現代日本政治の改革案は単純だ

小幡 績

派閥をつくればよい。

民主党が安定した政権政党となれない理由はただひとつ、強固な派閥が存在しないからである。民主党に唯一存在するのは、脱小沢派という派閥である。

かつては、民主党全体が一つの派閥としてまとまっていた。政権交代という派閥である。しかし、この民主党史上最強の派閥は、政権交代の実現とともに解散した。したがって、与党になった瞬間に弱体化したのは、強固な派閥がなくなったことによるのである。

民主党は派閥に対する考え方が根本から間違っている。派閥も政党も、イシューごとに設定するのではない。


そんなことをしたら、目標を設定するたびに解散し、新しいイシューを見つけ、また集まらなければならないし、メンバーも同じとは限らない。新しいイシュー設定、メンバーの組み換え、再度の融合。こんな面倒なプロセスをアドホックにやり続ける組織は、他には存在しない。だから、民主党という組織は機能しないのであり、そもそも組織と呼べない。

これをシスティマティックに実現し、成功している組織は、政界近傍にも存在する。それは創価学会である。創価学会という組織は、派閥そのもので、実は本質的には何の目的もない。だから強いのである。そして、派閥の結束を確認し、組織の存在意義を確認するために、選挙に参加する。選挙を戦うことにより、仲間の結束を深め、組織の意義を再確認するのである。選挙は結果ではなく選挙戦を戦うことが重要なのである。だから、公明党に対してガバナンスをかけて何か具体的な政策を実現してもらうことなどは二の次だ。

一方、これを逸脱したのがほかならぬ公明党で、連立に参加するという暴挙を成し遂げてしまったために、与党になるという目的が出来、その目的に呪縛により活力が失われ、組織としては弱体化した。それは社民党も似ていて、村山政権、今回の福島みずほ連立により、組織は終焉を迎えた。

派閥とは、無目的だからこそ意味があるのである。派閥という言葉は組織と置き換えてもいい。

大学の体育会の人脈がビジネス界で強力なのは、体育会に入るときにビジネス人脈を狙って入ったわけではないからである。軍隊も同じだ。戦後、生きながらえて、そのときの強固な人脈を目的として戦地に赴いたわけではない。最近の体育会は就職目的のメンバーも多いが、そのような体育会の人脈は弱い。だから、東大野球部の人脈は強いのである。東大まで入って、まともにコミュニケーションが出来れば、就職に困ることはない。野球部に入って、週7回練習して、授業どころか、プライベートもなく、それで200連敗であり、4年人生をかけても、甲子園に行ってそこで辞めてしまったやつらに遠く及ばない。就職のためだけであれば、そんなばかばかしいことはやってやれない。だから人脈として強いのである。ただばかばかしいまでに全力で野球をやったから生まれた人脈なのだ。

ビジネススクールの人脈が、異業種交流会の人脈よりも強いのも同じ理由だ。

民主党はこれがわかっていない。

メディアはもっとわかっていない。

政界再編は、政策を軸になどと社説で論じる。消費税や年金ごとに政党を作っていたら、毎年政党を組み替えないといけない。政党とは50年は続かないといけない。

政党を移動する政治家が現れてはいけないし、簡単に新党が出来るようではいけない。党という組織的枠組みは重要でないといけない。政策議論は党の枠組みの中で議論すべきなのだ。米国では、有権者ですら簡単に政党は変わらない。民主党の中で、誰が良いか、それが大統領予備選であり、本選になれば、民主党の候補が自分が押した候補と異なることなど関係ない。とにかく共和党を倒さないといけない。

そうでないと政党政治は成り立たない。

派閥も政党も、政策でまとまってはいけない。それを超えた、短期的な環境変化を超えて生き抜く組織でないといけない。いちいちどの党に属するのが得か、どのグループに属するのが得かどうか、今どの政策を主張するのが受けるか、といちいち利害で考えられるようでは駄目で、自分の意見はともかく、派閥として、党として打ち出した以上は、そのスタンスを支持するようでないと組織とは呼べないし、いかなる政策も実現できない。派閥、政党とは、一生変われない、政策や理屈を超えたつながりでないといけないのだ。

池田信夫氏のこの議論は重要だが、私は(いつも池田氏と意見が近いことが多いが)今回は意見が違う。とりわけ、小泉政権が長期化した理由は180度異なると考えている。

小泉ほど派閥を重要視した政権は、この10年では存在しない。極論すれば、小泉は、清和会のために政治を行ったのであり、郵政も竹中も手段であり、飯島は素晴らしいツールだった。

自民党をぶっ壊すとは経世会をぶっ壊すということであり、それ以外の意味はない。

安倍、福田が清和会を弱体化させたため、麻生で回復を図ったが、経世会をぶっ壊すということは清和会が弱まれば、自民党、あるいは自民党の派閥が壊れることであり、政権交代という名の下に一時的に成立した、時限つき”派閥”により、倒された。

民主党は、政権交代という目的を達成したため、派閥の求心力がなくなり、というか派閥の存在意義がなくなり、急速に弱体化。さらに、小泉が経世会をぶっ壊して自民党を破壊したように、自称政策通の人々が小沢派をぶっ壊そうとしたために、民主党は崩壊。

それが現在だ。

したがって、日本の政治を回復するには、何らかの形の派閥を復活させることが最重要で、それだけが実現すれば、日本の政治は見違えるようになる。

その派閥の一つの形が政党だ。

政党を組織化する、というのが一つの道だ。

民主党は失敗した。自民党にはその望みがない。みんなの党はそれがわかっていない。

どこが組織政党を作るか。

それが次の鍵だ。

コメント

  1. rityabou5 より:

    ポイントは『派閥をどうまとめるか』だと思います。

    自民は金や利権をばらまいたがそれはもうできない。ポストを利用する手を使うと『20年間法務は触れたことはない柳田元法務大臣』を生み出す。党に逆らったら除名と脅迫すれば捗るかもしれないが、それが良い選択肢なのか?

