「通貨の信認を毀損しよう」と呼びかける民主党議員

2011年04月02日 11:06

国債の日銀引き受けを求める議論が論理的に成り立たないことは先日の記事でも指摘しましたが、民主党の震災対策の一環として検討されているようです。与謝野馨氏などが強く反対しているので実現することはないでしょうが、民主党議員の知能程度を知るにはいい素材でしょう。


毎日新聞によると、その理由は「日銀が直接引き受ければ市場での国債の需給悪化を招かないとの見方のほか、日銀が国債を引き受けた分、市中に出回るお金の量が増え、デフレ対策としても効果がある」からだそうですが、笑止千万というしかない。

まず「日銀が引き受ければ市場の需給が悪化しない」というのは逆です。政府が「日銀が引き受けないと市場で消化できない」と宣言することによって長期金利は暴騰し、借換債も含めて市中消化が不可能になるでしょう。「デフレ対策としても効果がある」というのもナンセンスで、日銀が通常のオペレーションで市中から買っても資金供給量は同じです。

したがって論理的に考えると、日銀が直接引き受ける理由は、故意に通貨の信認を毀損することしかない。金子洋一参院議員は、そういう政策提言をもって「党内に根回し」しているそうです。

国債の日銀引き受けの副作用を過剰に気にする論調が多いが、彼らが主張するところの「日銀券の信任」が一時的に落ち、その結果、マイルドなインフレや円安を招くが、これは現在の円高デフレ下ではむしろ望ましい

つまり円の信認をなくすことが(彼が事務局長をつとめる)デフレ脱却議連の目的らしいのですが、その結果が「マイルドなインフレ」ですむ保証はどこにあるのでしょうか。

通貨が信認を失うと実物資産や外貨への資産逃避が起こり、インフレと円安が起こります。このとき「2%のインフレで止めればいい」という人がいるが、通常の金融政策でインフレを止める手段は金利の引き上げしかない。財政インフレの場合は長期金利が暴騰するので、金利の引き上げでインフレを止めることはできません。

政府がデフォルトを宣言しないかぎり通貨供給を止めることはできないので、インフレ・スパイラルは止まらない。財政破綻でハイパーインフレになるのは途上国ではありふれた事件ですが、ラインハート=ロゴフも指摘するように、このタイプのインフレはデフォルト宣言で政権が倒れるまで止まらない。インフレの原因が金融市場ではなく、政権の信頼喪失にあるからです。

与党の議員がみずから政府の信頼をなくそうというのだから、彼のいう通りやればインフレは起こるでしょう。インフレだけが目的なら起こすのは簡単ですが、それを適度なレベルで止めることは別の問題です。いくら分厚い壁でも、クレーンでたたき壊せば壊れる。そのとき壁が2%壊れた状態で止めることができると信じているのは、非線形の現象のふるまいを知らない愚かな政治家だけです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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