海外旅行者の為の携帯電話 - 松本徹三

2010年07月19日 10:00

私は仕事柄海外によく行きます。現にこの原稿もロンドンの空港で書いています。それなのに、海外に頻繁に行く人の為の携帯電話のあり方をこれまで真面目に考えていなかったのは恥ずかしい限りです。そこで、遅ればせながら今回はそのことを考えてみたいと思います。


この事を深く考える理由の一つに、アゴラでもたびたび論じたSIMロック問題があります。 SIMロックの議論で唯一つ頷けるのは、仕事で海外に頻繁に行かれる人からの苦情です。日本にいる人と連絡を取るのも、現地の人と連絡を取るのも、近くにいる日本からの同行者に連絡を取るのも、全て割高になるので、「いい加減にしろ」と心底怒っておられる方が結構多かったことが分かりました。

うっかりして日本と同じような感覚でウェブにアクセスなどしていようものなら、目の玉の飛び出るような請求書が来ます。(この問題は「ビル(勘定書)ショック問題」と呼ばれ、世界中の業界で頭痛の種になっている問題です。これで懲り懲りしたユーザーは、海外にいる時はもう二度とデータ通信を使う気になれず、「電話とカメラ以外では携帯電話は使わない」と固く心に誓っている人もいるようです。

私はかつて、世界中の旅行者が世界中で使える「旅先での便利な機能を集大成したアプリ*」の開発を志したことがありますが、そんなこと以前にもっとやることがあったのに、何も出来ていなかったことを恥じ入っています。

* 考えられていたアプリは、交通機関やホテルの予約、レストランや観光地、催し物や土産物の案内、天気予報、現地通貨との交換レート、簡単な現地語、留守中の自分の国のニュース、等々をパッケージしたものでした。勿論、時計は自動的に現地時間に変わるし、電話帳は全てワンタッチで国際通話が可能な形に変更されます。但し、現時点では、まだこういうアプリは実現していません。

「この解決方法としては、やはりSIMロック解除端末を作り、現地の通信会社のSIMカードに差し替えてもらうのがよいのかなあ」と考えてみましたが、詳しく検証していくとやはりそうではないようです。今回も、暇を見つけて英国の携帯通信事業者の話を詳しく聞いてみましたが、「ユーザーが出先でSIMカードを差し替えていたのは昔の話で、今は各国の提携相手と話し合って、色々なローミング料金の割引プラン(日決め、月決め)を作っているので、頻繁に海外旅行をするユーザーの殆どにはこれを使ってもらっている」とのことでした。

(それでも、こういうパッケージ料金は、ユーザーがEU圏内に旅行する場合とアジアやアフリカ旅行する場合とでは相当に違うので、その理由を聞いたところ、「遠くに行けば旅費だって高くなるのだから、通信費も高くなって当たり前だろう?」という答え、これでは答えになっていないので、私としては到底納得できませんでしたが、英国の一般ユーザーには何となく心理的には受け入れられているのかもしれません。)

色々考えた上での結論は、データについては、やはり「日決め、月決めの定額料金」を設定するのがベストという事です。(現地事業者のSIMカードに差し替える方法では、面倒なだけでなく、これより高くつきます。)一日使い放題で1500円という料金は、日本での月決め料金に比べると随分高く感じられるかもしれませんが、ホテルでのインターネット利用料とほぼ同じなので、旅慣れた人には納得していただいているようです。

電話の場合も、この英国の通信事業者のお奨めは、自国で使っている番号をそのまま使えるローミング方式でしたが、現地限りの通話を頻繁にする人の場合は、「SIM差し替え方式」もやはり必要と感じました。例えば、「英国国内通話に限り、100分喋って10ポンド」というのは、こういう人にとっては魅力的な値段設定でしょう。

考えてみれば、事業者間で協定を結び、ちょっとしたシステムの作り込みをすれば、こういう設定はソフトだけでも出来ないわけではないと思います。つまり、SIMカードを物理的に差し替えるというような原始的な方法ではなく、ソフトだけで処理するという事です。先にも申し上げたことがあるかもしれませんが、私は、将来的には、SIMは全てソフトSIM(バーチャルSIM)になり、航空会社の「スター・アライアンス」や「ワン・ワールド」のように、各国の通信会社がパートナーシップを作り、お互いに格安パッケージを提供し合うというのが良いと思うのです。

しかし、今は理想を語っているだけと言うわけにはいきません。こういうものが出来上がるまでの間は、「電話とメールだけが出来る超安値のSIMフリーの携帯電話機をつくり、海外旅行に際しては、自分の携帯電話機と二台持ちをしてもらう」というのが、やはり良いと思います。

この二台目の電話機には、勿論、基本料はかかりません。旅行先で使った分だけを、現地で入手したSIMカードの中に入っているプリペッド料金の形で払ってもらうだけです。また、この電話機は、買ってもらっても良いし、レンタルも可能ということにしておくべきでしょう。

また、この電話機には、自分の携帯電話機から最新の電話帳を簡単に移し変えられるようにしておく他、「どこで現地の通信会社のSIMカードが入手できるか(主として空港)」を明記したパンフレットをつけて提供するのがよいでしょう。この方法なら、日本で使っている自分の携帯電話機も持っていくので、日本で留守中にかかってくる電話も逃がすことがありません。日本で使っている「通話以外の機能」を使おうとすると、その度毎にまたSIMカードを日本のものに差し替えなければならないという面倒もなくなります。

考えてみれば、このような2台目の「電話だけの電話機」は、国内でも使い道があるかもしれません。ソフトバンクの場合は、現状では、「周波数ハンディキャップが増幅する地方でのカバレッジ」に特に問題があるので、「そういう場所では、この2台目の電話機にドコモのSIMを差して使って下さい」とお願いする「苦肉の策」もありうるのかもしれません。

しかし、こういう使い方も、本来ならローミング方式にする方が利用者には便利です。過疎地では、チャンピオン1社だけが設備をして業界全体の無駄を省き、「そういう地域では、他社は全てこのチャンピオン会社にローミングをする」というのがよいでしょう。こういう話をすると、すぐに「自分は設備費を削って、他の会社の設備にただ乗りするのか」と言う人がいますが、「ただ乗り」なんてとんでもない。勿論相応の清算料金を払うのです。この清算料金は、誰に対しても公正な計算方式によって算出されるべきですが、チャンピオン会社にとっても、自社だけで使うのに比べれば、はるかに有利になるのは言うまでもありません。

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