ソニーが満を持して発表した電子書籍リーダー端末機「Sony Reader」。2004年発売のLIBRIeで失敗しているだけにどれだけの進化を遂げているのか、興味津々だった。しかし、漏れ伝わる仕様を確認していくと、どんどんとLIBRIeのアップデート版という気がしてきた。
下に簡単な機能のみ入れて比較表を作ってみた。
たしかに機能的には進化している。タッチペンで文字を書くこともできるし、端末単体での使い勝手もよいようだ。しかし、電子書籍端末に重要な大きなポイントが進化していない……。そのポイント=使い方が変わっていないのだ。あまり大きな声で言いたくないのか、リブリエのときにはちゃんと「使い方」のページがあったのに、今回のReaderのWebサイトには今日の時点では掲載がない(私が見つけられないであれば、どなたかご指摘を!)
というのも電子書籍端末で重要な要素は、端末の使い勝手もさることながら、欲しいと思ったときにいかに素早く書籍を読むことができるか、ということだからだ。拙著『電子書籍元年』ではキンドルがヒットした理由を以下のように指摘した。
キンドルは、外観では『Sony Reader』より少し洗練されたデザインという印
象しか受けない。しかし、実は日本で販売されたeブックリーダーとの決定的な違いをもっていた。通信機能だ。携帯電話の3G通信網を使用し、パソコンも必要なく、すぐに書籍をダウンロードできるのだ。ほとんどの書籍はダウンロード終了まで60秒未満。しかもユーザーによる通信料は無料という太っ腹だ。コンテンツとしてベストセラー作品9万冊以上の電子書籍に、加えて新聞や雑誌までキンドルストアに用意した。
今回発売される2機種は、どちらも通信には対応していない。つまり書籍はパソコン上で購入し、パソコンから端末に書籍データをコピーするという“手間”が必要になるのだ。もちろん、ソニーはアメリカでは、より上位の機種「Daily Edition」というWi-Fiも3Gも対応したモデルを発売している。技術的には可能なのだろうが、国内3Gのキャリア調整などが時間的に難しかったのだろうか。ソニー自体は、KDDI、朝日新聞社、凸版印刷とブックリスタを設立し、電子書籍もこちらをバックに据えた「Reader Store」で販売するということなので、早々に通信対応型は発売されると思う。
また、いまだにソニーミュージックの楽曲をiTunesに流さないという姿勢からMacへの対応がないことはわからないでもないとも思ったが、アメリカではmacに対応していることを考えるとなぜ国内版がWindowsのみの対応になっているかもわからない。
日本国内では、ライバルのKindleが日本語書籍対応サービスの展開をまだ始めていない。だからある意味、現状では電子ペーパーを使用した単機能型電子書籍端末としてはソニーの独壇場になる。その間に少しでも台数を販売しようとしたのか。いずれにしても当初用意される電子書籍も2万タイトルというから少ない印象も拭えない。
どう考えても準備不足の感が否めないのだ。つまり今回の発売は、なにか特殊なわけがあり消費者視点よりも社内事情を優先した結果、中途半端なままで発売せざるをえない事情があったとしか思えない。もちろん販売されてみないと市場の評価はわからない。だが個人的には期待していただけに残念でならない。「今回はこれで許して!」ということなのだろうか……。
コメント
個人的には多少でも成功して、電子出版市場が拡大してくれれば嬉しいのですが、ご指摘の通り、いつでもどこでも読めるを実現するために重要な機能である通信機能を持っていないのでは、わざわざ持って歩く人がどれだけ現れるか。いや、持って歩かなくても自宅で使おうと思うか…国中でよってたかって電子出版を潰そうとしているとしか思えません。一体どんな利権が絡んでるんでしょうね。東京の出版社はみんな大日本印刷とか凸版印刷といった印刷大手にでも首根っこを押さえられているんでしょうか。
> …国中でよってたかって電子出版を潰そうとしているとしか思えません
少なくともソニーには潰さなきゃいけない理由はないのですが。。。。
単に想像力の欠如??
そりゃ、ソニーにはないでしょう。ソニーには。どちらかというと積極的に開拓しようとしている方だと思いますよ。
本当に陰謀があるなどと言うつもりはありませんが、出版業界は、iPadやKindleが現実の脅威になり得る状況に至って初めて重い腰を上げたようにしか見えないのですよ。
iPadもKindleも電子書籍という点では入手、閲覧、破棄まで完結して行うことができるのが身上なんです。せめてWi-Fiくらいには対応して欲しかったと思います。PC必須だとギークの玩具で終わってしまいかねません。