行き詰まり始めた政治を打開するのは地方か

大西 宏

菅内閣の支持率が20%台にまで低下しただけでなく、民主党の政党支持率も、野党第一党の自民党も、JNNの世論調査、読売の世論調査ともに、民主党、自民党共に支持率が低下し、両政党が20%台で拮抗する状態となりました。産経の調査だけは、政権交代後初めて自民党が、民主党の支持率を上回ったとしていますが、誤差の範囲でしょう。
菅内閣への失望感がたかまるなかで、国民の支持を集める魅力をもった政党がなくなり、政治は混沌とした不安定な時代に入ってきたようです。むしろ話題は地方に移ってきているようにも感じます。

現在は、互いに激しいシェア争いを展開すると、厳しい価格競争が起こり、それぞれのブランド力が低下するだけでなく、市場そのものがさらに衰退していくマーケットの現象とよく似た動向となってきました。

政党支持率の推移を、日本テレビの世論調査でみると、第一次小泉内閣発足当時の自民党支持率が46.6%、郵政選挙翌月の2005年9月の自民党支持率は49.3%。政権交代翌月の民主党の支持率が46.2%であり、当時と比べ、民主党も自民党も支持率も20%前後では、いずれも国民の支持を得ることに失敗している状況です。
ちなみに、この支持率推移のグラフは、カーソルを当てると、それぞれの調査時点での各支持率が表示され、面白いのでリンクを張っておきます。
政党支持率推移

増えてきたのは、支持政党なしの無党派層です。読売の調査でも無党派層は先月の37%から43%に増加してきています。産経新聞は一年前と比較していますが、21・6%から38・8%に増えたとしています。つまり無党派層のほうが多くなってきています。それは最大勢力が無党派層になったということです。もっともその極端な結果が出ているのが時事通信社の行っている世論調査で、支持なしが57.4%に達しており、民主党は16.2%、自民党は16.5%の支持率しかありません。
図解・時事世論調査】政党支持率の推移

自民党は消費期限切れだということで、政権交代が起こりましたが、民主党も蓋をあけてみれば、不良品だった、いずれも買う気はしない、国民の期待値に達していないというのが国民の今の気持ちではないかと思います。

この状況は、民主党や自民党以外の政党には有利なはずですが、政局に巻き込まれている限り、限界があるものと思います。
政党支持率が、マーケティングでいうシェアだとすると、いずれかの政党が、思い切った発想の転換、戦略の転換を行わない限り、安定したリーダーが生まれないシェアの構造となってしまっています。
際限なく、主導権を握るための競争が繰り返され、政治が衰退していく構造です。

そんななかで、注目をあび、熱くなりはじめてきているのは地方政治のほうです。名古屋のリコールが不成立となりましたが、不足分の1万2004人を超える無効異議申立ての署名が集まっているようです。
鹿児島の阿久根市では、リコールが成立し、竹原市長が失職するという事態が起こりました。しかし賛成反対が拮抗しており、市長選で竹原市長が再選される可能性もあります。
関西では奈良県がそっぽを向いていますが、近畿中心の7府県が参加する特別地方公共団体「関西広域連合」が始動し始めました。実際の政策の中味がどうかというよりは、なにか変化をつくらなければもう地方は成り立たないという危機感からの動きが、地方から生まれはじめてきています。

革新は周辺から起こるといわれています。中心の坩堝にいるプレイヤーは、さまざまな思い込みから発想転換できず、またわかっていても変われない事情をたくさん抱え身動きがとれないのですが、周辺からやってきたプレイヤーは、思い切った新しい発想を持ち込めるからです。

もし、この地方の政治改革のエネルギーと手を組む政治勢力が生まれてくれば、もっとも現実的な政治再編流れがが生まれてくるかもしれません。

コメント

  1. mekashin01 より:

    大阪や名古屋は日本でも特別な地域なのです。
    どうしても全部が浮上するということはないでしょう。

    中国が豊かになれるものからなればいいとなったように
    国が倒れた時立ち上がれるところから立ち上がればいいのかもしれません。

  2. hogeihantai より:

    議員内閣制で首相の権限が弱く、一票の重みに大きな格差があり議員の勢力関係が国益を代表するものになってない。

    民主国家で腐敗度が低く、DEMOCRACY INDEXで上位にある国(北欧、ニュージーランド)は一人当たり所得も上位あるが、これらの国は全て人口1000万以下の小国である。

    日本の様に人口の多い中央集権国家では官僚機構も大きくなり、非効率な行政組織となってしまう。既得権集団の数も政党の枠を超えて多く、利害関係の調整が極めて困難である。

    地方自治では首長の権限が大きく、大阪府知事、名古屋市市長のように有能な政治家が改革に腕をふるえるが、地方分権は進まず、行政権の裁量が制限されており、出来ることに限りがある。

    日本の目指す所はやはり行政単位が1000万人以下の自治体が防衛と外交を除いた全てを統治する地方分権だろう。自治体同士の競争があれば政策の優位性も明らかになり、優れた自治体のやり方が他でも模倣され国全体がよくなる。

    究極の地方分権は独立である。九州国、四国国があってもおかしくはない。先進国でも独立運動は多い。英国のスコットランド、スペインのカタロニア、カナダのケベック。日本国と一緒に沈没するか、独立して起死回生を計るか。龍馬のように骨のある人間はいないのか?