福島県産農産物の風評被害への対抗法

井上 晃宏

 原発の放射能漏れは、健康被害が出るほどではないことが確認されたにもかかわらず、福島の農産物は出荷停止状態で、農業そのものが壊滅しそうである。
 この原因は、風評被害だ。日本の消費者にとって、食料は、その日の気分で選り好みができる程度に安価な買い物なので、イメージが重要である。流通業者は、あやふやな危険性が報道されただけで、イメージ低下を恐れて、取り扱いそのものをやめてしまう。


 かつて、店頭の食品に毒物が混入されたために、小売店に取り扱いを止められてしまい、存亡の危機に直面した江崎グリコは、社員自らが店頭に立ち、グリコ製品の袋詰めを1000円で販売するという奇策に出た。世論の同情を味方にしたのである。
 同じことを福島県産農産物でも行えばいいと思う。
 まず、農産物から検出される放射能は、健康被害がない程度であるという「お墨付き」が必要だ。それは政府が行うしかない。その上で、福島県産農産物を、福島ブランドをつけて、専用の販売コーナーで売るのである。販売に協力する小売業者には、政府補助を行う。
 確実に、世論は味方になる。福島ブランドの農産物は売れる。イメージの回復が目的だから、この措置は、数ヶ月でよい。大して金はかからない。
 このまま、福島およびその周辺の農産物(場合によっては水産物)の生産を止めてしまって、生産者の生活保障を行うよりは、ずっとコストが安いと思うが、どうだろうか。

コメント

  1. worldcomw より:

    一つだけ注意すべき点があります。
    小規模飲食店などが買って、説明のないまま客に提供するリスクです。
    割安にすればするほど、そのリスクが増します。
    何か回避策があるでしょうか。

  2. kenta_f0219 より:

    worldcomwさんは「産地を隠してあるいは偽って」販売されるリスクを指摘していますが、そもそも健康に害がないのであれば産地を偽るあるいは隠す理由は「風評被害」以外にはありません。ならば、根本的な問題としては「福島・茨城の産品が安全である」ことが消費者の心理に納得されれば良いのではと思います。

    ここは先例に倣って菅首相、枝野官房長官、海江田経産相、レンホウ節電大臣が福島・茨城県産食材ランチを食べて見せれば良いのではないだろうか。カイワレでの成功を再現出来ればしめたものだ。

  3. soyru77 より:

    すべては原発からの放射線放出が終息してからのお話です。
    終息しない限り風評もなにもありません。汚染が広がりつつあるという現実があるだけです。

    原発が終息すれば半減期に従い風評も終息に向かいます。
    今の状態で10円で売られていたとしても、0歳の子供と母乳を与える妻に他に選択肢がある中でわざわざ選んでまで食べさせることはしません。

    原発が終息もしない状態で安全宣言など出せるわけがありません。土壌への蓄積その後の農産物への吸収の影響、すべてがわかっているなら安全宣言も出せるでしょうが。なにもかもが手探りな事態。世論はもちろん同情しているでしょう。

  4. srx600_2 より:

    ヨウ素131Iの半減期はわずか8日ですが、セシウム137に至っては30年。福島の農業はもうお終いですよ。

    茨城・栃木・群馬も長期の影響を避けられない。神奈川県産の原乳、ホウレンソウからも基準を下回る放射性物質が検出された。だが今回検出された2分の1から3分の1程度の値でも、通常時の輸入品では税関で止められるレベルである。マスコミがこの事実を広く公表するとしたら、東京都の水道水と同じくパニック状態になる。

    もはや政府の安全宣言など誰も信用しない。疑心暗鬼の状態では、少しでも危険を排除しようとするのが人間の性だ。

  5. kiokada より:

    まったく同感。

    「放射能あり(健康に影響なし)」とでもラベルをつけて売ればいい。災害援助として若干やすく売り出せば買いやすい。

    世間にはいろいろな人がいる。理性的じゃない社会の反応を苦々しく思っている人は大勢いるはず。そういった人は求めて購入するんじゃないかと思う。

  6. yuki3maro3 より:

    あまりに机上の空論では。
    私は郡山市在住ですが、現在、多くの福島県民は覚悟を固めているのではないかと思います。もちろん数多くある農協の直売所の経営は壊滅状態になるでしょう。
    かといって、農家の縁戚関係にある人たちは、JAに出荷できなくても縁戚関係での消費を始めるでしょう。
    多くの人は未だ洗えば大丈夫、若しくは今更どこにもいけないから、この地に留まり、与えられた運命を享受しているのだと思います。
    これ以上の被害を食い止めるためにも地産地消、福島県内での自給自足を行っていくしか、無いのだと思います。無論、福島県は未来永劫、放射能に汚染された地、汚染された人種というレッテルを貼られるのでしょうが。

  7. minami2680 より:

    風評被害が原因ではない。原発から放射能が漏れていることが原因だ。したがって原発事故が収束しない限り、対策も政策もない。放射能で汚染されている産地の野菜を食べない、売らないのは当たり前。政府は「基準値を上回っているが、健康には問題ない。」と言っているが、それも疑問だ。
     そもそも、原発事故によって放射能による汚染のデータがどのくらいあるのか?今回の事故は、大学の研究室内での実験とは違うのだ。チェルノブイリ、スリーマイル事故の2つの事故で判っていることもあるだろうが、判らなかったことの方は無視されている。
     原発事故での影響をデータで分析し科学的にそれに対応するには、経験値が少なすぎるのだ。今回の惨事で原子力事故の経験値は上がり、原子力が科学的に進歩するだろう。しかし、その進歩が大勢の人間の命と財産を犠牲にするのならば、そんな進歩なんていらない。
     

  8. DUMBO-onsurvey より:

    農産物に放射能が基準以下でも含まれているという事実がある限り、風評被害とはいえないのでは?
    グリコの直接販売のチョコには毒は全く入っていなかった。カイワレにはO157菌はいなかった。

    健康被害がないという説明を信じられるか否か、全く気にしないのか買う側の判断によるのでは。

    レントゲン1回分だからといっても、医者はレントゲンは子供はなるべく受けないに越したことはないと言っていた。基準以下でも放射能が検出されたものは口にしないに越したことはない。他に選択肢があれば、そちらを選ぶ人間のほうが多いし、それを批判できるものではないと思う。