来年のNHKのスペシャルドラマは「坂の上の雲」だという。坂本龍馬が終わったと思ったら、今度は日露戦争。NHKがこういう明治時代の話ばかりドラマにするのは、人々の中にあのころの日本へのあこがれがあるからだろう。「光の道」をめぐる議論でも、専門家は誰もソフトバンク案を相手にしなかったのに、多くの「追っかけ」が孫正義氏を龍馬に見立てて「国を変える」運動に集まった。
こういう群衆心理はわからなくもない。もう20年にわたって展望のない日本経済を一発で改善する「魔法の杖」があるのなら、それを使わないのはおかしい。しかし日本の社会資本整備率は先進国の平均を超え、光ファイバーの普及率も世界一だ。過剰なインフラにさらに投資しても、成長率が上がることはありえない。10年後に何が最適なインフラかは、誰にもわからない。
今までは経済発展という坂を上った先に欧米の先進国という雲があったので、やるべきことは簡単だった。欧米の技術を導入し、制度をまねて彼らに近づけばよかったのだ。官僚主導の国家体制は、それには適していたのかもしれない。日本の高度成長は、こうしたキャッチアップの過程としてほとんど説明できる。
しかし近代化という坂を上り切った日本には、もう雲は見えていない。めざすべき目標がはっきりしないとき必要なのは、「国がしっかりする」ことではなく、自由な経済活動を認め、市場経済による試行錯誤で目標をさがすことだ。それがプラットフォーム競争や周波数オークションが重要な理由である。
これから下り坂にさしかかる日本にとって必要なのは、無理をしないで今までの蓄えを大事にし、負担を均等化することだ。全国あまねく新幹線や光ファイバーを引くコストは将来世代の重い負担になるので、過剰投資はやめて都市に重点的に投資する必要がある。社会保障も大幅に整理して、自己責任を原則とするしかない。これはドラマにはとてもならない散文的な仕事だが、これからは坂の上の雲をめざしてみんなで走り続けるより創造的な時代になるだろう。
コメント
単純に。
そうなる結果、どれだけの自殺者・餓死者・獄死者が出るのでしょう?
膨大な犠牲を是認するか、それとも是認せず誰も死なせないためにできるだけのことをするか。
根本的な目的を何にするか。
誰もが坂の上の雲をハッキリと認識できる時代が明治時代なら、
今は、稀有の事業家だけが、これから訪れるであろう、まだ見えぬ未来をハッキリと認識出来るだけで、他の大多数はその事業家のビジョンを信じられずにいる。そんな時代なんでしょう。
日本は先頭に立ってはいけないのでしょうか?
前例が無いと動いちゃいけないのでしょうか?
他社、他国が行って成功例を提示しなければ、
追従と言う形でしか前に進めないのでしょうか?
我が日本は。
前人未踏の領域に踏み込む冒険心をくすぐられませんか?
学者稼業は気楽でいいですね。あ、
尤も、新しい経済理論の一つや二つ、
独自に発表するなら冒険心を認めても
いいですけどね。
先人の経済理論を解説するだけなら、
学者と言うか解説者ですよw
池田センセ、解説乙w
「坂の上の雲」ちょっと見ました。NHKとしては日本人よ、がんばれという気持ちかもしれないし、見る人もそのつもりなのかもしれませんが昔はよかったという現実逃避に思えます。
以下、原作読まず、NHKもまともに見ないで発言ですが、
日露戦争をえがくにしてもジェイコブ・シフなどを登場させて、戦争を単なる英雄物語ではなく、国家レベルの冷徹で欲得ずくのある種ビジネスとして見直すような観点があってしかるべきかと思います。
金融危機、財政危機まっただなかの日本人に必要なのは現実逃避ではなく現実直視につうずるドラマだと思います
スカイツリーを最先端などと形容するテレビ局には無理かもしれませんが、、、
izumihigashiさんへ
孫さんは提案が通らない場合はソフトバンク単独でも「光の道」を実現させると言いました。
なので今後は「光の道」議論はソフトバンク内だけでの問題となりました。
孫さんの言葉通り、今後ソフトバンクが単独で「光の道」を実現させると皆信じて注視し続けるでしょう。
ところであなたの言う「まだ見えぬ未来をハッキリと認識出来る稀有な事業家」さんは、「光ファイバーが各戸に行き渡れば需要が生まれる」程度のことしか言っていませんよ。なんのビジョンを信じろと?
「日本が先頭に立つ」とは何が先頭に立つのでしょう?
