日本の職場は適応障害の温床である - 吉本光宏

2011年02月11日 00:10

適応障害(Adjustmentdisorder)とは、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)またはDSM-Ⅳ(精神障害の診断と統計の手引き)に登録されている病名である。

その定義は、社会や人間関係などが原因となったストレス因子を受けて3ヶ月以内に精神不調をきたすことである。死別はこれに含まれず、うつ病とは区別される。


症状は不眠、不安感、食欲不振、抑うつ気分など多彩であり、強く認める場合はそれらを早く和らげるために適量のお薬を処方し、場合によっては数カ月間の自宅休養が必要という診断書を発行して治療していく。

ストレス因子が除去されれば快方に向かう。私は仕事柄この様な患者さんに接する機会が多いのだが、定期通院をしてもらっている中で、ある時を境にして急激に回復していく方がいる。お薬を増0減したわけでもなく、診察時に特別なことを話したわけでもない。

それは本人が転職や退職を決断した時だ。患者さんはよく「ふっきれた」と言う。もし簡単に転職ができる職場であれば、精神科を受診する必要がなかったかもしれない。

日本の労働市場は海外に比べて硬直している。このため転職が難しい。転職が難しいということは、居づらい職場にストレスを感じながら、無理して順応していく必要がある。

そして発病すれば企業の生産性は大幅に落ちる。転職を簡単に可能にさせない日本の職場は、適応障害の種を巻いていると言っても過言ではない。

自殺はうつ病で多いが、適応障害でも自殺を試みることがある。例えば労働流動性の高いアメリカでの自殺率は日本よりはるかに低い。

上司の意思決定の遅さに憤りを感じたり、年功序列にあぐらを書いている年寄りはまさにその存在自体がストレス因子になり得る。こんな職場では若い正社員が発病することは十分にありえるだろう。転職しやすい及び受け入れやすい職場にするだけでも罹患する人は減っていく。何よりも経営者がこの事実を認識すべきだ。

精神科領域においては、職場がストレス因子となる適応障害をなくすことが今の日本に最も必要な処方箋である。
(吉本光宏 – 精神科医)

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