砂漠化する日本金融 - 矢澤豊

2010年07月01日 13:12

磯崎哲也氏の一昨日のエントリー 「個人から出資を受けたらIPOできなくなる日本証券業協会の規則変更に反対します」を興味深く読ませていただきました。行動の人、磯崎氏はすでにパブリックコメントを証券業協会に提出されたようです(「 個人から出資を受けたらIPOできなくなる日本証券業協会の規則変更にパブコメを書きました」)。

コメント提出期限は今日の午後5時のようですので、問題意識のある方は、迅速に行動してください。

私としましては、これは非常に悩ましい問題であります。


祖国の「地盤沈下」を傍観するのもつらいですが、「ナントカは死ななければ...」ということもあります。日本の金融市場の参画者の皆さんが、頼まれもしないのに自ら自分の首をしめていただけるのであれば、私が現在本拠を置く香港のアジア金融ハブとしての地位はより確固たるものになるでしょう。

「未上場企業が個人から投資を受けた場合には上場できない」

という規定は、新興市場への上場を悪用する詐欺事件や反社会勢力を巻き込んだ事件が多いことを理由としているようですが、

「地獄への道は善意で舗装されている(The road to hell is paved with good intentions.)」

のたとえ通りの結果になりそうです。

当地香港も、皆さんごぞんじのとおり、東京に負けず劣らず、いかがわしい「自称金融マン」たちが、怪しげな投資案件をたずさえ闊歩しております。

しかし、こうした「ジャングル」のような魑魅魍魎の生態系が金融都市・香港を支えているのです。この中でいやしくも「プロ」としてしのぎを削る人間は、当然のリスクマネジメントとして、手がける案件と付き合う人物を選定していかなければならないのです。

こうしたリスクマネジメントを、制度設計で代替しようとする今回の証券業協会の試みは、金融生態系の多様性を損なう結果となるでしょう。生態系の多様性(バイオ・ダイヴァーシティ)が失われたジャングルは、除草剤をまきすぎた耕地のように、砂漠化への道をたどりはじめます。「正義」をかかげて自然の生態系に恣意的かつ暴力的に関与しようという協会の姿は、あたかも金融界の「シーシェパード」のようです。

しかし気落ちすることはありません。以前も申し上げましたが、業界団体に天下ってきた元官僚(あれ?)でもないのに、没落国家と一蓮托生などと思い込む必要はありません。国家はジリ貧でも、国民は窮乏してはならないのです。日本がダメでも香港があります。シンガポールがあります。その向こうにはムンバイだってドバイだってあります。[一時は業界で「ムンバイ、ドバイ...バイバイ」なんていわれていた時もありましたが(苦笑)。]

起業、上場を目指す将来の日本財界紳士のみなさん。我々といっしょにまずは香港上場を目指しましょう!

金融における生態系の多様性がいかに重要かということに関しては、昨年は「時の人」という観があったファーガソン教授(「マネーの進化史」)のこのレクチャーをどうぞ。

歴史好きな方のためにいえば、なぜヨーロッパの小国に過ぎなかったオランダが、旧大陸から新大陸にまたがった大スペイン・カソリック帝国を相手にして、ヨーロッパはもとより、インド、ジャカルタ、そして長崎・平戸くんだりまでを舞台にして、タイマンをはりつづけ、ついには独立という勝利を勝ち得るまでにいたったのか、ということです。今後、お隣の超大国と張り合いつづけなければならない宿命にある日本も参考にすべきでしょう。

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