日本の国土構造の在り方に警鐘を与える口蹄疫の教訓  務台俊介

2010年05月24日 16:59

日本における口蹄疫の蔓延が大きな波紋を社会にもたらしている。畜産分野の伝染病が期せずして政治主導を掲げる政府の危機管理能力の水準を問うている。


私は、口蹄疫の蔓延を見るにつけ、そこに今後の国土構造の在り方に繋がる教訓が潜んでいるように感じる。

21世紀は自然災害の世紀であるということが言われている。東海地震、東南海地震、南海地震の発生が高い確率で予想され、首都直下地震の可能性もあるとされている。

筆者も消防庁防災課長時代に中央防災会議の専門部会において首都直下地震を想定した議論の末席を穢してきた。

その当時、地震考古学専門の東大生産技術研究所寒川旭教授が、我が国の近世における最大規模の歴史災害について次のように語っておられたのを思い出す。

「地震には100点満点の地震がある。1707年の宝永地震がそれで、この時には、南海トラフが全て割れて、南海、東南海、東海地震が同時に発生した。その4年前、1703年には相模トラフが割れ、江戸が元禄大地震に見舞われた。元禄地震は関東大震災の4倍の大きさで、マグニチュード8.3の巨大地震であった。そして、1707年の年末には富士山が噴火し、この富士の宝永噴火で江戸が真っ暗になった。様々なハザードが一斉に重なるという意味で日本においては100点満点の地震である。」

恐らく1700年代初頭の関東は大天変地異により大変な状況であったろうと想像される。その後も、東京は定期的に大災害に見舞われてきている。1855年には安政江戸地震により江戸町方4300人の死者、武家の死者2600人を数える被害を生じた。1923年には関東大震災が発生し、東京は壊滅的打撃を受けた。

東京は、特に地震災害の観点から、定期的に起こる大きな地震災害の前に非常に脆弱な状態に置かれていると言っても過言ではない。

ミュンヘン再保険会社が、2002年に世界の主要都市のリスク指標を公表した(注)。

その中で、様々な機能が一極集中する東京・横浜圏域の自然災害リスク指数は世界でダントツに大きいとされている(東京横浜のリスクインデックス710ポイントで1位、第2位がサンフランシスコの167ポイント)。

さて、今回の口蹄疫の蔓延を目の前にして、我々はどのような教訓を得るべきなのか。政府の初動対応の遅れ、など様々な問題点はあるものの、私は今回の教訓の最も大きなものは、「累卵の危うき」という点にあるのではないかと思っている。

宮崎県は大事な種牛を宮崎県家畜改良事業団で一括管理していたことがエース級種牛の全滅の可能性という悲劇を招来している。そのアナロジーで考えると、我が国の首都を襲う大災害が不可避な中、首都圏に機能を集中し過ぎることの危うさを想起すべきである。地方分権、機能分散が国土の危機管理の観点からも必要ではないか。

口蹄疫の蔓延に苦しむ宮崎県の苦境に学ぶべきことの一つとして、「累卵の危うき」という言葉の意味を日本の国土構造の在り方の議論においても想像を逞しくして生かしていく必要がある。

(注)「高めよ!防災力」81ページ参照 (2004 務台俊介 レオ・ボスナー著 ぎょうせい ) http://www.bk1.jp/product/2454071

            神奈川大学法学部教授(自治行政学科)務台俊介

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