中国は共産党一党独裁の資本主義国家である - 石水智尚

アゴラ編集部

尖閣諸島問題に端を発して、俄か愛国心が国内に高まるなか、間違った前提に基づく対中戦略の議論が行われていると感じています。間違った前提から出発して、正しいゴールにたどり着く事はできません。「大量破壊兵器が有る」という前提でイランへ侵攻した米軍は、ついに大量破壊兵器の倉庫へたどり着く事ができませんでした。正しい前提条件で議論をする事は大変重要です。


テレビの政治討論番組やブログで中国脅威論を唱える方の多くが、中国を脅威と感じる理由のトップに、中国が社会主義国家である事を掲げているようです。wikiによれば、中国共産党は「共産主義を実現するための初級段階として社会主義を行っている」とあります。しかしながら私は、中国が社会主義国家である事に大きな疑念を抱きました。

そこで、社会主義の定義をwikiで調べてみました。

社会主義は、資本主義の原則である自由競争を否定または制限し、生産手段の社会的所有・管理などによって、生産物・富などを平等に分配した社会を実現しようとする思想と運動の総称。
つまり社会主義の要素とは、
1) 自由競争の否定あるいは制限
2) 生産手段の社会的所有・管理
3) 富の平等分配

確かに昔の中国は、大企業はみな国有で、自由競争の代わりに、第○次5カ年計画とかいう計画経済であったと記憶しています。

�眷小平は1978年12月に、改革解放という国内体制の改革および対外開放政策を開始し、それは現在に至るも中国共産党によって続けられていると理解しています。改革開放とは社会主義経済から資本主義市場経済への移行です。その要素とは、
1) 市場における自由競争
2) 資本と生産手段の私有
3) 資本家への富の集中

次に、資本主義の要件をwikiで調べてみましょう。
1) 私有財産制
2) 私企業による生産
3) 労働市場を通じた雇用、労働
4) 市場における競争を通じた需要、供給、取引価格の調整、契約の自由

私は昨年、深�祁に販売会社を設立して、パソコンやソフトウェアの販売を行っていますが、上記の要件をすべて満たす企業活動を行っています。

1972年以降の経済体制を、中国共産党は社会主義市場経済と呼んでいるようですが、これは共産党が国民に対して面子を保つ為の詭弁といえます。いまでも国有企業は計画経済を名目的に行っているようですが、その国有企業の多くはシンセン・上海・香港等の株式市場へ上場して資金調達しており、計画より企業の利益を優先するようになっているようです。

つまり、いまや中国の経済は基本的に資本主義市場経済と言えます。

「社会主義」とは社会主義的手段に基づき、富みの平等分配を行おうとする運動を表す言葉です。「社会主義国家」とは、それを行う政権を持つ国家の事だと考えます。この前提が正しければ、改革開放を続ける中国は、たとえ共産党の一党独裁国家であれ、理論的には社会主義国家ではありません。

なるほど、やっと私の疑念を晴らす事ができました。やはり中国は既に、社会主義国ではなかったのです。

故にみなさんも、中国について議論を行う場合、共産党の一党独裁ではあるが、資本主義市場経済を行う国家資本主義国であるという前提で、正しいゴールにたどり着くように、実り有る議論を行って頂きたいと願っています。
(石水智尚 インターネットソリューションズリミテッド役員 ブログ

コメント

  1. bobby2009 より:

    上記記事に対する補足説明をします。

    私は親中派でも嫌中派でもありませんが、香港と中国で20年以上、事業を営むビジネスマンであり、ある種のコンサル的な仕事もしていますので、現代中国を示す日常的な状況についてはよく理解していると考えています。

    尖閣諸島問題以来、ネットやテレビで行われている中国脅威論の議論で感じるのは、現代中国のリアルな状況からかけ離れた「前提条件」をもとに「中国はこうである」と決め付けている人がいかに多いかという事です。どうしたらその状況を改善できるかと考えていたところ、この記事を投稿する事を思いつきました。

