ご冗談でしょう- 余りにお粗末な検察検証報告

2010年12月31日 09:42

24日に発表された最高検による特捜部不祥事の検証結果は、検察組織全体の問題との捉え方より、大阪地検特捜部の特殊性を強調した「ご冗談でしょう」と言いたくなるお粗末な結論であった。意地悪く見ると、同じ組織内でチェックを繰り返す事を正当化しして増員を狙う、火事泥式検証ではないかと思える程の愚策である。これでは、原因解明には程遠く、とても評価に値しない。


検察に求められたのは、原点に戻る事であり、個人的な問題に歪曲したり、教育で解決出来るものではない。司法・裁判の原点を象徴するものとして、古来より使われて来た「正義の女神像」の意味する処をウイキペデイアに求めると、「『正義の女神像』が手に持つ天秤は正邪を測る『正義』を、剣は『力』を象徴し、『剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力』に過ぎず、法はそれを執行する力と両輪の関係にあることを表している。目隠しは彼女が前に立つ者の姿を見ないことを示し、貧富や権力の有無に関わらず万人に等しく適用されるべきとの『法の下の平等』の法理念を表す』とある。正義の女神像は、チェックアンドバランスと公正が司法の不可欠の要件である事を教えている。

国民の目に映る検察の現状は、「天秤を失い、目隠しを取り払った」女神像で、これでは「暴力と不公正」の象徴である。

如何に優れたシステムでも「チェックアンドバランス」無しには必ず腐敗する、と言う歴史的な教訓を忘れない欧米先進国家では、チェックアンドバランスの保全には特別の努力を怠らない。更に加えて、優れた調査能力を持ち、主権者である国民に直接訴える力を持つ、独立した報道機関の報道の自由を手厚く保護して、公権力の行き過ぎを防ぎ、基本的人権を守っている。

最近のニューヨークタイムズは、「Above the Law」と言うシリーズで、ロシアの司法制度の問題点を具体例を挙げて批判しているが、このシリーズを読んで、日本とロシアは、「透明性」に欠け、「チェックアンドバランスと独立した報道機関」が存在しない共通点を持った、巨大司法権力国家である事が判った。この点、ロシアに詳しく「国家の罠」を著して、日本の司法のあり方に疑問を呈した佐藤優氏の感想を聞いてみたい。

冤罪事件の背景にある、密室で検事の描く構図に合わせ自白、反省させるという「取り調べ観」は、検察は勿論、警察全体にも共通した問題である。つい最近、遺失物横領容疑で警察に任意同行された男性が容疑を否認すると「会社も令状を取って捜索するぞ」「手出さへんと思ったら大間違いやぞ、こら」と迫り、自白を強要したとされる事件が表沙汰になった。 男性は取り調べの最中の警部補らの怒鳴り声をICレコーダーで録音していたため、警部補らは処分を受ける事になったが、足をたたかれたなどの暴力行使の主張は地検に否定された。若し、男性が音声だけでなく、映像付きの録画をして居たら結果は異なったに違い無い。

この事でも判る通り、自白強要の温床である密室の取り調べは、特捜検事の特権ではなく、寧ろ「人権を無視しても成果を上げる」永年に亘る司法の悪習に違いない。

司法当局は、日本で独自に発達した供述調書重視の時代遅れな刑事訴訟手続への執着を捨て、先進諸国の潮流に合わせ、捜査の水準を高めていくべきである。その為には、全面可視化、被疑者の弁護士接見の自由化、証拠物の管理の徹底と被疑者側に予め提示しない証拠の裁判での不採用、長期勾留条件の厳格化、客観的証拠優先主義、公権力の情報漏洩による世論操作の禁止など、捜査も供述中心から物証など客観的な証拠と公正さを重視する改革をしなければならない。

一方、これだけ被疑者側に権利を与えては、犯罪の摘発に支障が出ると言う検察の懸念も無視できない。その為には、司法取引、おとり捜査、通信傍受など新たな捜査手法を導入し、容疑者に証拠を突き付けて矛盾を追及し、その全場面を録音録画する欧米型の原告、被告が当事者となって攻撃・防御を行う「弾劾的司法」への転換が必要である。

特捜部が対象とする所謂ホワイトカラークライムの捜査には、税務と検察の密接な協力は欠かせない。更に、税番号の導入や税申告の明確化など、社会その物の透明化も急務である。これが出来ていれば、自由党や新進党の解党時に行方不明となった、20億円を上回る政党助成金問題や、政治と金に絡む疑惑の多くも発生前に防げた筈である。 

最近の危機管理や情報管理の稚拙さや、仕分けで学んだ馬鹿らしさの横行を見ると、日本の行政システムは「消費期限」が切れて久しいと言う観を強くする。司法に限らず、チェックアンドバランスと透明性を重視した統治形態の導入は、喫緊の課題である。

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