尖閣騒動:「莫談國事」なれど「匹夫有責」な日々

2010年10月01日 17:14

9月7日の事件発生からここ一ヵ月間弱、舞台を「外交」から「永田町」に移して、ますます盛り上がっている「尖閣騒動」。いわずもがなではありますが、あえて一言いわせてください。

おちつけよ、日本人!

安易に「戦争」などと口にして、熱しやすく冷めやすい、悪しき風習を、現代に再び踏襲せずともよいでしょう。

繰り返しますが、これが最初でもなく、最後でもないのですから。


正直なところ「レアアース禁輸」(9月23日の報道)であれほど日本が騒ぐとは思っていませんでした。上から目線で失礼しますが、日本国民と報道メディアの国際問題に関する知見とセンスの無さを全世界にさらけだしたようで、あの騒ぎようはいかにも恥ずかしい。

すでに「My Life After MIT Sloan」さんが「中国がレアアース輸出規制したって怖くない理由」で詳述しておられますので、重複は避けますが、中国漁船の船長さんが、東シナ海で海上保安庁の巡視艇相手に

「面舵いっぱい!白兵だ!」

する以前に、中国政府はレアアースの全世界向け輸出規制に動いていたのです。

こうした動きが既にありましたので、不肖、香港の私の零細オフィスでも、「脱レアアース技術」やら、「中国以外でのレアース資源開発」などのビジネス案件が飛び交っていました。

そこへ「日本向け全面禁輸」の報道がでたので、大連でレアアース・ビジネスに従事されている日本人の方に連絡すると、

「ん~?こっちは全然いつもとかわらんよ~...いろいろ雑音は聞こえてくるけど...それは毎度のことだしね...」

自分でお金を動かすことをせず、問題の分析もせず、騒ぐことだけがオシゴトな日本の報道メディアは、こうした「ウラ」をとることはしないのでしょうか。

案の定、26日になって、中国側は「日本向け全面禁輸報道を否定」。

こうなってくると、あの新聞一面報道の一連のバカ騒ぎは、米軍の沖縄基地問題を有利に収束させ推進させようとする一部の意向を反映しているのではないか、と勘ぐりたくなります。私は駐日米軍の規模縮小と日本の自己防衛力の増進は、歴史の必然だと信じていますので、こうした「小手技」は悲しいことだと思います。

「隠れた動機(Hidden Agenda)」はひとまずおいとくとしても、これ(↓)なんとかならんのでしょうか...

大畠章宏経済産業大臣は30日、ハイブリッド車用のモーターなどに使われるレアアース(希土類)の輸出を中国が制限している問題に対応するため「2010年度の補正予算で対策する」との方針を示した。

民間で「商機!」と動いているのに、お役人には「予算枠奪取!」の口実にしかならんのか...。センス悪し。発想が貧弱。省益を優先して国力を損じる結果になってはいないのか、雰囲気で決める前に、内容を精査してほしい。

レアアースのような「土ケラ」より重要なのは、フジタ社員4名のスパイ容疑による拘束の件でしょう。20日に河北省の石家荘市付近で拘束され、4日間もほったらかし。日本政府中枢がこの事態にやっと気がついた24日に、仙谷官房長官は、

「現時点で尖閣周辺の中国側から問題提起されている問題との関連はないと考えている」

で、さらにほったらかし。

領事が接見できたのは拘束後6日経った、25日。

前原外相が駐日中国大使を召喚し「人道的観点から早期に解決してほしい」と申し入れたのが27日。

2回目の接見が29日。

4人のうち3人が釈放されたのが、30日。

残された一人、高橋定さんはいまだに拘束中です。

ご本人はもちろん、ご家族、同僚、関係者のお気持ちを慮るに、まさに「男子の鉄腸も寸断せざるを得ず」ですが、これがメディアではレアアース以下の取り扱いなのですから、日本の報道関係者の価値観とやらは最近どうなっているのでしょうか。

