規定が多い中国ビジネスの実態

小谷 まなぶ

 中国でビジネスを行っていると、ビジネス関する国が定めている規定の多さに驚く。中国は、企業規模によって、発行できる領収書の種類が違うのである。領収書の種類は、企業の売り上げ規模によって、ランク分けされている。


 年間の売上が80万人民元以上の企業を、『一般納税人』と呼び、年間売り上げが80万元に満たない企業は、『小規模納税人』と呼ばれる。
 一般納税人資格を有している企業は、増値税領収書の発行権を得ることができる。一般納税人資格の条件を満たせない企業は、普通領収書の発行権だけが与えられる。一般的にB TO B の流通ビジネスを中国国内で行う場合は、企業間取引で、増値税領収書の発行が条件とされることが多い。最近は、中国における日系企業間の取引でも、増値税領収書が発行できない企業とは、取引を行わないといわれるケースが増えてきている。
 新しく中国市場に参入してきた企業にとって、実は、この増値税領収書の発行条件が、高いハードルになっていることが多いのである。税務局が言う増値税の発行条件は、前にも述べたが『年間売り上げ80万元以上』と記されている。一般納税人資格の申請条件は、上海の税務局などに聞くと『資本金が50万元以上ある企業』且つ『年間売り上げの見込みが80万元を超えること』など言われる。企業の資本金の問題は、それだけの資金を払い込めばいいのだが、年間売り上げが、80万元以上を出さなければ、増値税領収書の発行権の申請さえできないのである。中国に進出して間もない企業にとって、いきなり初年度売上を80万元以上あげろといわれても、見込み客がない企業にとって、非常に厳しいものがある。また、企業間取引を行う際には、取引会社から、『取引条件は、増値税領収書の発行できることが条件です。』と取引条件を言われると、実績のない中国に進出してきて間もない企業にとって、増値税領収書が発行できないことで、B TO Bの取引に参入できないのである。
 今、多くの企業が、中国市場を狙って進出してきているが、この増値税領収書が発行できるかできないかで、悩んでいる企業は相当多い。増値税領収書の維持条件も、年間80万元以上の売上を続けることとなっており、80万元の売上を維持できなくなると、増値税領収書の発行権が剥奪されるのである。
 中国市場でビジネスをするには、ある程度の見込み客があることと、絶対に、毎年、売上を維持するだけの努力が必要になる。中国ビジネスに参入する企業は、一度、市場に参入して走り始めると、撤退するまで、走るのをやめることができないのである。走るのに疲れたということで、休憩すれば、ビジネスの維持条件を満たせなくなり、結果、撤退を余儀なくされる。
 中国ビジネスは、『能力あるものだけが、ビジネスを続けても良い。』という厳しい条件を企業に言い渡しているのである。

■小谷まなぶの中国貿易ビジネス奮闘記(ブログ)