原宿そして隠田

2011年01月05日 07:57

東京で好きな街は隠田である。隠田の街は、旧渋谷川が今は埋め立てられ緑道に成って居て此の緑道の起点、渋谷高校辺りから表参道の大通りまでの約400メートルの緑道両脇と大通りを渡り、更に千駄木までの約400メートルの同様両脇である。川がそのまま緑道に成って居るので適度に蛇行しており何とは無く落ち着くのである。

表参道の大通りはご存じの方多いと思うが世界的ブランドが贅を尽くした店舗を構え、競っている。私が良く歩く緑道は準メインストリートと言ったら良いであろうか、世界的ブランドとまでは行かないがそこそこ名の通っているブランドが店舗を構えている。

そして街の何とも言えぬ空気を醸し出しているのは此のブランドの店舗の間にある多くの個性的で曰くありげな小さなお店の数々である。個性的な洋服屋、雑貨店、鞄屋、古着屋、そしてヘアカットの店。

更に、此の街を魅力的にしているのは緑道に交わる細い道の多さ、多様さである。所謂垂直の四つ角と言う物は殆ど見られず何気に蛇行した道が緑道にアクセスしていると言う趣である。

此の道を興味本位で辿ると、多くの路地に遭遇する事に成る。試しに行って見ると民家の間の人一人がやっと歩ける路地の抜けた所に突然古着屋や雑貨店が忽然と現れ驚かされる。

こう言う場所にお洒落で小さな洋服屋を発見したのだが、殆ど商品たる洋服を飾って居ない。極めて質素な店の作りでテーブルと椅子がありコーヒーも飲める様に成っており20代の清潔感ある女性が担当している。コーヒーの料金は@600円で此の場所と店にしては随分高額であり一度たりとも客が入ってるのを見た事が無いのである。しかし店は続いており閉店の様子は無い。ワンダーランドだなと心から思う。

隠田の良さはこの様な裏町の風情であるが、多くの若者や外国人観光局が訪れゆったりと街の散策を楽しんででる風景も独特の空気を醸成している。何処で知ったのか最近は中国人観光客も多いようだ。

一体何が人々を惹きつけるのであろう?街が、そして働く人々が発するメッセージだと思う。デザイナーは自分が最上と思う服のデザインをしパタンナーはそのデザインを最大限引き立てるべくパターン化(立体化)する。そして理想とする洋服に合う生地を仕入れ、縫い子が縫製する。此の町はこう言ったプロフェッショナル達が住み、働く街なのだ。

無論全ての人が洋服を買いに隠田にやって来る訳では無い。三越本店でしか買わないと言う裕福な女性も居るであろう。こう言う人は無難な事に価値を求める人種だと思う。要は三越なら間違い無いと。自分の目利きに自信が無いのかも知れない。

主に、ユニクロで購入すると言う人も居るだろう。コスパ重視だ。

近所の商店街で済ます人。鷹揚と言うか余り拘りの無い人であろう。

隠田を訪れる若者は明らかにこう言う人種とは違う。尖がった趣味と嗜好を持ち店から店へと回遊し商品を只管物色し続け、送り手のメッセージを読み続ける。
店は、売り手と買い手の真剣勝負の場所なのだ。

此処で働くのは自分の才能を只管信じ自らのセンスのみを頼りに道を切り開こうとする若者だけである。生活の苦しさや、先行きの見えない不安は定職に就くものに比べればずっと大きい筈だ。しかしそんなネガな闇に反比例して彼らの顔は見事に輝いている。矢張り、やりたい事が判っており、自分の道をしっかり歩いているからであろう。

彼らの頭には服が売れないからと言って行政に救済を求めたり、補助金をおねだりする様な発想は全く無い筈である。黙って静かに此の街を去って行くのだろう。それが彼らの矜持と言うより当たり前の事として捉えているのだ。

此の街には会社にしがみ付く中高年や終身雇用、年功序列に守られたサラリーマンは居ない。だから、路地を吹き渡る風も実に爽やかである。

山口 巌
ファーイーストコンサルティングファーム 代表取締役

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