ねじれ国会 ―― 新たな民主主義の始まり? - 北村隆司

2010年07月15日 12:17

参院選挙の敗北を受けた菅首相や民主党は、新たな連立相手を見つけない限り、政策ごとに連携する「部分連合」を図るしか政権の運用も出来ない処に追い詰められました。私はこの政治の流動化が、日本にとって吉と出る事を期待しています。


「部分連合」相手の筆頭候補である「みんなの党」の掲げる「小さな政府、地域と民間が主役、増税なき財政再建」と言う方向は、各論では多くの論議があるにせよ、全体として真っ向から反対する国民は少ないでしょう。公務員制度改革に消極的な連合傘下の公務員労組に対しても、労使交渉による給与水準の決定や限定的争議権を認めてでも、公務員給与を大幅に削らない限り日本の財政の将来はありません。

政治家は、国民が納得できる妥協を導くアーテイストでなければなりません。民主党の玄葉政調会長がみんなの党との接点としようとしている公務員制度改革については、是非共妥協点を見つけて、何らかの改革案を実現して欲しいものです。

今回の選挙で完敗した「たちあがれ日本」の与謝野共同代表は「みんなの党の政策は、国全体をカバーしておらず、ウソやデタラメばかりだ。ポピュリズムの政党だ」と酷評しましたが、所詮,国民から見放されて完敗した政党の「八つ当たり」か「負け犬の遠吠え」に過ぎません。    

「部分連合」にとって警戒すべきは、国民新党が社民党に対し、衆参両院での統一会派の結成を呼びかけ、民主党会派と合わせ両会派で衆院の3分の2の議席に達することにより、労働者派遣法改正案や郵政改革法案を参院が否決した場合でも、衆院で再可決して成立させる姦計を編み出していることです。

時代に逆行した動きとしては、小沢派の不透明行動があります。小沢前幹事長は、石川県での遊説を最後に姿を消し、自民党の森喜朗元首相や古賀誠元幹事長と会談したとの情報も流れるなど、旧態依然たる虚々実々の駆け引きはすでに始まっている様です。

ヤクザ紛いの不透明な政治には、国民も飽き飽きしました。これ等会談で取引きされるであろう利権の落ちこぼれを狙った小沢氏の取り巻きの動きも活発化していると聞きます。こうなると、東京第1検察審査会が、小沢氏の資金管理団体をめぐる政治資金収支報告書の虚偽記載について起訴相当と議決して、小沢氏を強制起訴することで小沢氏の不透明な政治への反省を迫ってくれる事に期待したくなります。

これまで、日本の政治家の多くは「民主主義とは多数決」と暗記してきた為に、与党は常に「数の力」におぼれ、与野党協力を拒んできた歴史があります。自民党に比べ野党時代の永かった民主党は、少しは謙虚で政権党になった暁には民主主義の真髄である「デュープロセス(公正な手順)」を尊重するかと思いきや、自民党と全く変わらない「数の力」に頼りました。中でも、小沢前幹事長の威を借る山岡前国会対策委員長の横柄な態度は,赤の他人でも不快感をも評す酷さでした。 

処が、新聞報道によりますと自民党の 古川参議院議員の「多くの議員の意見を取り入れる。これが国会審議を活性化することだと思うが、いかがか」と言う質問に対し、当時、副総理兼財務相であった菅首相は「私は、議会民種主義とは期限を切ったあるレベルの独裁を認めることだ、と思っている」と回答し、横柄な姿勢は山岡前国対委員長と全く同じで「Noblesse Oblige―ノブレス・オブリージュ」とは程遠い、平凡で傲慢な権力者である事を知りました。

今回の参院選で菅首相にすえられたお灸が利き、今後は法的な義務ではなくとも相手方が公正だと思う行動を自発的にとる指導者に成長して欲しいものです。ワールドカップで湧いた南アのマンデラ元大統領などは、菅首相が範とすべきノブレス・オブリージェを身に着けた生き証人です。

一方「部分連合」の相手候補であるみんなの党の渡辺党首も、たかが10議席獲得しただけにしては、はしゃぎすぎです。「勝って兜の緒を締めよ」と言う言葉もあります。「アジェンダ丸のみ」を連携の条件とする前に、「アジェンダをベースに真摯な話し合い」を申し込む位の謙虚さが欲しいものです。

又、政界再編構想を前面に掲げる事は政治的ハッタリと誤解され、他党から必要以上に警戒される愚策です。今回の参院選で当選した水野賢一・元自民党衆院議員を参院国会対策委員長に充てた意図が、他党との政策調整や国会折衝をスムースに行うためだとすれば一つの進歩と言え、ましよう。

「部分連合」の行方次第では、労働者派遣法改正案や郵政改革法案の廃案、「戸別所得補償」、子供手当て、高校無償化、高速道路無料化などのばら撒き政策の見直しなど、民主党の政策の負の部分の手直しも夢ではありません。

政策別の部分連合が成立して成果を挙げる為には、党議拘束の緩和も必要条件の一つだと思います。党の幹部からの圧力はあっても、最終的には議員の自由意志で投票されるアメリカ方式は議院内閣制の日本では難しいにしても、英国程度には緩和する事により、透明化が進み、派閥の力が更に弱まり、議員が切磋琢磨して更に大きく国民に貢献出来るのでは?

「部分連合」に賭けたこの夢が、オーベロンの魔力によって作られた媚薬を嗅ぎすぎた「真夏の夜の夢」でないことを願いつつ。

                    ニューヨークにて 北村隆司 

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