ソーシャルメディアがインターネット・テクノロジーをブラックボックスに押し込めるのだけは勘弁だ - @ogawakazuhiro

2011年01月03日 01:27

僕はインターネットが、Webが好きです。
オープンで自由で破壊的かつ創造的だからです。

インターネットとはなにか。Webとはなにか。そのことを常に考えています。

現在、僕はソーシャルメディアマーケティングと呼ばれるようになった、インターネットを用いたマーケティングやブランディングを事業としています。だからインターネットに起きている様々なパワーシフトについてはよく理解しているし、それを商機としてとらえてもいます。

しかし、ソーシャルメディアがもたらしている、一つの問題点について、危惧を抱いています。


それは、インターネット・テクノロジーをブラックボックス化してしまいつつあることです。
最近、TwitterやFacebookが急激に社会認知されたことで、多くの学生や起業家予備軍がネットに再度関心を向け始めた事については歓迎してるのですが、彼らと会話をすると、インターネット・テクノロジーの基本的な知識があまりにも欠如していることに驚愕します。

Webがなんであるか、検索エンジンとはなにか、どういうメールとはなにか、そもそもインターネットとはどんな仕組みであるかなど、そういうことをほとんど知らない人が多いのです。
Web2.0というキーワードが流行したとき、僕の周りではそれを対話型メディアであるという側面のみを語る人が多かったけれど、僕はむしろテクノロジーの進化に目を向けるべきだという思いから『Web2.0Book』を記しました。しかし、現実的にはなぜWeb2.0というムーブメントが起き、それがどう進化していくかを「仕組み」の視点から理解しようとする人は少なかった。

Blogが登場し、HTMLを知らなくてもWebに情報を発信することができるようになりました。そして、TwitterやFacebookのおかげで、インターネットを使うということに、技術的な知識がなくても問題はなくなった。意地悪な言い方をすれば、ソーシャルメディアがビジネスになることで、お金になるかもしれないということで、浮ついた人が多く集まるようになってきたと僕は思っています。

それがなに?仕組みが分からなくたって使いこなせる、それがデジタルネイティブってもんだろ、と言いた若者も多いでしょう。

しかし、僕はそうは思わない。
少なくとも米国でインターネットビジネスに取り組んでいる若い起業家達は、間違いなく技術的背景を持っているからです。

僕は車がバイクが大好きです。
だからなぜ車が動くのか、エンジンとは何か、シャシーとは何か、そうした「仕組み」を理解することが愉しい。思うに、自動車メーカーにいて(事務職でもない限り)車が動く仕組みを、おおよそ分かっていない人はいないでしょう。レーサーであるならば、車の仕組みを熟知している人とそうでない人では速さに違いがでてくるはずです。
NASAにいて、ロケットエンジンとジェットエンジンの区別がつかない人もいない。宇宙飛行士ならなおさらです。
飛行機がなぜ飛ぶのかを説明できないキャビンアテンダントはいるかもしれませんが、優れたキャビンアテンダントなら、その仕組みを理解しているはずです。少なくともパイロットなら間違いなく、熟知している。

もちろん、一人のユーザーとしてはそれでいい。テクノロジーがブラックボックス化されて初めて、それを用いた商品が一般的に普及し始めるからです。
しかし、ネットビジネスをするなら、テクノロジーの話を避けて通ってはならない、と僕は思っています。

世の中をよくするのは、優れたテクノロジーと、正しい使い方なんです。

特に、日本人は、貿易立国であると同時に技術立国です。
しかし、基礎技術の研究や特許の取得件数においては世界一でありつづける日本も、その実践的な活用に、つまりテクノロジーの正しい使い方を事業に変えるということについては、この20年、日本人は世界の最前線にいるとはいえません。それはなぜか?

クチばっかり、評論ばかりの人が多くなったからです。
テクノロジーを理解し、それを正しい使い方へと導く、テクノロジーを使いこなすビジネスマンが出てこなくなったからです。

Sonyの盛田元会長のように、技術を商品に昇華させる、テクノロジーを愛するマーケターが少なくなったからだと僕は思っています。

日本には優秀なエンジニアはたくさんいます。テクノロジーを理解して、それを活かすことを考えるマーケターが少ないのが問題です。

ソーシャルメディアが僕たちに、たいした知識なくネットを使いこなせるようにしてくれたことは大きな福音です。しかし、それは同時に、僕たちをインターネットを支えるテクノロジーから遠ざける結果を生んでいます。

インターネットビジネスの世界では、日本は完全な輸入大国であり、米国に100%圧倒されています。今後の産業はすべからずネットに接続された世界になる。ということは、ライフラインを完璧に米国に握られているということです。

モバイルサービスにおいては先進国と自負していた日本のキャリアは、もはやiPhoneとAndroidの前に膝を屈しています。すべてのネット産業は、結局ローカルビジネスとして狭苦しい小さな市場に押さえ込まれるのでしょうか。それは近い将来、すべての産業の脆弱性につながっていくことになります。

僕たちは、いまこそ、ネットに限らず、さまざまな分野へのテクノロジーへの興味と理解を深めていく事を、強く意識するべき時期にいる。そう思います。

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