民主党の自殺行為を憂う

山口 巌

皆さんは、日本のあるべき姿に就いて、如何にお考えであろうか。私の場合は極めてシンプルである。

「法の支配」の徹底。成熟した「2大政党」に拠る、穏便な権力の継承。そして、公正中立なジャーナリズムに拠る、「権力暴走の牽制」。

同盟国から信頼されるパートナーとしての、日米同盟の維持。日米同盟を安全保障基軸としての外交。

中国、中国に雁行する新興産業国との連携強化と経済果実の、確実な収穫。

ざっくり言ってしまえば、此の程度に過ぎ無い。

日本は「議員内閣制」を採用しているが、確かに此の制度、「2大政党制」が機能して、初めて真価を発揮する様に思う。嘗ての、自民党一党独裁の様に、政権与党が余りに長く権力に留まれば、必然、腐敗し、利益誘導の党に成り下がるからである。

一昨年の政権交代も、確か「国民の生活が第一」と交代可能な「2大政党制」の確立が、大きなテーマであり、国民もアメリカ、イギリスの如き「2大政党制」を期待した筈である。

語られ無く成った背景は、一体何であろうか。此処に来ての民主党の変節では無いか。菅首相や取り巻きの頭にあるのは、日本のあるべき姿では無く、自らの権力の維持しか無いのでは無いか。

結果、野合と罵倒されても致し方無い様な、数合わせありきの連立の策謀。

前首相を、平成の脱税王と手厳しく非難した与謝野氏の、重要閣僚としての招聘等、政党政治の規律順守が厳しく問われている。

与謝野議員に就いては、一昨年の選挙で、海江田大臣と戦い、敗北しており、その海江田大臣を押しのけての大臣就任だけに、「民意」の軽視の意味でも、現政権の業は深いと思う。

「2大政党制」を推進しようとした、小沢一郎議員の強制起訴問題も、暗い影を落としている事、間違い無いだろう。

仄聞する所、菅政権執行部は強制起訴を口実に、小沢議員に対し、離党勧告、引退勧告を予定してるとの話であるが、その向こうに、一体どの様な日本の姿をイメージしているのであろう。

目の上のたんこぶである、小沢議員を追い出したいとしか思えないのだが。それでは、民主党の「逆噴射」でしかない。当然、来たるべき将来は、失速そして墜落である。

此のタイミングで、一度、所謂、小沢議員の「政治と金」の問題の中身を再認識すべきでは無いだろうか。

早い話、政治資金収支報告書記入に於ける、「期ずれ」に過ぎない。取得した土地が農地であれば、商業地と異なり、地域農業委員会の許可取得が必要で、此の手続きに、時間がかかるケースも珍しくないそうである。

従って、検察・特捜が、公判維持はとても無理と判断し、起訴を見送ったのは、当たり前の話である。

黒幕が誰なのか、無論知る由も無いが、検察審査会に拠る強制起訴も奇妙な話である。

小沢議員失脚を狙った物である事、間違い無いが、結果、村木前厚生省局長同様、検察・特捜の荒唐無稽な捜査手法を焙りだし、結果検察解体への導線を張る結果に成るだけでは無いか。

或いは、菅現政権が如何に下劣な権力闘争を展開し、その中心人物の人格のお粗末さが浮かび上がるのでは無いか。

強制起訴の根拠は、石川衆議院議員と大久保前秘書の調書内容と聞いている。一方、石川議員に就いては2月7日の初公判で録音記録が証拠採用される事に成った。

検察に拠る、石川議員への、脅迫、脅しが国民の前に曝け出される事に成り、その卑劣さ、悪辣さに、多くの国民は嫌悪を感じる筈である。

大久保前秘書の調書内容に就いては、何とあの前田被告(元検事)が、かなりの部分を作成したそうである。

無論、検察は既に撤回済みとの事であるが。前田被告は個人として捜査した訳では無く、飽く迄、チームの一員として、組織の綱紀に従い、ミッションを熟した筈である。

何が言いたいかと言えば、他の検察官も、似たり寄ったりに違いないと言う事実である。

非常に残念な事であるが、刑事司法の闇は限りなく深い。従って、菅政権が国民の為にすべきは、刑事司法に内在する病巣の摘出と体質改善である。

此れを利用しての、政敵、小沢議員の政治的抹殺等では無い筈だし、此れを強行する事は国民に対する裏切りに他ならず、民主党としての自殺行為である事を、肝に銘ずべきと思うが。

