周波数オークションの目的は「法の支配」である

2011年02月11日 15:00

周波数オークションについて論理的に反対する意見は皆無ですが、「大人の事情」で反対する声は多い。たとえばソフトバンクは「900MHz帯でオークションをやると無料で免許を取った既存業者と不公平になる」と主張していますが、彼らが不公平だと思うなら応札しなければよい。免許費用を負担してでも参入したい新しい企業はいくらでもあります。


世の中に完全な制度設計はない。誰かにとって不満があるのは当たり前で、要は相対評価です。ソフトバンクは、電波官僚が密室でやる美人投票がオークションより公正だと思っているのでしょうか。2.5GHz帯の美人投票が不公正だと批判した彼らが、900MHz帯で「指定席」を取った(と思った)ら美人投票に賛成するというのは、あまりにも露骨なご都合主義です。

相撲の八百長にみられるように、日本社会にはフェアという規範がありません。長期的関係の中で「落とし所」をさぐるときには、お互いに損得なしの公平な分配を実現することが調整のキモです。しかし公正な競争と公平な分配は決定的に違います。前者がプレイヤーが誰であるかに依存しない事前の機会均等であるのに対して、後者はインサイダーの中での事後的な利益分配です。

美人投票がよくないのは、それが法の支配という近代社会の原則に反するからです。非人格的なルールを規範とし、特定の人を優遇も除外もしない法の支配は、市場原理が機能するための絶対条件です。競争にとってもっとも重要なのはシェアやコストではなく、新規参入が可能かどうかなのです。

電波政策でいえば、700MHz~1GHzで細切れになっている周波数を買い上げ、一括してオークションで割り当てればよい。5MHzとか10MHzとか小出しにするから、そのたびに政治的なロビイングが発生するのです。オークションでも既存業者のスロット数を制限すれば、独占は防げます。こんなことは制度設計のチューニングの問題で、オークション自体に反対する理由にはならない。

総務省は3GHz以上の帯域でオークションをやることを「検討する」そうですが、いつのことやらわからない。プラチナバンドと呼ばれるUHF帯で行なわなければ、オークションをやる意味はありません。オークションの目的は、国庫収入でもなければ業者にコストを負担させることでもなく、役所と既存業者による八百長を打破して日本社会に法の支配を徹底することです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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