福島原発事態の根源的原因 民主主義の未熟さがもたらした人災 ‐ 富樫顕大

2011年03月18日 11:03

今回の大地震の被害は「戦後最大の危機」という表現が適切であるほど甚大で深刻で悲惨だ。だが地震と津波は天災である反面、福島原発は違う。これは単純な天災というより人災だ。だから憤らざるをえない。今現在はまさに状況の収束に全力が尽くされるべきだが、ここでは今後この大地震からの「復興」において論議されねばならない政治的・社会的問題を提起したい。


地震大国日本での原発が危険であることは専門家の間では十分に指摘されていた。石橋克彦氏などは今回の事態をすでに90年代後半から予測し、「日本列島の地震現象を客観的に直視すれば日本の原発は耐震安全性と使用済み核燃料処理の両面で非常に厳しい状況にある」と警笛を鳴らしていたまた今回の福島原発の製造元であるアメリカのGEの設計は内部、アメリカで6~70年代からその弱さを指摘されていた

原発の縮小は国際社会の潮流でもあったのに日本は国際社会の潮流と反対の方向へ向かっていた。79年のスリーマイル島、86年のチェルノブイリ原発の事故を機に、世界の先進工業国は原子力エネルギーの凍結や削減を決め、原子炉の休止や閉鎖が相次いだ。逆に日本は、87年(チェルノブイリ事故の翌年)に稼動していた原子炉が32基だったのが2006年には55基に増えている。ドイツは2002年、「原発は予測不能な損害を生ずる決定的なリスクがあるため、誰でもがその責任を負うことができない」として原子力発電への利用を終了させることを決めた。 

そのような中で日本の原発推進が根本的に見直されなかったのはなぜか。

中央政府の政界・官僚エリートに対する原子力ロビーである。自民党の原子力政策が電気事業連合会、日本経団連(経団連の評議員会議長もしくは副議長は常に電力会社出身者であることからも経団連の中での電力会社の影響力も容易に想像がつく)らの組織から莫大な影響を受けていたことを示すいくつかの証拠を挙げることができる。

2010年予算で総額4889億円の原子力予算が成立されているがこれは国会審議から除かれている。また、東海地震と浜岡原発の事故を想定した場合、瀬尾健氏の算出では被爆によるガン死者の数が434-830万になるというのだが、その場合でも原子力損害賠償法は中部電力の負担は損害保険による300億円のみに定められている

原発推進の論理は表向き・公式のものと暗黙のものがある。

表向きの論理の一つは地球温暖化対策という名目であるが、「温暖化対策として原発依存度を高めるというのは皮相浅薄な発想であり、野放図な電力消費の抑制、自然エネルギーの活用拡大を含む分散型発電システムの構築をこそ目指すべき」(石橋克彦)という主張は論理的に明快な反論である。また、原発立地自治体側には「原発がなくなると第二の夕張になる」という論理があったろうがこれも地域の再生・自立を支援する法的・財政的枠組の整備が行われれば解決不可能な問題ではなかったはずだ。原発の経済合理性という主張はさらに疑わしい。アメリカの投資家連合Cerosは2010年7月の発表で原子力は投資として魅力が無いと結論づけた

以上に加え、暗黙の論理もあった。明文化された資料で実証するのは現時点では難しいが日本政府が原子力に固執した理由の一つとして、それを将来必要な時点で核兵器に転用する狙い、あるいは少なくともそれができるという暗黙のメッセージを外国に送ることで安保に活用するという計算もあったのではないかと思われる。加えて、科学技術大国としての過信と野心が政府にも経済界にも、そしておそらく一般国民にもあったのではなかろうか。

福島原発事態の根源的原因はなにか。

第一義的には政官財の癒着である。その原子力推進の「サークル」の利益と野望が民主的方法によって監視・抑制されることができず、今回の事態が発生した。だがさらにもう一歩踏み込むならば責任はその「サークル」だけではない。今の状況で日本国民を批判したくはないが、真剣に民主主義を考えず政官財の癒着、自民党の長期政権を許容したのは日本国民である。また、安保としての原子力、日本人のプライドとしての原子力という部分を暗黙の了解のように公の場での議論が無くなってしまったことが問題であった。立場・意見が対立しようと暗黙の了解で済ませてよい問題といけない問題がある。日常においては時に美徳にもなりうるそのようなやり方も重大な政治問題では悲劇を引き起こしうることを今回の事態は示した。

今はまだ深い悲しみ、原発の状況への対処が第一であるからこのようなことがそこまで議論される時期ではないかもしれない。だがもう少し時間がたって被災の精神的傷がいくらか癒えてきた時、そして福島原発の事態がある程度落ち着いた後になっても「福島原発事態の根源的原因」に関する議論が日本で起こらないとしたら、それは集団的な責任転嫁であり、また別の不幸、抑圧、苦しみを継続させ、もたらすだろう。

(富樫顕大  韓国・延世大学院社会学科修士課程)

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