歴史や経験・他国の事例・先人の知識に学ぼうとしないのはただの愚か者です。
国民全員に莫大な負担を負わせる可能性のあることに対して「冒険心をくすぐられる」なんて幼稚な感情は湧いてきませんね。
本当に気楽な人間とは「坂本龍馬」などの言葉だけで簡単に煽られてしまう人間のことでしょう。
ehimemikan8さん
何周遅れの反論してるのですか。
>歴史や経験・他国の事例・先人の知識に学ぼうとしないのはただの愚か者です。
仰るとおり。では坂の上に雲が見えなければ坂は上らないのですか?光の道整備は無駄であると先人が示した証拠は?
私は実はこう睨んでいるのです。田舎、過疎地への光整備を
進めると、次のような構想を持った人にとって、大変迷惑な話となる。その為に何かと全国津々浦々への光ファイバー敷設は無駄だと言っているのではないか。
次のような構想とは、日本を都市に集中させて、過疎の村を廃村に追い込み、日本的原風景など廃れても構わない。全国各地の中核都市に、経済効率の悪い山村などの人口を集中させる事で、つまり自然に都市に人口を集めるような施策を打ち、行政コスト削減だけでなく、民間の経営効率も各都市に集中できるので経済成長が期待できる。仮に山村の存在が治山治水その他の役に立っていたなら、都市集中化によるコスト削減分の一部を、治山治水事業として別途に考えればよい。
こう考える人にとって、光の道構想は、今の都市への人口移動を停滞させるブレーキとなりかねないので反対でしょう。逆に、なんとしても都市と山村の間に人工的に格差をつけるべきだ。情報の道が将来の基本的インフラだとしたら尚更、将来文明的な暮らしを欲するなら都市に暮らすしかない。こういった方向に持っていきたい人々なら、光の道は反対でしょう。
坂の上に雲はもうないと思いますが、いきなり都市への集中投資という話でもないと思います。
経済が一定のレベルまで行って、あと下り坂になった文明というのは、だいたい学術や芸術で栄えていくのではないでしょうか。
「竜馬がゆく」も「坂の上の雲」も先進国を目指した後進国、と言うのが背景にある大きな流れです。司馬遼太郎のこの代表二作が大きく受けて、さらにロングセラーになっているのは、これらを半分は小説風に面白おかしく書き、半分は冷徹に歴史と人生を描いたからです。どちらかだけだと退屈で読めません。司馬遼太郎の他の小説家と明らかに違う魅力は、小説で読み手に巧みな言い回しで火をつけて、一方でドライな歴史と人生で考察させるところです。
読んで10年以上経ちますが、他のどんな美しい小説や哲学書よりも、年をとっても生き生きと考えさせるものがあります。
坂の上の雲が完全になくなったのは日本が繁栄を謳歌し終わったここ10年くらいではないでしょうか。「アメリカではこうしている」という言葉も説得力を失い、欧米の白人が日本を変だ変だと言えば、そうか、と納得した世代も今の30代半ばくらい以上の世代に思います。
みんなで目指すものがなければ、みんなで目指すものなんか抽象的な「オンリーワン」「自己実現」みたいなものしかありません。ですが目指すものが具体的で無い時代こそ、個々の中で自分だけの目的を具体的に描く知性が必要で、それにはキャッチフレーズも無いし、教科書もありません。
沢山の知見を自分に合わせて自分の将来をどうすべきか、悶々と考えるしかありません。その評価は、そんな知恵のない学校の先生にも、マスメディアにもありません。
皆で酔える酒は無いですが、崩壊の淵に立つのは見方によってはおもしろい時代ではないでしょうか。
izumihigashiさん
「私は実はこう睨んでいる~」以下の文章を読ませていただきました。
最初のコメントを読んで気づくべきだったのかもしれませんが、ちょっと、まともな会話の通じる方ではないなと思いましたのでもうコメントは書き込みません。
これからも頑張ってください。
失礼いたしました。
何度も例に出しますが岡山県新見市でソフトバンクが手がけている公設民営のFTTH事業ですが利用者は
3割、IP電話にいたっては2割以下です。
SBMの副社長曰く「残念な結果」
http://www.city.niimi.okayama.jp/?ID=4978
人口統計を調べてみると、H12年38492(5町の合計)→
H17年36073→H22年34425
あれえ、FTTHなんぞで何にも変わらないジャン(苦笑)
「光誇大妄想教」の一説でした。
ehimemikanさん
貴方の想像力の範囲外の話をしてしまいましたか。
それは申し訳ございませんでした。
日本にはコンパクトシティ構想推進者がいますので、
彼らには光の道なんぞ以ての外なのでね。
それは失礼いたしました。