問題は通信業界ではなく放送業界だ - 池田信夫

2010年05月21日 11:19

小池さん、どうも。私の意見も、ほとんど同じです。「ドコモの分離」というのはMBOがベストで、逆にドコモが光のインフラを買収して融合サービスを提供したほうがいいと思います。FTTHは今でも過剰設備・過少利用であり、無理に増やす必要はない。小池さんも指摘するように、欧米では光ファイバーの整備はもう終わりで、今ごろFTTHに力を入れているNTTはガラパゴス的な存在です。ましてそれを全世帯になんて、悪い冗談でしょう。モバイル・ネイティブ世代も、光ファイバーや地デジには何の関心もありません。


通信インフラは単なる手段であり、目的はそれを使って豊かな情報を得ることです。アメリカのインフラは日本より貧しいのに、テレビは600チャンネル以上見られ、通信・放送の融合サービスが進んでいます。テレビを見るだけなら、地デジもBフレッツも必要なく、通信衛星がもっとも効率的です。ところが日本のテレビ局は、わざわざスクランブルをかけて、98%の世帯に見えない衛星デジタル放送を流している。

いくら土管が太くなっても、テレビ局がこういう状態ではコンテンツは出てこない。おまけにNHKオンデマンドも、民放連が「民業圧迫だ」として妨害し、総務省が独立採算を求めるなどの規制をしたため、使い物になりません。今のようにほとんど映像コンテンツが流通しない状態では、それを見るインフラも普及せず、そのために映像も流通しない悪循環になってしまう。

政府はNHKのオンデマンド配信の規制を撤廃し、アーカイブにある60万本の番組をすべて開放するよう求めるべきです。NHKもドキュメンタリーの出演者にひとりひとり許諾を求めるなどの過剰コンプライアンスをやめ、BBCのように原則無料でオンライン配信すべきです。このためには、必要なら著作権法を改正して、NHKの番組については著作権フリーで公開できるようにしてもいい。NHKの番組は映像素材としても使えるので、これによって映像クリエイターの生産性も上がるでしょう。

いずれにせよ政府が介入すべきなのは、すでに曲がりなりにも競争のある通信業界ではなく、テレビ局の電波利権とコンテンツ独占が続いている放送業界です。テレビ局が過大に占拠している電波を整理してUHF帯を開放するとともに、NHKの番組を開放して国民の共有財産にすれば、政府が強要しなくてもブロードバンドのインフラは普及するでしょう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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