とうとう失われた20年が終わるかもしれない

2011年03月03日 01:23

最近、メディアは口を開けば日本の悪いことをいっている。日本経済は失われた20年といわれて久しい。政治はこれ以上ないほどの醜態を毎日国民に見せている。筆者は小泉政権で日本の失われた10年もとうとう終わるのかと思ったが、その後の自民党内閣は構造改革によって危うい立場に立たされていた一部の既得権益層に阿る形で、日本経済をまたダメな方向に巻き戻してしまった。既得権益にしがみつきゆっくりと業績を悪化させつつあったテレビ局を買収しようとしたライブドアに突然の強制捜査が入った。停滞する日本経済を株主資本主義の本来の力で浄化しつつあったファンド・マネジャーの村上氏もインサイダー取引の疑いで逮捕されてしまった。その後、マスメディアにより資本主義社会に不可欠な存在であるベンチャーやファンドが日本社会を脅かす悪者にされてしまった。本当は既得権益を握るほんの僅かな人たちを脅かすだけで、多くの日本人に多大な恩恵を与えるにも関わらず。


そして好調だった世界経済は、サブプライム・ローンを組み込んだ大量の金融商品がアメリカの住宅バブル崩壊とともに大暴落してしまい、世界的な金融危機を引き起こした。これが日本のアンチ市場、アンチ外国の経済評論家や様々な識者を大いに鼓舞することになった。そして2009年の衆院選では民主党が圧勝し、最初の内閣総理大臣に選ばれた鳩山由紀夫は次のように宣言したのだ。

「友愛」は、グローバル化する現代資本主義の行き過ぎを正し、伝統の中で培われてきた国民経済との調整を目指す理念と言えよう。それは、市場至上主義から国民の生活や安全を守る政策に転換し、共生の経済社会を建設することを意味する。

筆者は暗澹たる気持ちであった。そして日本は非常に危険な方向に走りだしているように感じた。市場経済を否定し、グローバリゼーションを否定しては、日本国民がひどく貧していくことは明らかだからだ。貧していくだけならまだましで、全体主義的な国家に突き進んでいくことさえありえた。

筆者のようなブロガーは細々とマスコミや政治家の危険な社会主義思想を正そうと言論活動を続けていた。アゴラのようなネット・メディアもそうである。鳩山政権の誕生で日本がますます社会主義へ傾倒していたとき、我々のような自由主義者はまだまだ傍流の存在だったと思う。

ところが今、こうして周りを見渡してみるとどうだろうか。筆者は世論はまた自由主義、市場主義に傾いてきたように感じる。世界経済が思いのほかはやく立ち直ってきた。日本の大企業は軒並み業績を急回復させた。そして誰も「友愛」などといわなくなり、各々が自らの職場に戻り、やるべき仕事をこなしている。そしてあの民主党までもが「平成の開国」を訴え、TPPに参加することをきっかけによりいっそう経済のグローバリゼーションを推し進めようとしている。

夜明け前が一番暗いといわれるが、今の日本はまさにそういうときなのかもしれない。ちょっとしたきっかけで日本は自ら変革しはじめる可能性がある。筆者は、そのひとつのきっかけは大きな政治力を持っている団塊の世代の退職だと思っている。

日本の年齢別人口分布(2010年)
日本の年齢別人口分布(2010年)
出所:総務省 統計局

日本で人口が多く、そして経済的にも豊かな団塊の世代が来年あたりからいっせいに定年退職しはじめる。彼らはその人口規模や経済力から大きな政治力を持っている。筆者は日本の経済成長を阻んでいる問題がふたつあると思っていて、それは労働市場と資本市場である。前者は過剰な解雇規制などにより、高い賃金を得ている中高年の正社員が大きな既得権を握っており、柔軟な労働力の移動や若年層の人的資本の形成を阻んでいる。後者は、様々な買収防衛策や持ち合い株、それに文化的な問題もあって、会社経営者が守られすぎている一方で、株主の権限が弱められていることである。端的にいって、日本ではダメな経営者がいる会社の株価が低迷していても、会社を買収してダメな経営者を首にして大胆なリストラを断行し、そして企業価値を引き上げるという、資本主義社会では当たり前のことが非常にやりにくいのである。

なぜこれほど日本の労働市場や資本市場は硬直的なのか。それは大きな政治力を握っている層が、その方が都合がいいからだ。つまり現在、企業で高い賃金を得ている団塊の世代の既得権益を守るために政治も動いているのである。ところが、あと数年もすると団塊の世代は多額の退職金を受け取り、年金生活に入る。つまり自らの資本を運用して生活しなければいけない資本家になるのだ。今までとは立場が180度違ってくる。資本家にとって、怠け者の労働者が保護される労働市場や、ダメな経営者を交代させられない資本市場は、非常に不合理に映るだろう。団塊の世代が企業を去った後、国内外の金融資本と日本国政府が一体となって、労働市場と資本市場の規制緩和と構造改革が一気に進む可能性が高いと、筆者は考えている。

ひょっとしたら今後10年、日本はチャンスに満ち溢れた国になるかもしれない。いよいよ失われた20年は終わる。

参考資料
2012年、日本は世界で最も洗練された自由市場経済の国に生まれ変わる、金融日記

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