東海地震は本当に来るのか

2011年05月11日 10:47

prediction-map-lg浜岡原発の運転を止める理由として、菅首相は「今後30年以内に震度6以上の地震が来る確率は87%」という地震調査研究推進本部のデータ(参考値)をあげ、「危険が切迫している」と強調した。もし政府が、本当に「まもなく東海地震が来る」と判断したのなら、事は重大である。

政府の被害想定によれば、最悪の場合、死者は9200人に達する。放射能による死者の出ていない福島原発事故より3万人近い死者の出た津波のほうが重大であるように、静岡県でも津波で死ぬ人のほうが原発事故よりはるかに多いだろう。原発を止めた以上は、静岡県全域に15mの防潮堤を建設しなければ辻褄が合わない。


そもそも東海地震は、本当に来るのだろうか。これは東大の石橋克彦氏が1976年に提唱した説で、その基本的な考え方は「東海地震は1944年の東南海地震の割れ残りなので、数年以内に起こる」というものだ。一般的な可能性ではなく、すぐにも大地震が起こるという説だったため、これを根拠にして1978年に大規模地震対策特別措置法が制定された。

しかし石橋氏自身も認めるように、その後30年以上も何も起こらなかったのだから、この「割れ残り」説は明らかに誤りである。一般論としてはプレートの境界で大きな地震が起こりやすいことは事実で、東日本大震災もプレート型地震だったが、この種の地震は予知が困難である。

今回の震災も、政府はまったく予知できなかった。片山さつき氏も指摘するように、今年1月に国の予測した地震確率は福島第一原発で0.0%、第二原発で0.6%だった。東大のロバート・ゲラ-氏は、『ネイチャー』で次のように指摘している:

しばらくの間大きな地震が発生していない「地震空白域」では大地震の発生が差し迫っている、という地震空白域仮説は実証されなかった。何万年もしくはそれ以上の時間スケールにおいて、地震や非地震の総すべり量とプレート間の相対運動の量は一致しなければならない。しかし、現在では、このプロセスは、定期的でも周期的でもないことが判明しており、3月11日の地震はこれを確認させるものであった。

過去30年以上の間、政府の報道官および推進本部(またその設立前の関連組織)に所属する研究者は、「東海地震」という単語を頻繁に使ってきた。その結果、時計が時を刻むように、あらかじめ決まっているマグニチュード8の地震が、近い将来東海地域を確実に襲うと国民に思い込ませてしまった。「東海地震」および「東南海地震」と「南海地震」という言葉は、現実として起こっていない以上、使用すべきでない。

つまり最新の科学の成果によれば、東海地震そのものが幻想かもしれないのだ。少なくとも、それが他の地域より切迫しているとする科学的根拠は(石橋氏も認めるように)まったくない。このような疑問の多い学説にもとづいて、政府が「地震の危険が切迫している」と宣言するのは軽率であり、それにともなう対策なしに無責任な「要請」を行なうべきではない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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