東日本大震災から復興するための経済政策

2011年03月23日 23:11

今日で3・11に発生した東日本大震災から13日目である。東京都民の苦しみなど、直接の被災者とは比べようもないのだが、大震災の影響は首都圏にも確実に及んでいる。3・11の日、首都圏で働く多くの会社員は、高層ビルのエレベーターが止まり、電車が一斉に止まってしまったことから、高層階から階段で地上まで降り立ち、そして多くの者が何時間もかけて徒歩で帰宅した。しかしあの日は、直接は被害に合わなかった多くの東京都民は未曽有の大震災の中、どことなくこの非日常の中で浮き足立っており、ある種の躁状態だったような気がする。多くの首都圏の生活者が、明日から徐々に状況がよくなっていくことを当然のように仮定していた。


しかし現実はそうはならなかった。電力不足による計画停電、そして停電を免れた地域も節電のために自主的に電気の使用量を減らしている。多くの店舗が自主的に閉店したり、営業時間を短縮している。その結果、東京の夜は驚くほど暗くなった。3・11以前はあれほど人でにぎわっていた繁華街が閑散としている。多くの外国人が東京から去っていった。「買い占め」によりスーパーの商品棚の上には依然として疎らにポツン、ポツンとしか商品がない。ペットボトルの水などはほぼ購入が不可能になった。政府の発表する死者数は毎日毎日増え続けた。テレビが被災者たちの悲痛な叫びを毎日のように報じている。そして福島第一原発から漏れ出る放射能物質に関する状況は、常に政府の公式発表から悪い方、悪い方にぶれ続けた。

短期的には、日本経済への影響は相当に悪いことを覚悟しなければいけない。GDPの40%近くを稼ぎ出す首都圏の電力供給がこの様だからだ。発電所が破壊されてしまったのだからどうしようもない。東電に頑張ってもらう他なかろう。我々のような無力な首都圏の生活者は、いくばくかの寄付をして、被災者をひとりでも多く救うために被災地で文字通りの懸命の努力をしている救援部隊の方々の活躍を祈ろう。

ところでこういった状況から復興するために、日本国政府が取るべき経済政策は何だろうか? 驚くことに、何か特別のことは何も無いのだ。3・11以前と全く同じだ。多くの識者に議論され尽くし、結論が出ていることを粛々と実行していくだけなのである。すなわち、社会保障改革、税制改革、そして労働市場と資本市場改革である。

少子高齢化が進み、年金生活者と労働者の比率が急速に悪化していく。持続可能な社会保障制度を構築しなければいけない。そしていかに制度を変えようとも、負担が増えるか、給付が減るか、あるいはその両方であるという結論は変わらない。ひとつ確かなことは、今のままでは必ずいつか破綻するということだ。日本の政治家はそのことに真正面から取り組まなければいけない。

日本の財政もこのままいけば、政府債務が際限なく膨張していく発散過程に入ることは間違いない。国債の発行というのは、徴税の先延ばしと同義だ。逆説的だが、将来、政府が必ず国民から税金を取り返済するという信用があるからこそ国債を発行できるのである。社会保障費の削減と同時に、ある程度の増税も避けられない。そしてどのように税制を変える「べき」かというのもすでに決まっている。それは法人税と所得税の最高税率をアジア諸国並に下げて、消費税を上げるということだ。現在、国家を富ますものは、好むと好まざるとに関わらず企業なのである。より多くの優良企業を惹きつけるためには法人税を下げて、重要なビジネスの意思決定者の所得税を下げるしかないのである。そして広く薄く取れる消費税で税収を確保する。

最後は労働市場と資本市場をセットで改革する。行き過ぎた解雇規制を緩和して、雇用の流動性を確保する。それによって成長産業に貴重な労働力を送り込む。そして株主の権利を法律通りに重視し、経営資源をうまく運用できない経営者や企業を、ダイナミックな企業買収によって再編する。株主の力による産業構造の変革が、日本の潜在成長率を引き上げるために極めて重要なのである。

今までさんざん議論されてきたこれらの改革は3・11以降ますます重要になった、と筆者は思う。なぜなら被災によって多くを失った日本は、今後ますます経済資源を効率的に運用していかなくてはいけないからだ。

参考資料
首都圏の停電という日本経済の思わぬ伏兵、藤沢数希、アゴラ
菅政権へのみっつのお願い、藤沢数希、アゴラ

所得税はフラット10%にして大幅な税収アップ、藤沢数希、アゴラ
とうとう失われた20年が終わるかもしれない、藤沢数希、アゴラ

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