いま露呈した電子書籍販売店の選び方

2011年03月31日 00:50

東日本大震災からすでに3週間が経とうとしている。その間、自分の事業テリトリーである出版について、電子書籍の動向ともども周りの動きを探っていたのだが、あまり明るい話はない。紙の書籍の場合、紙やインク不足、印刷工場の被災などで、いままで通りに雑誌や書籍の出版ができない。また、出版社の企画会議に出席しても、明るい企画はことごとく否定され、なにを出版すればよいのか考えあぐねているのが実情である。

また、電子書籍にしても、今回の震災で、その問題点が浮き彫りになった。当然のことながら電気がなければ、端末の充電ができないので読むことができない。しかし紙の書籍であっても照明がなければ、夜、読むことは難しい。問題は、電子書籍のメリットを享受できるか否かということである。もちろんいろいろなメリットもあり、災害時に利用できる実用的な電子書籍を無料にして配布している出版社もある。スマートフォンなど携帯電話があれば読むことができる。

問題は今回のような震災で一度に多くの蔵書を紛失した場合だ。紙の書籍は当然のことながら再購入が必要になる。電子書籍の場合、現状、電子書籍販売書店によっては再購入が必要な書店とそうでない書店とが存在している。アップルのアップストアでは、一度購入していれば電子書籍の再ダウンロードが可能だ。アマゾンKindleでは、もともとクラウド型のサービスなので、いろいろな端末で読むことが可能で、端末をなくしても、ID&パスワードさえあれば、amazon.comが消滅するようなよほど大きな事故でもない限り、蔵書は守られると言ってもいいだろう。仕様や規約の変更などあれば別だが、多くのユーザーを抱えるamazon.comが、ユーザーにとって大きな不利益を被る変更をするとは考えられない。

他方、パピレスボイジャー書店など日本の電子書店の多くは、期間限定での再ダウンロードとなっている。期間はそれぞれだが、たとえ1年間に限って再ダウンロードができても1年間はあっと言う間に過ぎていき、忘れたころにデータを紛失したり、ハードディスクがクラッシュしたりした場合、再度購入しなければならなくなる。イーブックイニシアティブジャパンでは、トランクルームというクラウド型の本棚サービスがあるが、5年間、コンテンツの購入やトランクルームへのアップロードやダウンロードをしないとコンテンツを破棄できる、と規約にある。

このように、いままであまり問題にならなかったことが、ここにきて問題点として浮上してきているわけだ。万一のことを考えても仕方がないともいえるが、消費者にとっては気になることでもある。そう考えると端末は古くなっていくものなので、たとえば蔵書を子どもに引き継ぎたくても、電子書籍ではそれができない可能性が高い。再ダウンロードできないということは、古くなった端末からデータを移行できなければ、再度購入が必要になる。故障の場合も同様だ。紙の書籍であれば子どもに引き継げるので、それができないというのも寂しい。

以上のことから、同じ書籍が複数の電子書店から販売されている場合、自由に利用できるクラウド型本棚を提供しているか、無期限に再ダウンロードが無料である電子書店を選んだほうが無難であろう。もちろん廃業する可能性が極小の書店をえらぶことは言うまでもない。(文責:田代真人)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