やばいぞアメリカ(2)―日本に追い越され始めたインフラ

2011年06月02日 10:00

バブル破裂の痛手から未だ癒えない日本を襲ったリーマンショックは、日本から自信と目標を奪って仕舞いました。

とは言え、1965年度限りの臨時特別措置として戦後初めて発行した2590億円の赤字国債を、1000兆円近い残高にまで膨らませた行政の非効率を許して来たおおらかな日本国民なら、この危機もケセラセラで解決するに違いありません。


今でこそ、世界有数の債権保有国になった日本ですが、黒部ダム、東海道新幹線、東名高速などのインフラ建設を世銀借款に頼って来た日本は、世界銀行の最大の借り入れ国であった時代もあったのです。それにしても、その借金を返し終えた1990年頃から、日本の自信喪失が始まったのは、対外債務の返済と共に危機意識を無くした事が関係しているのでしょうか?

福島原発騒動で東電の存続が問題になっていますが、1956年に関西電力が着工した黒部ダムは、当時の関電の資本金の5倍超の大工事(現在の東京電力の資本金規模に直すと、5兆円規模)で、現在の東電が自力で福島原発処理をする事も不可能とは思えません。問題は、当時の関電の様な経営者が現在の東電には居ない事です。

この様に書いて来ると、日本だけが「やばい」様にに思うかも知れませんが、「やばい」のは日本ばかりではありません。一人勝ちと思われている米国も、日本以上に深刻な問題を抱えた「やばい」状態です。
2004年のハリケーンカトリーナ災害では、初期出動の誤りでニューオルリーンズ市内の陸上面積の8割が水没する程の指導層の無能ぶりや、暴動、略奪を起こした一部市民のモラルの低さと比べれば、日本は未だ救われます。

組織の興亡には常に「人」「物」「金」の三つが重要な役割りを果たして来ましたが、米国民の勤勉さに衰えが見られるだけでなく、インフラと言う「物」の面でも日本に追い越されつつあります。

アメリカ大陸を空路で横断した人なら、眼下に広がる壮大な道路網には誰しも驚かされます。若い国とは言え、アメリカのインフラが古くから整備されて来た事を如実に物語る風景です。

50年前の米国は戦争被害が無かった事もあり、道路は勿論の事、完備した冷暖房や水洗施設、空港、港湾、公園、学校、病院、整った文化施設などのインフラの殆どが、永遠に追いつけないと思える程立派な物でした。今では、日本とは比較にならない程ひどいアメリカの鉄道でさえ、当時は米国の方が遥かに乗り心地が良かった位です。

処が、最近のNYなど東北部の大都市近郊の道路の整備は、一昔前の日本の道路並の酷さになって仕舞いました。ニューヨーク、シカゴ、ボストン、フィラデルフィア等の古い都市では、保守整備を怠ったため、水道水の10%近くが漏水し、明治初期に埋設された地下の蒸気管システムが老朽化により爆発する事故も起き出しています。

福島原発事故で計画停電が問題になっていますが、米国では事故も無いのに、北東部に住む五千万人以上の住民を巻き込んだ大停電も一再ならず起き、3回の大停電にすべて巻き込まれた私には忘れられない経験でした。

2010年にはミシシッピー川にかかる幹線高速道路の橋が崩落し、走行していた60台以上の車が川に転落する事故も起きました。この橋と同じような危険性がある橋が全米には7万3000箇所以上あると言う連邦政府の調査結果も発表されている位ですから、この事故が一過性とは思えません。

それだけではありません。全米では安全性が確保できないダムの数も、修復可能件数を凌ぐ勢いで増えており、幾つかの決壊事故が起きています。1936年に竣工したフーバーダムの貯水量は、2,500基ある日本のダム貯水量の合計250億トンを遥かに上回る400億トンも有り、日本最大の湖である琵琶湖をも上回る巨大な水瓶です。このフーバーダムが決壊した場合の惨劇は想像も出来ません。

アメリカでも、民間の寄付を大資金源とする美術館、博物館、音楽堂、図書館、スポーツ施設等の文化施設や 高度医療施設、私立の大学,中高校などのレベルの高さは、依然として日本の遠く及ぶ処ではありませんが、多くの公立病院や大都会の公立学校の凋落は惨めなものです。

これ等の事象は、目の前の豊かさを追求してきた米国が、基本的なインフラに十分投資してこなかった事を物語っており、最先端技術を誇る筈のアメリカも、インフラ整備の面では日本に追い越されつつある「やばいぞアメリカ」状態です。

これまで、現象面からアメリカの問題点を見て来ましたが、アメリカの真の危機は、物や人の劣化ではなく、「建国の理念」が国を支配する伝統が薄れ、「金」に支配されるアメリカに変貌しつつある事です。この点については、次回の「やばいぞアメリカ(3)」で触れてみたいと思います。

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