    改革解放後の現代中国が、定義上は資本主義市場経済を行う非社会主義国家であるという認識が生まれれば、いままで中国を共産党という色眼鏡で見ていた人たちの中から、リアルな中国を見ようとする人が出てくるのではないかと期待しています。

    今日の「たかじんのそこまで言って委員会」で中国人ゲストが、いまの日本に必要なのは、感情に基づく親中派や嫌中派ではなく、事実に基づく知中派ともいうべき人たちを増やす事であろうと言っていました。私もこの意見に賛同します。

    石水

  2. kakusei39 より:

    社会主義か資本主義かの分類の前に、自由主義か、非自由主義かの議論が重要です。なぜなら、共産党一党独裁の国は、国民の意向でなく党の意向で何でも決められると言うことです。

    デモも官製デモが自由に出来ますし、それを批判する人物を拘束・拘置できるわけで、言論の自由もない資本主義は、単に世界から金をかき集める手段にしか過ぎません。資本主義だから、悪いことをしないような論調ですが、経済の体制とその国家の行動とは余り関係ないでしょう。

    南沙諸島、西沙諸島のベトナム、インドネシア、フィリピンからの略取も、自由主義国家では考えられない手段とやり口です。それは、反対勢力を暴力を使ってでも押さえ込む悪辣なやり方で、党の意思あるいは上級幹部の意思を貫くことが出来るからです。

    マスコミに横行している脅威論はそれなりに考慮する必要があるものと思っております。

  3. bobby2009 より:

    kakusei39さん

    >社会主義か資本主義かの分類の前に、自由主義か、非自由主義かの議論

    仰る通りです。そこで一つご質問致しますが、一党独裁のシンガポールはどちらでしょうか?

    一党独裁=悪辣な政府という方程式は成立するのでしょうか?

  4. hogeihantai より:

    2010年度Transparency Internationalの調査によれば、シンガポールは腐敗してない政府のリストでニュージランド、デンマークと並んで一位にあります(日本は17位で香港より低位)。一党独裁であるが、自由の制限度は小さい、商売上の規制は最小で日本よりはある意味でより自由な国家ですね。Per Capita Incomeも日本より高い。民主主義の最終目的を最大多数の最大幸福とすれば、シンガポールは民主主義の日本よりうまくいっている地球上、極めて例外的な一党独裁国家といえますね。シンガポールを除けば、程度の差はあるが、一党独裁=悪辣な政府といえるのではないでしょうか?勿論、中国も例外ではありません。シンガポールは唯一の例外です。問題があるとすれば、うまく行かなくなった時誰がそれをチェックするかですね。易姓革命でも信奉しているのでしょうか。

  5. kakusei39 より:

    詰まらないことをお聞きになりますね。

    シンガポールは、実質的に1党独裁ですが、野党は存在しますね。首相も選挙で選ばれた人ですよね。

    中国は、主席とか首相とか、国民の選挙で選ばれているのですか?野党の存在は許されているのですか?歴史上一度も選挙をしたことのない国を、経済体制が資本主義だから悪い事をしないなどとお考えになる、その意図が分かりません。赤に染まれば赤くなると言うことでしょうか。

    シンガポールは、問題の多い国ですよ。報道規制が結構あるし、自由も制限されているし、しかし、500万人の国じゃ、周辺国に悪いこと等出来ないですよ。明るい北朝鮮と言われているそうですね。周りから攻められると、イスラエルのようになるかもしれませんが、飽くまでも防御的な攻撃だけでしょうね。

    しかし、13億人の国の専制政治は、国内でも文化大革命とか、天安門事件とか、国民を幸せにすることよりも、党(一部権力者)を大事にする、既得権を守ることの方が重要になります。

    シンガポールに、ウイグル侵略やチベット侵略が出来ますか?南沙諸島、西沙諸島をパクレますか?