コメント

  1. Dr. OK より:

    二大政党が日本においても政党政治の理想として、本格的に議論されるようになり久しいですが、今回の政権交代でも根付かなさそうな趨勢です。
    いったい何を対立軸にするのか。アメリカではリバタリアンと平等主義の対決がありますが日本は自民党も民主党も政治思想でまとまった政党ではなく、政局で集まった党なのでそれぞれの中でいろんな考えを雑多にもったひとの集まりです。政治思想で別れるならば再編が必要です。
    じゃあ、何の思想で分かれるのでしょうか?その議論も、マスコミが幼稚なのか、あるいはどこの国も日本程度に幼稚なマスコミで、それ以前に言論が幼稚なのか、国民が元々西洋的な政治思想に興味が薄いのか本格的に国民に意識されるには程遠い段階です。
    管首相はTPPをはじめとして、最近補正して現実路線をとりつつある様に思います。批判覚悟の与謝野さんの起用もそのように思います。「最小不幸社会」の様な怪しいイデオロギーも最近言いません。

  2. pacta より:

    なんというか、よほど小沢民主が好きなんですね、としか読めません。
    二大政党制が良いとして(個人的には三大でも良いと思いますが)、片割れが民主党である必然性は感じません。
    自民、みんなの二大政党制でも一向に構いませんよ。
    国民の大多数が小沢事件で、検察に憤っているとは寡聞にして知りませんが、裁判で無罪が確定したら小沢氏が名誉毀損で告訴して、検察の浄化を進めれば良いでしょう。
    アゴラって、黒幕がどうとかいう事実関係を確かめようのない陰謀論を議論するプラットフォームでしたっけ?

  3. 故郷求めて より:

    小沢擁護の変てこ論にはつきあう気はないですが、小沢が政治的に転落したら二大政党制に影がさすというのは違うでしょう。

    善し悪しは別として、二大政党制に移行できたのは衆議院の小選挙区のおかげでしょう。中選挙区で自民党どうしがしのぎを削る時代をやめ、政党でどっちかを選ばせる仕組みにしたからです。小沢個人がどうなろうともこのトレンドが変わるわけがない。

    それから、人々が二大政党制に嫌気がさしてるのは、自民党も改革できなければ民主党も政権担当能力がないことに気づいたからでしょう。現実にできあがった二大政党が、こんなにお粗末だから呆れているのであって、小沢の不人気は政権交代前から健在ですよ。

  4. souchoukan より:

    上に、小沢氏の無罪が確定してからとありますが、最高裁までいく可能性が高く、そうなると十年はかかります。政治生命は、それまでもちません。非現実的な言説です。
    例の検察審査会の半数近くが抽選で選んだにもかかわらず平均年齢が異様に若く過半数が女性というのは、確かに作為が噂されても仕方ないでしょう。
    小沢氏の問題は、他にまともに権力を生産できない政治家が見当たらないことに尽きます。要は、他の政治家が無能すぎるということです。昭和四十年代までの自民党とは大違いです。
    TPPは、早晩、多くの政治家に決断を迫るものとなるでしょう。一刻も早い政界再編を望みます。

  5. armedlovepower より:

    政府は国民が選んだ’結果’であり、その政府の行動に問題を感じるのであればその課題それぞれに新たな視点で自分の提案&提言&行動をしかるべきところで行い、未来を変えてゆけばいいはなしであって、今の政党の行動や人選を否定するだけであれば、それは単に自分のこれまでの行動を否定するという、なんだか提案や提言とは真逆のメッセージとなり、それを一般的なレッテルの一つである’陰謀論’と表現されても否定のしようがないですね。

    でも最近よく目に付く、総入れ替え選挙?の事象を見る限り、如何に選挙前に真面目に考えていない人が多いのかを見るとそれが普通なのかなって気がします。

  6. mtcrk より:

    山口さんの記事を楽しみにしていただけに、やや荒唐無稽な小沢擁護論には、少しがっかりしました。
    (某ブログに書かれていることが事実に近いのでは?)
    小沢さんは最初は不動産を政治資金で買ったと説明し、その後当時政治団体にもそのような資金がないことを指摘されるや、今度は銀行から借り入れたと語った。しかしそのカネは実は銀行から融資が実行される前に、本人が個人的に政治団体に出したものだった。
     そうであるなら、何故最初からそのように説明してこなかったのか?次々に説明を変えてきたのは非常に不自然です。
     小沢さんがその時に持っていた3億円からの自己資金でとりあえず購入し、購入した後に銀行から借り入れて購入したように見せかけ、そのカネをまた戻したということですが、このような複雑な手法を何故取ったかです。
     それはこの巨額なカネが出所の怪しい、所謂表ざたに出来ないゼネコンからの闇献金であった可能性が強い。
     その交渉に当たっていた小沢の秘書は、東京の高級料亭で接待を受け、最初は頑強に否定していたものの、自らカネをもらっていることを白状した。ただ、この件で刑事事件にならないのは、職務権限の問題が壁になっているからです。
    この巨額な不動産購入資金をどうやって調達したのか?最初は親の遺産などと言っていたが、かつてその受け継いだ遺産については明らかにしていたので、その言い訳が通用しないと見るや、今度はタンス預金と言い出した。(引用終わり)
    やましいところがないなら、国会で説明すればいいだけでしょう。記者クラブと戦ってくれるなら小沢さん応援もありかもしれませんが、独裁になったら、記者クラブともつるんで、恐怖政治になるのでは・・。