民主党政権になってから、その最大の支持母体である日本労働組合総連合会(連合)をはじめとする労組の政治力が強まっている。今回の平成23年度税制改正大綱には彼らの強い影響力が垣間見える。
今回の税制改正では高額所得者狙い撃ちともいわれているように、年収1500万円以上では給与所得控除の見直しにより実質的に累進性が強まり増税となる。会社役員はさらにきびしい給与所得控除の削減が予定されている。筆者はまずここに政府が労組に大変気を使った形跡を読み取る。労組の幹部職員の年収は概ね1000万円~1500万円程度で、彼らが増税されないように「1500万円」という増税になる基準が決定されたのだろう。しかし労組の優遇はそれだけではなかった。
平成23年度税制改正大綱をよく読むと、給与所得控除が削られる一方で、「特定支出控除」が見直され、たとえば弁護士や会計士が資格を取得するのにかかった費用を控除に加えられるようになった。そしてP.44の特定支出控除の範囲拡大の項目に次のように書いてあった。
特定支出の範囲の拡大
職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費、職務に通常必要な交際費及び職業上の団体の経費(勤務必要経費)
(注)その年中に支出した勤務必要経費の金額の合計額が65 万円を超える場合には、65 万円を限度とします。
筆者はこの職業上の団体の経費というのが何のことかわからなかったのだが、自民党参議院議員の片山さつき氏のブログを読んで、これが何を意味しているのかわかった。つまりこのような団体は労組しかなく、組合員がその活動にかかった費用を所得から控除できるといっているのである。現政権はここまで労組に阿っていかなければいけないのかと思い暗澹たる気持ちになった。
今後はさらなる増税が続くと思われるが、強い政治力を持つ労組は、比較的高額所得者である幹部職員までも含めて増税を逃れられるようである。これではまさに「労働貴族」である。
アゴラの主催者である池田信夫氏も常々主張しているように、日本経済のボトルネックは硬直した労働市場であると筆者も考えている。しかし現政権でこのように強い政治力を持つ労組は、労働市場をさらに硬直化する政策を後押ししてきた。そのしわ寄せは新卒の求職者や非正規労働者のような既得権を持たない層に押し付けられてきたのだ。このままでは日本は労組に食いつぶされてしまうのではないかと筆者は危惧している。
労働組合は不要だ。なぜならば、ある労働組合員の利益を得るためには、他の労働者の犠牲が必要だからである。
ミルトン・フリードマン
コメント
今や労働組合幹部は組合員の搾取者でしかありません。農協と同じです。組合とは「一人はみんなのために、みんなは一人のために」三銃士の精神ですね。これがなくなったら単なる既得権擁護者であり組合員搾取者です。フリードマンの説のとおりです。
日本の上場企業はほとんどサラリーマン社長だし、株券は誰でも買えるわけですから、
「労組に守られて生産性以上の給与を貰っている人が、それ以外の人(下請け、非正規)から搾取している」
これが現在の格差問題の全てなんですよね。
フリードマンの言うとおりです。
> 職業上の団体の経費というのが何のことかわからなかった
学会もこれにはいるとおもいます。 米国でも所得税控除の項目です。