    一党独裁は、悪辣な国家の十分条件ではありません。覇権を求める国家で一党独裁の国は、悪辣な国の十分条件でしょうね。

  6. bobby2009 より:

    hogeihantai さん

    シンガポールは文字通り、非民主的な政治体制の国家です。政治的な言論の自由も、報道の自由も非常に制限されているようで、政府批判も許されません。一党独裁というだけでなく、最高指導者が長期で政権に居座る「独裁者」政権です。リー・クアンユー初代首相は25年間も政権に居座り続けました。

    1949年に建国された中華人民共和国の最高指導者は現在までの61年間で11人(平均6年未満)ですが、1965年に独立したシンガポールの最高指導者は現在までの45年間に3人(15年)しかおらず、そのうち2人は親子です。つまり政治的には中国よりも徹底した非民主的体制といえます。

    しかしながらご指摘のように、政府による腐敗の取り締まりと規制緩和により、日本より行政の透明度が高く、商売の自由度も高い。つまり、政治的な問題に立ち入らなければ、世界的にみても自由度の高い国といえます。

    この例をみれば、一党独裁である事がすなわち悪辣な政府を生み出すと言えない事は明らかです。

  7. bobby2009 より:

    kakusei39さん

    >歴史上一度も選挙をしたことのない国を、

    県や区といった下部の地方政府は、直接選挙が実施されているそうです。

    >中国は、主席とか首相とか、国民の選挙で選ばれているのですか?野党の存在は許されているのですか?

    上位の政府組織は、全国人民代大会による選挙(国民から見ると間接選挙)で選ばれます。全人代の構成人員の3割は共産党以外の一般人(経済界など)から選ばれるようです。この3割は、共産党に対する野党のような役割を期待されているのかもしれません。

  8. kakusei39 より:

    相変わらずのお話ですね。赤に交われば、真紅になると言うことは本当ですね。海賊と商売をしていると、海賊の方が真っ当に見えるそうです。いわゆるストックホルム症候群でしょう。

    中国の地方には野党が許されているのですか?選挙なら北朝鮮でも選挙をしてますよ。でも、世界は選挙と認めないでしょう。中国も同じですね。こんなことが分からないのでしょうか???

    ≫この3割は、共産党に対する野党のような役割を期待されているのかもしれません。

    ではなぜ、劉暁波氏は牢に入れられているのですか。劉暁波氏の発言が罪になるわけですから、貴方の言う野党とはどんなものなのですか。????

    こんなねじ曲げを平気でするというのは、なにかの魂胆あってのこととしか考えられないですね。!!!

  9. bobby2009 より:

    kakusei39さん

    >歴史上一度も選挙をしたことのない国

    誤解されているようなので、もう一度詳しく書きます。

    直接選挙の有無が質問でしたので、県クラス以下の人民代表大会(中国の議会)の代表者は「直接選挙」で選ばれます。

    県クラスの人民代表大会の代表が集まり、省・自治区・直轄市クラスの人民代表大会の代表を選挙で選び、その代表が全人代の代表を選び、全人代の代表者の中から選挙で、国家主席を選ぶ(首相は国家主席が指名)そうです。

    >中国の地方には野党が許されているのですか?

    結社された野党が無いことは前の文章を読めばお解かりになると思います。人民行動党の意向により形式的に存在し、政府批判もできないシンガポールの野党と、共産党の意向で選ばれる全人代の3割の一般人は、その存在目的からして、きわめて似たものと言えるのではないでしょうか。

  10. bobby2009 より:

    kakusei39さん

    >ではなぜ、劉暁波氏は牢に入れられているのですか

    テクニカルには、中国の国内法に違反したからと思われます。中国にも法律があり、(残念ながら)言論の自由を法律で制限する事は、立法権を有する中国政府の権利かと思われます。

    ところであなたの言うシンガポールの野党は、首相や政府を批判した人民が、投獄や国外追放される事を防いでくれますか?野党の存在=民主的社会は勘違いです。ロシアは民主的な政治制度に移行しましたが、チェチェン共和国にとっては悪辣な国家のようですね。

    民主的社会=善というのも間違いです。ナチ党とヒットラー政権は、ワイマール憲法のもとで「民主的」に生まれました。世界でもっとも「民主的」な米国は、嘘情報を流してイラク侵攻し、イラク社会を破壊してしまいました。

    米国が追求する原理主義的「民主主義」は、絶対に正しいと証明されているのでしょうか?