さすがに「現時点で...関連無い」と考えていた仙石長官も、もしかしたら関連があるのかもしれないとお気づきのことと思いますが、とにもかくにも

「日本との間に外交上の問題が発生したら、とにかく民間人を拘束することが有効である」

という前例を、日本側の担当者として裏書きしていただいた功績は、仙石由人という一政治家の経歴で特筆すべき一事となりました。中国で働く一日本人として、同氏の更迭はまさに安全保障問題です。

いまさらではありますが、この菅民主党内閣のオロオロぶりには、予測されていた事とはいえ、「辟易」「呆れる」を通り越して、不謹慎ながら笑ってしまいました。

小沢一郎の挑戦を退けて、総理に留任。

「ボクちゃん国連総会でスピーチだ~い」

とニューヨークへいったところ、問題湧出。

「最小不幸社会」

お披露目の晴れの舞台を台無しにされて、

「宰相不幸、『いら菅』最大」。

一部報道を信用すれば

「超法規的措置はとれないのか!」

とわめいたとか。

さすがに一度も国政選挙に勝ったことのない、「超民主(党)的措置」で総理となった人は言うことが違います。

仙石官房長官の迷走ぶりはすでに上述しましたが、

「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」

とつい口を滑らせてしまった沖縄地検の判断を、

「了とする」

とのたまった同氏の言動は、氏の政治家としての素養だけでなく、弁護士であるという氏の経歴を考慮しますと、日本の法曹教育のあり方に関する議論にも一石を投ずる結果となったと言えましょう。

しかし個人的に一番ウケたのは、馬淵国交相の記者会見。船長の釈放当日(24日)、「海保の初動に問題があった」などという、霞ヶ関村の村民同士の責任のなすり合いに発展していた状況を受け、いかにも部下に、

「大臣、ここではっきり言っておいてくださいっ!」

といわれてしょうがなく出てきましたという風情がはっきり見えるものの、ご本人としては新人大臣として閣僚の一員として内閣の足並みもそろえなきゃ(でもだれがそろえているの?)。と、いうわけで、その表情のこわばり具合といい、腹の据わりの悪さといい、ある意味「見もの」でした。

馬淵さんには、「姉歯」のようにはいきませんよ、ということで、今後の成長を期待したいところですが、チャンスはそう多くは残されていないことを自覚していただきましょう。

このように日本の政治家の主体性のなさは、情けないかぎりでしたが、逆の見方をすれば、これが中国にはない、日本の「強み」を示唆していることに私は気がつきました。

要するに、こうした「ダメな政治家」は、日本においてはすぐに替えがきくのです。

安部、福田、麻生、鳩山、菅...と、不良品はライン上でも適時に「カイゼン」することが可能であり、彼らの後を担う人材が豊富とは言えなくともちゃんと控えている。これがまだまだ成熟せずとも、まがりなりにも成り立っている民主主義国家「日本」の国としての強さなのです。

これが中国で、胡さん温さんコンビの一方だけでも、失政の責任を国民に指弾され失脚、などということになったら、とんでもない混乱を呼び起こすでしょう。

ここは

「頻繁な首相交代は世界経済の回復や日米関係の維持に『非生産的だ』」(ニューズウィーク紙)

などとケチなことを言わず、ダメな政治家はダメということで、どしどし世代交代を進めていただき、現政権の中枢を占める団塊世代の全共闘出身者などという過去の「贅閹の遺醜」ともいうべき、肝心の時に役に立たない人たちには、さっさと退場してもらいましょう。

こうした日本の指導者層の新陳代謝の良さを観れば、中国人のみなさんも、自らの支配者層の行状を省みて、もって瞑するところ大ではないかと思います。

個人的なレベルの話をさせていただければ、香港でもいささか日本人に対する視線がキツくなったような気もしますが、進行中の商談に支障をきたすレベルではなく、以前通りにやらせていただいています。さすがに日本政府の対応にはへこみましたが、いつもどおり天真爛漫に「�胃好!(レイホウ:こんにちは)」となじみの雲呑麺屋に入っていくセガレの姿に少なからず励まされ、心して背筋を伸ばして生活するようにしております。

政治家が「粛々」としないのであれば、民間の我々はなおいっそう責任重大ということです。

上野の山の砲声を聞きながら、ウェイランドの経済書を講述していた福沢さんのようにね。

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