通信インフラ整備は現実的に - 池田信夫

2010年09月02日 08:56

「光の道」についてのNTTの反論が発表されました。その基本的な考え方は、FTTHへの移行は「需要対応で行なう」ことで、これは市場経済では当然のことです。ソフトバンクの主張するようにメタル回線をすべて強制的に巻き取ることは過剰設備になるばかりでなく、技術的にも障害が多く、光化を望まない利用者との紛争が起きて不可能です。


光化で劇的に維持費が減るのでFTTH工事費をまかなっても大きな収益が出るというソフトバンクの計算についても、NTTは記者会見で「年間の維持費の見積もりが料金業務なども含めて7500億円以上過少」だとして、月額1400円で提供することは不可能との計算を示しました。FTTHの工事費もソフトバンクの見積もりの2倍の5兆円以上で、この事業は大赤字になる、というのがNTTの結論です。

どちらの計算が正しいかは即断できないが、問題は前からいっているように経営責任の所在です。NTTの経営陣は自社の見積もりに責任を負っているが、ソフトバンクは負っていない。もし孫社長が「当社の試算が間違っていたらソフトバンクが赤字を補填する」というのなら、彼らの計算に従って工事をしてもいいでしょう。しかしコストを負担するのはNTTで、ソフトバンクはそのインフラを利用するだけで何もリスクを負わないというのでは、彼らのコスト計算は信用できない。

FTTHで大もうけできるなら、NTTにやらせないでソフトバンクがやるべきだし、国策会社なんか作らなくてもNTTがやるでしょう。ところが当のNTTが「大赤字になる」といっているのだから、当事者ではないソフトバンクが「もうかるはずだ」といってもしょうがない。まして当の企業が「もうからない」といっている事業を政府が強制するのはとんでもない話です。

さらに重要なのは、まずオールIP化するのが先だというNTTの見解です。私もかねてからいっているように、NTTもIP化には同意しているので、まずこれを進めるだけでも大幅な経費節減とブロードバンド化が可能です。電話線をDSLにするだけで維持費の1/3がなくなり、1000倍ぐらいのブロードバンド化が可能です。これは局内工事だけですむのでアクセス系の工事とは別だから、両方を一挙にやる技術的理由もない。

IP化だけでも数年かかる大事業で、FCCはそれについての検討を始めた段階です。そこから先は、光や高速無線など多様な選択肢があるので、FTTHに決める必要はない。10年以上先のインフラの予測はつかないが、すべてIPになることだけは間違いない。ソフトバンクもFTTHにこだわるのはやめて、インフラ整備を段階的に現実的にやってはどうでしょうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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