東京電力をどうするか?

2011年04月23日 14:18

東京電力をどうするか?に就いては、結論から言ってしまえば発電送電部門に2分割した上での国有化しかないと思う。

肝心な点は、電力の安定供給の確保と、明瞭な責任所在の伴う簡潔且つ短期で賠償業務を終了さす事の可能なスキーム構築と考える。

電力の安定供給を議論する上で、先ず最初に決めねばならないのは原発継続の可否である。これはこの時期厄介な問題であり、恐らく国論を二分する議論となる筈である。

菅首相は既に原発増発の凍結とか、何時もの思い付きで言っているが、中東の地政学的リスクの高まりに多少の知見があれば決して出来ないコメントである。

個人的には原発は継続すべきと考えている。

福島原発事故の犯人は、東京電力、経済産業省そして政府の説明を聞く限り津波と言う事になっている。だが本当だろうか?

原発問題の本質を考えるで既に指摘した通り、非常用電源設備をもっと高い場所に設置するとか、アドオンで緊急用バッテリーを高い所に準備しておれば、今回の事故はなかった筈である。従って、今回の事故が意味するのは原発の本質的リスクではなく、設計ミスに起因する膨大な損害と言う事になる。

日本人は今少し冷静になり、先ず発電所非常用電源に於ける設計思想が、妥当か、否かを吟味すべきである。原発継続の是非を議論するのは、飽く迄その後でなければならない。

とは言え、原発の新設を受け入れる地域があるとは思えず、原発新設による電力の供給はは当分不可能であろう。

原発の抜けた穴の一部は、化石燃料を電源とする発電で補うとしても、大部分は節電スマートグリッドによる賢い電力の分配と、家庭、工場そしてゴミ焼却工場からの逆潮流電流の受け入れで賄うしかない

従って、発電送電部門2分割はマストと言うのが私の主張である。物の順序としてはスマートグリッド導入が喫緊の東京電力で先ず実証し、成功パッターンを各地の電力会社に移築してはどうかと思う。

次は補償の問題である。補償総額が数兆円に達し、東京電力の経営破綻もあり得るとの事である。

大事な事は、先ず東京電力が補償を行い経営破綻が確実となれば、現行のスキーム、会社更生法を適応すべきであり、菅首相が如何にもやりそうな、思い付きで、その場凌ぎの特別な破綻処理スキームには決して手を出してはいけないと言う事である。

現行のスキームで処理して一体何が問題と言うのだろうか?

被災地の瓦礫の処理も、下水道の復旧も滞り、仮設住宅の建設も遅れに遅れている事のA級戦犯である官邸は補償に関し下記の如き最悪のスキームを提出した。

賠償スキーム

以前官邸から本来有り得ない、下記コメントが出た時に、何れこういう愚行をやるのではと危惧していたが現実のものとなってしまった。

「東電の株主は約100万人で、その多くが銀行預金と同様の安全運用先として東電株を保有していた個人株主であることを重視せざるをえない」

官邸は市場とか市場に軸足を置く市場主義経済で日本は食って行かねばならないと言う事をまるで理解しておらず、唖然とするしかない。国民のモラルハザードを心配するが、官邸はモラルハザーそのものである。

それでは、このスキームの一体何処が問題なのであろうか?

先ず目につくのは責任の所在が曖昧な点である。賠償の実務を担当する東京電力と賠償の原資を調達、供与する賠償機構の2重構造であり、結果東京電力は親方日の丸で言われた通り支払し(自分の懐は痛まないので)、一方、賠償機構は東京電力の求めに応じ幾らでも資金の提供に応じると思う。

結果、賠償交渉は長期化し、金額も天文学的に膨張する事を危惧する。賠償機構の理事長は多分経済産業省からの天下りであろうが、従来同様2年毎の渡りで入れ替わり、問題が表面化した時には結果誰も責任を取らない。

そもそも、かかるスキームで東京電力や賠償機構にあるべきガバナンスを求める事難しく結果税金をどぶに捨てる事になる。

次に問題なのは、他の電力会社に負担金を求める事である。電力会社とは言え株式市場に上場しており、こんな事をすれば株主の利益が大きく損なわれ、結果株式市場を殺す事になるのではないか?株式市場が機能不全となれば企業の資金調達が難しくなり、成長にブレーキがかかる。当然、失業問題とか悪化する筈である。

大体、私の個人的判断であるが、東京電力の設計ミスに起因する賠償の為に何故、他の電力会社が負担金を払わねばならないのか?一体どういうロジックでこうなるのか政府は説明すべきである。

結論を繰り返せば、こういう鵺の如き奇怪なスキームは必ず失敗する。従って、先ず東京電力が可能な限り保障を行うべきである。当然の事ながら株主は100%の減資を覚悟せねばならない。債券保有者も同様である。融資銀行も東京電力への融資は不良債権扱いに変更し、処理を強いられる事になる。

ここまでやれば、東京電力は実質企業価値ゼロであり、発電送電部門に2分割した上での国有化しかないと思う。補償は勿論東京電力に代り政府が担当する。

電力の安定供給はマストだが、これを人質に東京電力含め、全てを温存する様な愚行を行えば、間違いなく失われた20年の後に、死に至る10年を迎える事確実である。ここが日本の正念場ではないか?

山口 巌

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