財政破綻に備えた資産防衛を考える時なのか

2011年03月01日 15:26

財政破綻のシナリオが公然と語られ始めている。しかしながら、「ジャパンアズナンバーワン」など日本を賞賛する声にうぬぼれ、長年続いた「GDP世界第2位」といった経済的地位にあぐらをかき、「平和ボケ」した国民の間に危機感はいまだ浸透せず、むしろ財政破綻論を「オオカミ少年」と嘲笑する声も絶えない。

政治も、歳入の約4割を占める赤字国債の発行に必要な「公債特例法」を中心とした予算関連法案の否決が現実味を帯びても、なお政争に明け暮れ、危機感が微塵も感じられない。このようななか、財政破綻はもはや避けられない既成事実なのであろうか。


財政危機が表面化すれば、国債価格の下落(=金利上昇)を通じて、国債を大量に抱える金融機関への打撃は極めて大きく、金融恐慌とも呼べる大不況が日本に襲い掛かり、戦後最大の危機が到来するだろう。

そのなか、銀行、証券会社、生命保険会社の経営破綻時の預金者、投資家などの保護制度はどのようになっているかを調べてみた。

銀行は、「預金保険制度」により、当座預金や利息の付かない普通預金(決済用預金)は全額保護の対象となり、利息の付く普通預金や定期預金なども、預金者1人あたり1金融機関ごとに、元本1000万円までとその利息が保護される。しかし、この制度は、外貨預金などには適用されない。

また、日本国内に本店がある銀行や信用組合などの国内拠点には適用されるが、それら金融機関の海外支店、政府系金融機関、外国に本店がある銀行の在日支店には適用されない。さらに、これは「預金」を守るためのものなので、証券会社や保険会社にも適用されない。

証券会社を通じて購入した有価証券などの資産は、証券会社の資産とは別に「分別管理」されているため、証券会社が倒産しても、それが原因で資産が戻ってこないことはない。預り金などの信託を受けた信託銀行が倒産した場合でも、信託資産は信託法により銀行の資産とは区別されているため、投資家の資産は保護される。

さらに、万が一、顧客からの預り金を信託銀行へ信託する前に証券会社が倒産してしまったなど、何らかの事情で資産の返還が適切に行われない場合は、すべての証券会社が会員となっている「日本投資者保護基金」から1000万円を上限に補償がなされる。(ただし、財源は約500億円と少ない。)

一方、生命保険は、国内で事業を行うすべての生命保険会社が加入する「生命保険契約者保護機構」により、一定の契約者保護が図られるが、制度上、保障される保険の減額は避けられなくなるだろう。

伝統的な生命保険会社は、大量に国債を保有し、平均残存期間も長いため、国債価格が下落すれば、経営に大きな打撃となる。「生命保険契約者保護機構」の財源も、借入限度額が4600億円(プラス政府補助)と少ないため、資産規模が大きい生命保険会社が1社でも経営破綻するような事態になれば、財源の枯渇もありえる。財源が枯渇してしまえば、破綻した生命保険会社の受け皿さえなくなってしまうということもあるだろう。財政危機が表面化すれば、政府も破綻した生命保険会社を満足に救済できるだけの体力はない。

しかし、それにしても情けない。危機に備えた対策を考えないと駄目なほど、いつから日本人はこれほどまでに危機に疎くなり、堕落したのか。

財政破綻をきっかけに大改革が行われるのは間違いないため、財政破綻を歓迎する向きもある。また、投資機会と捉え、この機会を虎視眈々と狙う機関投資家や個人投資家もいるのだろう。しかし、コントロールの効かない激しいインフレを日本が襲ったのであれば、そこには悲惨な光景が広がっているはずだ。

激しいインフレにより現金(日本円)の価値は大幅に毀損する。大不況が訪れ、街には失業者・ホームレスがあふれ、治安も悪化し、自殺者は増加する。

あなたも他人事ではない。大切な資産だけでなく、大切な人を亡くしてしまうかもしれないのだ。仮に資産防衛に成功したとしても、悲惨な光景を目の前に幸せを感じられるか。このような世界をどうして歓迎できようか。

ギリシャやアイルランドなどが、まだ国家の体を成せるのは、国の経済規模が小さく、EUやIMFを中心に、世界各国が資金援助を出来ているからである。IMFの融資財源は1兆ドルに満たず、米国も1兆ドルを超える財政赤字が4年連続になろうとしているなか、“毎年”150兆円を超える国債を発行し続ける日本を救える機関や国はどこにも存在しない。

日本は、自助努力で立ち直るしか方法はないのだ。それが出来なければ、財政破綻からコントロールの効かない激しいインフレが到来する可能性がある。そこで待ち受ける世界は悲劇だ。そのような世界が嫌なのであれば、今、「痛み」を受け入れ、改革に邁進するしかない。

日本にはもう時間がないのだ。政策論は出尽くしている。足りないのは、国民の危機感の共有と政治の実行力だ。

井上悦義(アゴラ執筆メンバー)
ブログ:http://d.hatena.ne.jp/etsuyoshi/ Twitter:http://twitter.com/etsuyoshi

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