仕様のCdmaOne端末プラットフォーム開発、輸出を伸ばすためのGSM端末プラットフォーム開発を行っていました。

技術サポートのため、私はラボに案内されて、最初に目に飛び込んできたのが、ラボの壁面に日本製の輸出用携帯電話のポスター大の写真(メーカ名と機種名と無線方式も書き加えられていた)が一面に張られており、その上部に「日本製より良いものを我々韓国人の手によって作り出そう!」というスローガンが書かれていました。

その後通訳を介して商品説明や機器の操作説明をする私に対して、矢継ぎ早に質問し、突っ込む韓国人エンジニアの熱い姿勢はまさに、今回の「光の道」の実現を熱く語るソフトバンクの孫社長の姿と重なりました。 私自身はバブル期入社組の無気力、無関心、無責任と良く揶揄される世代ですが、そんな私にも彼らの持つ使命感や気迫を感じずにはいられませんでした。
(間違いなく日本の携帯電話産業は10年後にブッチギリで韓国に追い抜かれるだろうと)

やがて数年後、彼らはこの研究所で開発したプラットフォーム技術をそれぞれの会社に持ち帰り、2000年初頭には日本の携帯電話出荷台数を超え、現在では韓国のメーカは世界の30%のシェアを持つまでになり、一方日本のメーカは国内全社合わせても5%に届くか届かないかという状況です。

以上を踏まえ、iPhoneやiPadを超える端末プラットフォーム作りを国策でやってみてはどうだろう?というのが私の提案です。
国内メーカの叡智を集め、ハードやソフトだけでなく、ビジネスモデルや、アプリケーションも含め、無敵のプラットフォーム作りを全社で持ち寄って、その後一斉に各社からこのプラットフォームを応用した端末や応用アプリケーションを展開し、引いては「光の道」実現のためのファイバ敷設が喫緊の課題となるような、トラフィックを必要とする端末プラットフォームの開発を! そんなことが出来ないかしら?と思う今日この頃です。

良し悪しはともかく、コンピュータの黎明期やICの黎明期に旧通産省が行った国家開発戦略に携わった先輩方の教えを元に今日私はエンジニアとして働くことが出来ています。「光の道」については過去30年近く同様の議論がなされてきたにも関わらず、なかなか実現できないのは、単に必要とされていなかったからではないでしょうか?それなら必要となるように働きかけるのが自然だと考える次第です。
(向井 敬 シグナリオン・ジャパン株式会社 代表取締役)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