ウェブ検索とネット社会の将来

2010年12月10日 15:22

園部逸夫元最高裁判所判事や玉井克哉東京大学教授らが「ウェブ検索とネット社会の将来に関する国民的議論を」と主張している。この運動のウェブサイトで署名を集め、その力で、オープンな議論と慎重な考慮の必要性を社会に呼び掛けるという。

一方、この運動のきっかけとなったヤフー株式会社に対するグーグルからの検索エンジン及び検索連動型広告システムの提供について、公正取引委員会は「現時点において独占禁止法上の措置を採るべく引き続き調査を行う必要はない」として、2010年12月2日に報道発表を行っている。

「①ヤフー株式会社は、自社にとって最適であると判断して技術提供を受けることとしたと認められる、②ヤフー株式会社とグーグルは、広告主の募集、入札等検索連動型広告の運営をそれぞれが独自に行うと認められる」などを、公正取引委員会はその判断の理由としている。そのうえで、「本件について引き続き注視し、独占禁止法に違反する疑いのある具体的事実に接した場合には、必要な調査を行うなど、厳正に対処」するそうだ。


玉井先生たちは「われわれの知的活動は決定的にネットの検索に依存するようになる」が、「多くが満足する検索結果を表示するには膨大な情報が必要であり、他者に先行する者が絶対的に有利である」からこそ、「独占を防止する強力な措置」について議論する必要がある主張している。公正取引委員会の判断は、玉井先生たちの懸念の一部に応えるものではあるが、危惧が解消されたわけではない。

一方で、玉井先生たちの主張には、いくつか疑問がある。できる限り幅を広げて多様な意見を検討するほうが正しい施策にたどり着けるから、ここでは反論を書き記そう。

確かに私たちはネットの検索に依存するようになっているが、必ずしもヤフーやグーグルが提供する検索サービスだけに依存しているわけではない。私たちは書籍を調べるときにはアマゾンで、ショッピングなら楽天市場で検索する。グルメ情報ならぐるなびを調べればよい。自分の住んでいる地域に固有の情報を調べるなら、地域ポータルの方が都合がよい。何でもヤフーやグーグルで検索するわけではないのである。このように品目や地域ごとに固有の検索サービスが生まれつつあることは、検索サービスの独占を議論する際に考慮すべきポイントである。

技術進歩も考慮すべきである。グルメ情報には、ランキングと口コミを提供する食べログがある。企業からの情報提供を主とするのではなく、個々の利用者からの情報を基にする、このようなサービスが最近は多い。そのようなサービスの中では大手のフェースブックこそがライバル、とアメリカ・ヤフーのCEOも発言している(SankeiBiz、『「好敵手はフェースブック」ヤフーCEO、株式の非公開化は否定』)。ヤフーやグーグルによる市場独占が問題であるとしても、それが問題であり続ける期間は思いのほか短いかもしれない。

検索キーをタイプすると、シソーラス(類語辞書)で検索単語が追加され、その後、グーグルのエンジンで検索が実行される、というのが検索サービスの手順である。ヤフーとグーグルはそれぞれ独自のシソーラスを持っているので、同じ検索キーをタイプしても同じ結果は得られない可能性がある。このことは公正取引委員会の発表にすでに記載されているが、それを踏まえても「ウェブ検索において90%超ものシェアが、単独の事業者に握られることとなりかねない」といえるかどうか、についても吟味が必要である。

ウェブ検索とネット社会の将来について国民的議論が必要である、ということに私も賛成である。この議論には、さまざまな分野の専門家が参加すべきである。技術者は法律の解釈を間違うかもしれないし、法律家は技術の詳細が理解できないかもしれないからだ。玉井先生たちの運動を含めて、今後、さまざまな場で議論が進むことが期待される。

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