  2. サノヒノ より:

    この考え方は、これでは絶対出来ないっていう否定的考えによるものだよね。
    こうじゃないとしょせん無理だよって…
    こういう思考識者が多い限り、日本の政治は絶対変わらない。政治評論家に存在価値は無い。

  3. ikuside5 より:

    党内で政策論議で集まったりは現在もしているんじゃないでしょうか?昔の派閥というと、結局やはりカネの問題なので、今後もしばらくは派閥が堂々と復活することはなさそうですよね。金権政治みたいなことを望んでいる国民もあんまりいなそうですし。

  4. tetuko_trail より:

    これはイカンな~ハバツはインフレのようなもの、必要以上にギインの定数が多く、責任が分散してしまっているから、そんなつまらぬ政治・八百長ショーにエネルギーがすわれてしまう。もう日本はビンボーなんだから、衆議院は100 参議院は廃止がよい。結局、決めるのが政治家の仕事なのに何も決められず、ここまで来たのだから、文句いえないはず。あまりこのような状況が続くとハイエクを手にした義勇軍や自衛隊が結束しクーデターのようなものが起こってもおかしくないと思う。かえって高い八百長ショー見せられるより、国民は幸福になれるかも・・一時、民主主義のために権力を軍隊に移譲します?!・・なんて、どこかの国であったばかりだよね。ハバツなんかにかける時間もお金も、もう日本のどこにも存在しません。壊すののはあの馬鹿でかい国会議事堂位にして、せめて品川の公民館程度の大きさに縮小し、全部ガラス張りで常に国民から監視されるようにすればよい。ハコモノさえ小さくしていけば、適正人数になる、「被災地」センダイの避難所ですでに実証済みです。ちなみに避難所では、政治家でもないのに、プライバシーもありません。

  5. i8051 より:

    私の読解力の問題かもしれませんが、小幡さんの文章は今回に限らず諧謔やアイロニーなのかベタなのかよく分からないことがあります。もう少しストレートに論点が浮き彫りになるように書いていただけると助かるのですが。

  6. nac00230 より:

    「派閥」という言葉の使い方が多様で判りにくい論理構成になっているので、誤解があるかもしれませんが、ポイントは「政党を一生変われない、政策や理屈を超えたつながりで」再構成しなければならない、というように理解しました。

    であれば、それは概ね賛同しますが、「単純」ではあっても「簡単」なこととは思えません。そしてその処方箋については言及されてないので、具体的なイメージが今ひとつ見えません。も少し展開して頂けると嬉しいです。

    なお、私が漠然と考えている政党の要件は、政治家を登用するシステム(候補者の公選等)を軸とすることだと思っています。また、政策が軸でないとすれば、個々の法案への賛否についての党議拘束はゆるくすべきでしょう。そのためには誰が何をすべきでしょうか? 選挙等の制度変更での誘導が可能なのでしょうか?
    なお、国政の場で大きな数政党に再構築するための「政策や理屈を超えたつながり」が何であるかが更に難しい。米国の共和、民主のようなもんでしょうかね?

  7. akd_2010 より:

     いいえ、民主党という「派閥の求心力」はなくなっていません。
     民主党の存在意義は、「大陸」の人々のために日本で働くためです。民主党が大勝した衆院国政選挙においてあれだけの「大陸」の方々が応援にかけつけていたのを見たことがありません。びっくりしました。日本の大メディアでは、ほとんど報道していません。そして、民主党が大勝したとき、日本の大メディアが「大陸」のトップが歓迎していると祝辞を述べている映像を何度も報道していました。これも初めてで自民党政権時代では見たことがありません。
     今回の図書協定も民主党のトップの発言からほとんど国会審議も報道もされず震災のどさくさで承認されてしまいました。これだけの不平等にも関わらずです。また、これも震災でうやむやになってしましたが党自体でなく、トップや幹部クラスが「大陸」の方々から献金を受けていることです。他国なら重犯罪で弾劾裁判ものだと思います。政業の賄賂ではなく国家による賄賂です。民主党政権になってからの日本国内外での「大陸」の方々のやりようを見てみれば一目了然です。見事に贈収罪が成立しています。「大陸」の方々の成果を大メディアは小さく報道しているから探すのが大変ですが。
    自民党時代も「大陸」の方々に遠慮していましたがそれなりに「実」を取っていました。
    なので、民主党は、日本国内案件において「派閥の求心力」だけがないのです。その緩さを利用して各業界の方々が個々の目的の実現を目指して日夜努力しているだけです。